僕は何もやっていない、母さん助けてください!中南まり子・源太著 | 城陽発☆くまちゃんのダイエット&読書部屋

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僕は何もやっていない、母さん助けてください!―母と子の往復書簡「無実の叫び」 冤罪・香芝「強制.../中南 まり子

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 著者の一人源太さんは、06年12月12日午後10時10分ごろ、香芝市の路上で、女子高校生(当時16歳)の胸や下半身を触ったとして、同月20日に強制わいせつ容疑で逮捕されました。08年3月、一審で懲役2年6月の実刑判決を受け、09年6月に最高裁で確定し、「服役」。この春に出所しています。

 主任弁護人の古川雅朗弁護士らによると、警察が示した顔写真12枚の中から被害者が源太さんを選んだことが逮捕のきっかけになった、ということです。しかし、源太さんは、犯行があった、とされる時間、自宅で母親と関西テレビの「僕の歩く道」を視聴していました。物理的に犯行現場まで行くことは不可能です。しかし、肉親の証言は、いとも簡単に却下。防犯カメラの映像など物的証拠はなく、身長も被害者の証言では約180センチなのに対し、源太さんは約168センチ。古川弁護士は「有罪の立証構造がぜい弱」と指摘しています。
 一審での判決は、顔写真について「警察官による不当な暗示や誘導はない。確信を持って被告人の顔写真を選別した」と指摘。身長差も「被害者から見れば、見上げるほど長身という点で異ならない」として退けました。こんな、脆弱な論拠で、最高裁までもが一審判決を支持し、源太さんの自由を2年6か月もの間、奪い続けたのです。
 

 母親まり子さんと源太さんは、「源太さんに前科があり、軽度の知的障害があること」など、赤裸々に自分たちのすべてをさらけだし、そのなかから、身の潔白を主張しています。

 一度罪を犯したものは、更生の可能性やチャンスを与えられないのか?
 障がいは、克服することが可能であり、人間の可能性は無限であること。
 
 この本は、そのことを力強く訴えかけています。


 それにしても、はたして、ここまで警察、司法が驚くべき非人間性を発露できるのか?と震え上がりました。
 これが、いまの日本の警察、司法の現実なのか?と怒りと悔しさと、「これでいいはずがない」という義憤がこみあげました。もちろん、警察、司法関係者のすべてが、などというつもりはありません。しかし、権力をもち人の生き死に深くかかわる者たちは、より厳しく、人権や正義というものをとらえ、生き方にまで昇華させることが、当然求められると思うのです。であれば、この事件にかかわった人たちには、厳しい責任が問われることになるのは避けられない、とぼくは思います。

 2年6か月ものあいだ、こう留・「服役」を強要された源太さん。

 そのなかでも、著者らは、「人間の成長」ということに問題意識をもちながら、互いを励ましあいながら、たたかってきました。本当に涙なしには読めません。

 たとえば、次のような、やりとりがあります。

 頑張る力をみんながくれるから堂々と闘いましょう!真実はひとつ、曲げることはできません。恐れることもありません。誰が知らなくても源太と母さんが、そして神様、仏様は知っています。真実より強いものなんて、絶対ありません。頑張りましょう。(往復書簡 お母さんから源太さんへ 56頁)

 今自分にできることは気持ちを強く持つ事、人を信じる事、挫けない事、今回俺のことをここまでにした奴等の事は、当然許せませんが、それ以上に、人を憎まない事、憎しみからは何も生まれないから、これらの事を一つ一つやっていく事が、今自分がやるべき事だと思います。(往復書簡 源太さんからお母さんへ 57頁)


 さらにこんなこんな一節もあります。源太さんが、「償い」という本を読み終えて、「一人の肉体を殺したら罰せられるのに、人の心を殺しても罰せられないのですか?」という一文が心に残った、として次のように書いています。

 この言葉は、今の国そのものの様に思いました。「えん罪」という凶器で傷けられた「心」はもう二度と元には戻らないのです。それなのに、そこまで追い込んだ当の警察や検察は何も責任をとろうとしない。それどころか、謝罪の言葉すら言わない。自分たちがどれ程人の心を傷つけ殺してきたのか、見ようともしない。本当にどうかしています。
 何故こんな奴等が堂々とした顔で生活しているのか、国の金を勝手に使って一体何を考えているのか、これだけの「えん罪被害者」を出して国はどう思っているのか、責任どうこうよりも、心からの謝罪の言葉が聞きたいです。人の「心」を殺すということは、人の「命」を奪う事と同じです。人の「命」が一つしかないように、人の「心」も一つしかないのです。だから大事にしないと駄目だと思うのです。あと2週間です。2週間後には、明るい未来が待っています。その時まで、気を抜かずに最後まで頑張ります。「往復書簡152頁より引用」


 
 これからは、無実と再審をもとめるたたかいが広がるでしょう。

 えん罪は、決して、他人事ではありません。権力の魔物は、いつ、私たちの日常に突然、襲いかかってくるかわからないのです。

 一人でも多くの方に読んでいただき、今の社会で果たしてよいのか?をともに考えあう機会になれば、と心から思います。

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