〇最も素朴なエクスチェンジ・ゲーム~自閉症児とボールを受けたり渡したりしよう~~
子どもが好むボールを選ぶ
最も初歩のエクスチェンジ・ゲームは、ただボールを手に持って交互に相手に渡すだけです。
色・手触り・大きさなど、お子さんが好むボールを選びましょう。
そして、ボールを交互に渡し合いましょう。
太郎君のボール!
しかし、こんな遊びの中にも留意するべき療育的な数々の工夫が必要です。
始まりと終わりの宣言・アイコンタクト・同じ単語の繰り返し
「ボール!」と言って遊びの開始を宣言しましょう。
子どもの視線の高さに大人の身をかがめアイコンタクトを取りやすくします
「太郎君のボール」と子供の名前とキーワードを言いながらボールを渡します。
楽しそうに、イントネーションは大げさに!
子どもがボールを受け取ったら「ママのボール」と大げさに楽しそうに言って、受け取るポーズをしましょう。
これを繰り返します
終わる時は、「おしまい」と言って終了を宣言します
〇どうしたら自閉症児とアイコンタクトがとれるか
かがんだり腰を下ろしたりして「子どもの視線の高さを合わせ、アイコンタクトが生じやすい体勢をとる」ことがとても大切です。
できることなら、子どもの視線よりも少し下に位置するぐらいが望ましいでしょう。
大人の視線の方が少し下にあれば、子どもはちょっと顔を動かすだけでアイコンタクトを成立させることができます。
また、他のところで述べましたが、ステージ2の子供は「一まとまりの行為がどこからどこまでなのか」ということの把握ができてゆく必要があります。
このため、遊びの開始と終わりを宣言しましょう。ステージ2の子供は無言語を想定していますので、単語一つで「ボール!」「おしまい!」などと言えばよいでしょう。ボールを交換する時も「ママ」「太郎君」などの呼称に加えて「ママのボール」「太郎君のボール」と「ボール」という言葉を何度も反復します。
アドバンスト-投げる・キックなどによるボールの交換
距離を取ると、よりアイコンタクトの練習になる
以上の素朴なエクスチェンジでも結構子供は楽しんで行います。しかし、これだけでは、ちょっと物足りなそうな活発なお子さんには、距離を取って、ボールを軽く投げる、キックなどによって行き来させることもできます。
ここでも上記の言葉かけは行ってみましょう。しかし、ボールを投げたりけったりすることにエキサイティングを感じるお子さんは、アイコンタクトを相手に保持できない問題が生じます。
こっち見てない
(やったやったあ!)ピョンピョン
ボールを投げたり蹴ったりすることに成功すると、うれしさのあまり、相手の大人から完全に視線を外してしまう子供は珍しくありません。
この方法はなかなか強力で、何回かボールがこちらに届くまで面白いアクションをやって子供の注意を離れさせないようにすると、段々そのアクションの大げさぶりを減じても、普通のボールの行き来が成立するようになります。
ボールが来るまで、自閉症児が目を離せないようなアクションを行う
距離を取るとどうしてもその間に子供が相手から目をそらしてしまうだけの時間が出来てしまいます。しかし、これは、子供のアイコンタクトを長引かせるための絶交のチャンスです。
とうっ(ここまでやる必要はありません)
子供がボールが相手に届くまで相手に注意を維持できなければ、「わざとこっけいに取り損なう」「あわてた仕草・表情を見せる」などの、子供が見ざるを得ないオーバーアクションを行いましょう。