しろやぎくろやぎ、本を読む。

しろやぎくろやぎ、本を読む。

シロヤギとクロヤギによる、徒然気まぐれ偏りぎみ読書日記

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 しろやぎ@お久しぶりです。
 
 
 十二国記シリーズの存在は知っていたのですが、何冊もあるのでなんとなくここまで手に取らずにきていたところ、先日、くろやぎおねえさんにお誕生日のプレゼントに『魔性の子』『月の影 影の海』(上・下)『風の海 迷宮の岸』をいただきました。ねえさんありがとうー!

 ちなみに私が十二国記について知っているのは、異世界ファンタジー。ぐらい(雑)。
 小野不由美作品は、ティーンのときに悪霊シリーズを1冊か2冊読んだかな。『屍鬼』と『鬼談百景』は読みました。屍鬼はあんまり……今となってはなぜ読もうと思ったのかも覚えていません。ふじりゅう漫画になったと聞いて、原作を読んだんだっけ。ゲームがあったんだっけ。SIRENと間違ってる?? なんか忘れた。
 
 それはともかく、まず一冊読んでみましたよ。
 いちばんエピソード番号の若い「魔性の子」から。
 お話は現代。教生(って初めて聞いた。教育実習の学生さんのこと)として母校に戻ってきた広瀬くん。担当のクラスに、まわりとちょっと違う生徒がいることに気づく。これが高里くん。この子にいけずすると祟るということで、なんとなく遠巻きにされている。
 まあでも高校生なんで(中学校が違ってよく知らない子たちとか)ちょっかいかけるもんだから、とんでもないことになるうえに「たたり」はどんどんエスカレートし、高里と、彼をかばおうとする広瀬は追い詰められていく。なんにも悪いことしてないのにーーー涙 「たたり」の正体は何なのか。二人の行く末は。

 このあと、ネタバレとか気にせず感想を書きます。
 
 
●すごい死ぬ
 まずびっくりしたのが、死ぬ人数と死に方。「もう死んでもいいよね」みたいな人々ばかりでなく、ちょっとからかったとか、ただそこにいて巻き込まれただけとか、心配して忠告してくれたとか。高校生やマスゴミたちの雑魚っぷりというかモブっぷりがすごい。死に方(殺され方)も陰惨。うげえってなる。
 でも、いつのまにか何かわからないモノが騎馬戦の馬になってたとか(人の形をしていたとすると、わんちゃんじゃなくておねえさんのほうかしら)、考えてみるとちょっとおもしろい笑
 この巻に関してはほぼホラーでした(ファンタジーに入れたけど)。理不尽さが怪談に近いかな。
 「き」を探している女性(廉麟)も、怪談風ですよね。数珠投げてかぷってやられたおばあちゃんかわいそう。ていうかね、「き」だけじゃわかんないよ、探す気あるんかよ。なんで今になって来たんだよとか、いろいろ思うことはあるのですが、多分、それは続刊でおいおいわかるのでしょうね。
 
●化け物がけっこう怖い
 足がいっぱいあるムカデみたいなでっかい虫が出てくるのですが。あれは傲濫ではないんですよね。傲濫は表紙の赤い犬みたいのですよね。この犬も怖いけど。
 暗い海からももももって出てくるヘドロのお化けみたいのも、そこで見てたら怖いだろうなぁ。あと、すごいくさそう。
 
●がんばれ広瀬先生
 なぜ高里の周りで「たたり」が起こるのか、少しずつ明らかになっていきます。どうして高里がこんなに超然としているかもわかってきます。
 シリーズのことほんのちょっとでも知っていれば異世界から来た存在なんだろうな、というのはわりと早くから(最初から)わかるわけなんですが、それでも異世界にいるどういう役割の人なのか、がわかっていく過程はミステリぽくもあって面白かったです。
 これでもかと起こる惨劇と、そのたびに居場所がなくなっていく高里。必死で守ろうとする広瀬(超一般人)。
 
 この広瀬先生、口調や態度はほぼ三十路なのですが、教生ということは20代前半。「元いた(はずの)世界」に戻りたい、という幼少期の願望をまだ抱えていて確かにそのへんは若い。20年前の20代ってこんな感じだったのだろうか。
 故国喪失者と自分では思っているけれど、現実に戻っていかなければならない人です。つまり、読者に近い。仲間だと思っていた(思いたかった)のでどうにも見捨てられず尽くしてきたのに最後の最後にフラれる、気の毒な人です。ぜひ中2の夢から覚めていい先生になってほしい。
 
●なんかある意味スッキリした
 一方、高里くんはガチの異世界人。
 彼が「人でない」存在で、事故でこちらの世界に生まれてきてしまった、とわかってからは、高里に対する人間たちのひどい行動も、なんかしゃあないなと。もちろん高里(泰麒)が悪いわけではなくて、異世界のシステムがおかしいんだと……なんでそんな思い込み激しい護衛つけるんだよとかそもそもなんだよ胎果ってとか。怪しい高校生とかマスコミとか、「相手が高里でなくてもこうだろうな」という人々の行動は確かにおぞましいのですが、それに勝ってなんつう迷惑だと思ってしまいました。よくおかんに殺されなかったな。
 だって、この子のために高里家は崩壊、何の罪もない高校生も多数死傷(彼らにも家族がいると思うんですけど)、最後なんか水害でいっぱい死んで。で、「ごっめーん、ぼく戻らなきゃ!」って言われてもなぁ。高里家に関しては、えらい冷たいお母さんだな、と私も広瀬と一緒に憤りましたが、あとになってお母さんの気持ちが少し描かれています。ほんの少しさし挟まれているシーンで、くどくどした説明はありませんが、このあたりがとてもうまいなと思いました。一方から見ればただの冷たい母親ですが、母親の方からみればもういたしかたない態度なわけです。お父さんは家のことかまってなさそうだし、絶対苦労している。
 
 高里は人間ではなく、それを納得している。記憶が戻ったあとは、もとの世界に戻らなければと考えている。これで、自分が異世界の存在であることを受け入れられないとなるとものすごい悲劇ですが、人間として生きていく気はないわけです。一応、被害にあった人々に申し訳なく思っているけれど、なんとなく他人事。
 つまるところ、こちらの世界と向こうの世界ではロジックが違うわけで、怪談ぽく感じるのはここなのかも。理由や理屈はなく、たたりですらなく、わけわからんけどひどい目に合う。高里側も周辺の人々側もラスト付近まではつらいのですが、高里に「き」の記憶が戻ってからは、「じゃあ、高里くんがひどい目にあうのも、周りがひどい目にあうのも、まぁしょうがないか」となってかえって救われたというか、暗い気分にならなくてよかったです。これ、説明が難しいのですが、自分と異なる存在なら排除しても良い、ということではないんです。ただ、自分の中で、フィクションであるこの作品についてはそういうふうにオチがついた、ということです。読者は本を閉じればこちらの世界に戻ってこないといけませんからね。
 
 でも、岩木くんは超いいヤツだったよ。不憫だ。
 
●結論
 なんだかケチつけてるみたいですが、間違いなく面白かったです。とにかく次が気になってどんどん読み進められました。
 多分、本編とは少し毛色が違うんだろうなとは思いますが、あとになって「ああ、そういうことだったのか」というのがわかってくるのでしょう。
 逆に言うと、これを読んだだけでは、人間界に異世界の存在が混じりこむことがあって、異世界の力が干渉してくるととんでもない災厄が起こるということ以外あんまりよくわからない。まさしく序章ですね。
 これがエピソードゼロということで、本編はここから。続けて読んでみます。
 ねえさんありがとうございました。
 
 ところで、「泰麒」とか「胎果」って単語登録してないのに変換候補にあるんですよ。グーグル日本語入力恐るべし。

 クロヤギです。
 

 今日は読了後、「これはもっと有名になるべき!」と思わず唸った小説『ハンターズ・ラン』のお話です。

 

 

 

 とはいえ、2010年発行の本書、現在、紙の本としては絶版です! 古本は安く入手できますが。

 出版元のHPからも削除されてます。Kindleでは購入できるんだから、削除はひどいぜ早川書房……。

 とはいえ、紹介する本が絶版だったというのは以前にもあったこと。いまさら気にしません。

 それでは内容の紹介をば。

 

  『ハンターズ・ラン』はSF冒険小説でして、物語の舞台は人類が宇宙進出後、何世紀も経た未来です。

 といっても宇宙はすでに、人類よりもはるかに偉大なテクノロジーを有するいくつもの宇宙航行異種属たちによって征服されていたのですが。

 人類は説得されて異種属たちの通商連盟に加盟し(経緯については黒船による日本開国が引き合いに出されてる……)、出身地以外の星系への入植を認められます。とはいっても、許可されたのは不便で危険な惑星ばかり。

 サン・パウロはそんな植民惑星のひとつ。入植が始まってから二世代目に入ろうかというところですが、開発の過程で植民者はばたばたと死んでゆき、今でも荒くれものだらけ、未開の自然だらけ。

 主人公ラモンは地球出身だけど、この星でひとり山に分け入り鉱床を探す独立探鉱師をしています。

 

 このラモンがね。

 汚い言葉でお目汚ししてしまい大変申し訳ないんですが、クソマッチョ野郎としかいえないシロモノでして。

 正直、読み始めた時は「これは外れだな」と思いましたよ。

 愛人の家に転がり込んでるくせに、その女性に手を上げるし、稼ぎは全部飲んでしまい、飲み過ぎては喧嘩して(しかも喧嘩っぱやいことを恥と思ってない)、あげくに人殺しですよ。しかも野次馬に「喧嘩しろとけしかけられた」から殺してしまったんだと他人のせいにするし。

 「おれは男だ!」「浴びるように酒を飲み、喧嘩になれば容赦なく相手をたたきのめす」じゃないよ、このスカポンタン! という気持ちにもなろうというものですよ、まったく。

 でもでも、ラモンが殺人のほとぼりが冷めるまでと町を抜け出し山に逃げ込んだところから俄然おもしろくなります。

 

 なんとラモンは人里離れた山で謎の異種属と遭遇し、捕まってしまうのです。

 しかも喉元には生きたつなぎひもをつけられ、異種族たちのもとから逃げた人間を捕まえる猟犬の役割をしろと強制されます。いうことを聞かないとそのつなぎひもによって激しい苦痛を与えられるため、ラモンは承諾せざるを得ません。

 監視役として異種属のマネックがラモンと行動をともにするのですが、このマネック、人間には食事とか排泄とか睡眠が必要だという知識すらないものだから、ラモンは結構ひどい目にあいます。まあ、ラモンがああいう男なのでかわいそうにねぇと思いつつも、わりと心静かに読んでいられるんですけども(ひどい)。

 このふたりの追跡行は、異種属と人間の相互不理解も興味深いのですが、サン・パウロという異星の自然の様子、ラモンが自然の中では有能でダメ男じゃないことなどが分かってきておもしろいです。

 そしてあることを契機に物語が一変し、ここからがおもしろさ大爆発します!

 

 異種属たちと人類の不平等な関係や、ラモンの性格、追跡の間にマネックとラモンの間に起きたできごとなどの要素が、たんにスリル満点な冒険物語としてだけではなく、ラモンという人間そのものに焦点を当てた物語として結実していき、「うおー!」ってなります。

 クソマッチョ野郎クソマッチョ野郎だったことにはちゃんと意味があったのでした。

 あまり書くとネタバレになってしまうのでここらへんにしときましょう。
 ネタや展開ひとつひとつがすごく画期的とか意外とかそういうことじゃないのですが、とにかく心憎い配置なのです。もう完璧と言っていいタイミングで起こって欲しくないことが起き、起こってもおかしくないはずのことが読者のすっかり忘れていたタイミングで起きて、ページをめくる手が止まりません。食べなれた食材も調理法によっては素晴らしいご馳走になる。あれと同じですね。

 後半は心の中で「ひゃあっ」とか「あぁっ」とか呟きながら読んでいました。

 ラストもね、いい終わり方だったと思います。この物語にぴったりの最後。

 冒険小説、SF小説が好きという人に限らずおすすめできるエンターテインメント小説でした!

 

 著者はジョージ・R・R・マーティン、ガードナー・ドゾワ、そしてダニエル・エイブラハムという三人で、合作小説です。

 ジョージ・R・R・マーティンといえば、日本でも人気の米ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作である『氷と炎の歌』シリーズの著者として有名なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか(私は読んだことないんですけどね)。

 ドゾワやエイブラハムは日本では無名に近いようですが、ドゾワは編集者としても評価の高い作家で、エイブラハムは短編がヒューゴー賞と世界幻想文学大賞の候補作になっている作家だそうです。

 三人の分担がどういうものだったのかは、著者と訳者のあとがきに触れられています(前者はネタバレがあるので読後に読んだ方がいいです)。

 多分これは分担制だったからこそできた小説だと思うのですが、三十年かかったというのはまあ本当に気の長いことです。ちゃんと発表されてよかったよかった。

 せっかくだから、もっとたくさんのひとに読んで欲しいなぁ。

 

 ところでみなさん、翻訳ミステリー大賞シンジケートってご存知でしょうか。

 翻訳ミステリーの情報公開を目的として設立されたそうで、たくさんの書評家や翻訳家、編集者、そして作家の方々が記事を寄稿されている情報量たっぷりの贅沢なサイトです。翻訳ミステリー好きには必読だと思います。

 そのなかに冒険小説の感想記事の連載がありまして、著名なミステリー評論家が選んだ本を冒険小説初心者の若い編集者が読んで感想を書くという企画でした(先月に最終回を迎えました)。

 この連載がとてもおもしろくて、『ハンターズ・ラン』もそこで紹介されていた本だったのでした。

 記事へのリンクは以下の通り。

 冒険小説にはラムネがよく似合う【初心者歓迎】第八回 『ハンターズ・ラン』の巻 (執筆者・東京創元社S)

 これが大当たりだったので、他の冒険小説も読んでみようと思っています。

 次は『ロマノフ家の金塊』がいいかなぁ。

 

 

 ちなみにジャンル分けを「SF」にするかどうか迷ったのですが、冒険小説として紹介されていた本なので「ミステリー・サスペンス」の方に入れておきました。

 

 クロヤギです。

 

 そろそろ一月も終わりそうですが、あけましておめでとうございます。

 皆さんにとっても我々にとっても、よい年になりますように。 

 

 シロヤギさんの記事にある通り、Twitterをはじめることにいたしました。

 ブログの更新頻度が月一程度になってしまっていますので、もう少し気軽に本のことをつぶやけるといいなと思っています。

 アカウントは@sirokuroyagi66。お暇な時にでも覗いていただけると幸いです。

 

 さてそれだけではなんなので、本の話もちょっとばかり。

 年明け早々のシロヤギさんとの飲み会は毎年恒例でして、今年も日もまだ高いうちからビール&本の話に耽溺してまいりました。

 シロヤギさんは穂村弘の話をしそびれたそうですが、私はエッセイを一冊と『ぼくの短歌ノート』を読んだことがあるくらいです。でも『ぼくの短歌ノート』はとてもおもしろく読んで、特に短歌に興味はないのですが紹介されていた大西民子の歌が気に入って歌集を購入してみたりしました。

 

 

 

 

 

 その時に話題に出た今村昌弘『屍人荘の殺人』、内容についてはシロヤギさんが書いた通りだと思うので私は特に何も言うことはございません(笑)

 それでもあえて補足しますなら、 『屍人荘の殺人』は東京創元社が主宰する第27回鮎川哲也賞に満場一致で選ばれ、 デビュー作にして『このミステリーがすごい!』『週刊文春ミステリーベスト』『2018本格ミステリ・ベスト10』の三冠ということで、ミステリ界ではお祭り騒ぎだった小説です。 

 ミステリがお好きなら一読の価値はあると思います。逆に「ミステリも読むけど、トリックとか謎解きの過程とか、そういうのには興味ないんだよね」というタイプの方にはどうかな、という感じです。

 

 それでは、今年もよろしくお願いいたします。