シロヤギです。
『ある秘密』を読みました。
ある秘密。
それは、家族の秘密です。
両親がずっと抱えてきて、一人息子にも伝えずにいた秘密。
「ぼく」はやせっぽちで病弱で、スポーツマンの両親に似ていない。父親もそんな「ぼく」にどこか冷たい。
「ぼく」は強くてスポーツ万能の兄を想像して遊んでいたが、ある日、屋根裏部屋で古い擦り切れたぬいぐるみを見つける。
それは、「ぼく」以外の子どもの持ち物。
彼は自分には本当に兄がいたことを知る…。
「ぼく」の一人称の小説で、著者の自伝的な作品です。
家族の秘密といっても、火曜サスペンス(すでに終了)のような秘密ではまったくありません。
主人公の少年は、第二次世界大戦後間もなくユダヤ系の家族に生まれます。
その戦争の間、フランスでもユダヤ人狩りが行われました。
両親達はナチの手を逃れて南へ向かいます。
先に逃れていった若き日の父と母たち、後から来るはずだった家族。
少年は両親の出会いを、美しく素晴らしい男女の出会いとして思い描いていましたが、実際は彼らは、否応なく巻き込まれた歴史の記憶と、彼ら自身の業が原因のひとつとなった悲劇を、ずっと胸に秘めて生きてきたのでした。
「ぼく」は両親から秘密を打ち明けられるのではありません。
だからこそ彼は、その秘密を知った後では、今度は自分が両親を守るのだと強く自覚し、自分が何者であるかしっかりと知り、見据えて逞しく育っていきます。
文体は非常にシンプルで、どこまでも淡々としています。
それがかえって感動的です。
打ち明けられる秘密も、その秘密を話している人物の「セリフ」として書かれるのでなく、主人公が想像したのであろうシーンの数々として鮮やかに描き出されています。
教科書を何度読んでもわからないことが書いてあります。
読んできっと損はしないと思います。
『ある秘密』 フィリップ・グランベール
パリにはユダヤ人が多く住んでいる地区があります。
私がパリに行ったとき、ちょうど「マレ地区のユダヤ人展」が行われていました。→NIKKEI NETの記事
これはノルマンディーに行っても思ったことですが、こういった催しや戦争博物館などに、ドイツの方が少なからず訪れていることに少し驚きまた感心しました。
目をそらしてはいけないんですよね。わかってはいるつもりなのですが…。
私個人として、歴史をどう引き受けるべきなのか。それはなかなか難しい問題です。