拳銃談義 | 『日本史編纂所』・学校では教えてくれない、古代から現代までの日本史を見直します。

『日本史編纂所』・学校では教えてくれない、古代から現代までの日本史を見直します。

従来の俗説になじまれている向きには、このブログに書かれている様々な歴史上の記事を珍しがり、読んで驚かれるだろう。

 ドイツの名銃『ワルサー・P38』 1953年製
 この銃に興味を持ったのは大藪春彦氏の小説「凶銃ワルサーP38」からである。
 

 左利きには嬉しい、珍しく左排莢になっている。
イタリアのベレッタ92は、この銃を真似て作られたが、
マガジンに残弾があると、ハンマーの前にピンが出る。
この機構までベレッタは真似て居ない。
ドイツのオーバー・エンジニアリングが素晴らしい一例である。
他の銃は、マガジンを引き抜いて横穴を見なければ、残弾数は分からない。


 ベレッタも同様で、ダブルカラムマガジンを使用しており、横穴がない。最大15発の9mmパラベラム弾を装填できる。
従って、残弾を確認するには、マガジンを取り出して目視するか、重さを感じる必要がある。
銃に慣れた人間は、全弾装填時の重量を「体感」として覚えている。
 アメリカ映画ではよく、相手の拳銃の弾を抜いて、素知らぬふうをして、相手がその銃を知らずに撃つシーンがある。
だから素人はいざ知らず、警官、FBI、等、法執行機関の人間や、年季の入ったギャングたちにはあり得ない行動である。

 また、自分の銃の残弾数も知らず撃ちまくっても、相手は数えているから、最後に相手と向き合いあえなく殺される場面も多い。武器は冷静に使用しなければならぬという教訓だろう。

 

 余談だが、安藤組のやくざだった故安部譲二氏は、アメリカ製М1911コルトガバメントを愛用していたという。
この銃はマガジンに7発、この状態で装填して薬室に1発送り込み、ここで一度マガジンを抜いて(6発になっている)
一発補填すると、合計8発となり重量が1キロになる。
シャブの取引で1キロだと、拳銃と同じになるので、秤(はかり)としても利用したという。

やくざも売人も、拳銃に精通した者などそうそういない。

だから、頭の良い安倍氏は、弾丸一発(10g)を抜いて、相手をダマクラカシていたという逸話を自著に書いていた。

 余談ついでに、朝鮮戦争で米軍はM1ガーランド自動小銃を使っていた。この銃はグリップごと8発装填できる。

極寒の朝鮮半島の冬は積もった雪が硬くなり、全弾撃ち終わるとグリップごと飛び出し、これが雪に当たると「キンコンカン」と金属音が清涼な空気の中に響き渡る。

米兵が次弾装填までには素早く動いても3秒~5秒はかかる。

だから共産軍の兵士はこの音を聞くと「それッ、今だ」と突撃してくるので「恐怖の3秒間」として米兵には不評だったと云われている。何しろ当時の中国も十億以上の人口を誇り「兵が百万死んでも十億人残る」と戦死者を厭わぬ人海戦術だった。

雄たけびを上げ何十回も突撃につぐ突撃で、米軍の機関銃の銃身は真っ赤になるほど撃ちまくった。

この作戦には米軍は恐怖だったという。

究極の利便性を追求した武器でも環境によっては「完全」はないという教訓だろう。

(ちなみに「ピン」に関しては往年のゼロ戦も、主脚が完全に引っ込むと、主翼の中間にピンが出て、パイロットが目視できるようになっている。着陸時足が完全に出るとピンが引っ込むので、知らずに胴体着陸などの事故を防いだ。油圧も電気も使わぬ単純な構造だが良くできていた)