しろやぎくろやぎ、本を読む。 -2ページ目

しろやぎくろやぎ、本を読む。

シロヤギとクロヤギによる、徒然気まぐれ偏りぎみ読書日記

お久しぶりです。しろやぎです。
年始にくろやぎ姉さんと、いつものビアレストランで密談してきました。

いろんなこと話したけれど、好きだってことが言えなかった。

穂村弘を。

忘れていました。あるいは、昨年かそれより前に言ったかもしれません。忘れた。


さて、それはともかく。
『屍人荘の殺人』です。

 

屍人荘の殺人 屍人荘の殺人
 
Amazon

 

もうけっこう時間も経ったし、ネタバレしても大丈夫かなと思いますが、一応伏せておきます。
ただ、筋が垣間見えていますので、未読の方はご注意ください。


◎雑なあらすじ◎
ミス研所属の主人公は、明智先輩と一緒に映研サークルの合宿に参加する。あとは予想の通り、合宿先で次々と殺人が起こるクローズド・サークルもの。
しかしながら、そのクローズド・サークル状態を作り出す仕掛けがたいへんに奇抜。トリックにもその他にも大活躍。


◎感想など◎
くろやぎさんに、久しぶりに単行本を買ったことをご報告。
くろやぎさんも、すでに読んでいらっしゃいました。

「一種の祭りだよね」

というくろやぎさんの言葉が印象的でした。
おっしゃるとおりです。

そのお祭り騒ぎに乗せられて私も買ったわけです。

たしかにたいへん立派なクローズド・サークルものです。
トリックづくりも面白い。
この発想力はすごい。
過去のミステリ作品への敬意が随所に感じられる。
伏線の回収もとても丁寧。
とにかく読みやすい。

良い事だらけ。
そりゃこのミス1位になるわね。

しかし、なんだこの「あ、そうですか」感は。
帯に、「あー、はい、面白い。これは面白い」という相沢沙呼さんの「声」が載っていて、これはごく普通にほめたものだと思うのですが、私も言葉にすればそんな感じでした。

面白いんですよ。
それは間違いないです。

でも、期待しすぎたのか、この頃のミステリについていけてないからなのか、私がミステリを読む時におそらくは無意識に期待している言語化できない質感というのか、そういうものはなかったです。
しかしそれは私の好みの問題で、この小説の粗ではありません。

キャラをどのぐらい好きになれるかということもあるかと思います。
登場人物というより「キャラ」が近いですね。
なんとなくわかっていただけますか、この空気。
でも、キャラ立ちだけのライトミステリでもないのです。

動機についてはクエスチョンが付きました。
この作品では動機が主眼でなかったということなのでしょうが、人を殺すということが非常に軽いな、という印象はあります。その動機で計画的に何人も殺すのかな……と首を傾げてしまう。いや、「その動機」自体が軽いわけではないのですが、扱いがちょっと軽い。
重要人物が重要な嘘をつく動機も、うーん……これについて何か言うのは難しいですね。
また、犯人について、最後、そんな方法で始末できるのか? これは、たいへん疑問であります。別にいいけど。

なんだか不自然な点があるといえばそうかもしれませんけれども、そもそもクローズド・サークルなんてものが不自然の極みなので、それはあんまり気にしませんでした。
ここまでやってくれたら清々しいです。

ラストは続く気満々なのですが、続くのかな。

ということで、面白かったしとても楽しんだけれど、めっちゃ好きかというとそうでもない。
いえ、好みではないのですが、たいへん好感を持ったのです。だから、嫌いなわけではないのです。
難しいな。
ま、これだけ緻密なミステリを読んでおきながら、「結局何を読んだのかな?」というもやもやしたものが残ってしまうという不思議な体験をいたしました。

あと、この頃は、女性の言葉の乱暴さ(そういうキャラ設定)に面食らうことがあるのですが、こんなものかしら。
我ながら、もはや年寄りの説教のようですね(笑)


そんなこんなで今年もぼちぼち書いていきたいと思います。
Twitterも始めることにしていて、そちらは、もっと軽い、それこそつぶやきを投稿していく予定です。

すでに1ヶ月が過ぎようとしていますが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 クロヤギです。

 

 前回取り上げたのは出版から100年以上経った本(『オシリスの眼』 )でしたが、今回は10年ほど経った本の話です。10分の一です。もう、「最近出版された」と言っていいような気がしませんか。しませんね。

 ええと、気を取り直して。

 森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』と万城目学の『鴨川ホルモー』です。

 どちらも映像化している有名な作品ですね。

 そしてともに著者は京都大学出身、主人公は京大生(『夜は短し』には明記されてませんが、学園祭の描写からしてそう解釈してかまわないと思います)で、同じサークルやクラブに所属する女性に片思いしているところも、現実の世界にファンタジーが入り込むところも一緒です。小説の雰囲気はけっこう違いますが。

 

 

 

 『夜は短し歩けよ乙女』は話題になった当時、読んでみようとして挫折した記憶があります。

 再読して思い出したのですが、その時読み止めた理由はヒロインである黒髪の乙女の「オモチロイ」とか「お乳」とかの言葉の選択に引っ掛かりを覚えてしまったからでした。

 特に「オモチロイ」が駄目でして、今回の再読中も、この言葉が出てくるたび、乙女の後ろに「こういう言葉使うコかわいいよね…。ね…?」って同意を求めてくるオジサンの影が見えて困りました。

 きっと、乙女の天然で純真なところを強調するための舌ったらずな幼児言葉なのでしょう。でもねぇ、幼児相手以外にそういう言葉を使うのは、若い女性よりもむしろ、若い女性に自分を「パパ」と呼ばせたいタイプの中年男性なんじゃないかって思うんです。

 

 初っ端から苦手なところを語ってしまいましたが、そこを除けば楽しめた小説でした。

 主人公が意中の乙女の好意を得ようと奮闘し、その努力に全く気付かない乙女が風変わりな人々と不思議な出来事に出会う春夏秋冬の物語が納められた連作短編集です。

 どの短編でも主人公と乙女は最後になるまで顔を合わせることなく、その身に起こったことがそれぞれの一人称で綴られます。その語り口が軽妙で、特に主人公のパートは心の中で「ふふっ」と笑い声が漏れるようなユーモアに溢れていておもしろかったです。

 私にとっては、ストーリーそのものより、そういう文章や作中に登場する「満艦飾の三階建電車」に「偽電気ブラン」、「緋鯉のぬいぐるみ」などの小道具が魅力的な小説でした。

 著者の他の作品も機会があれば読んでみようかと思います。

 

 

 

 

 さて『夜は短し』は文庫裏に「恋愛ファンタジー」と書かれていましたが、次に紹介する『鴨川ホルモー』の方は「娯楽大作」とあります。

 私が読んだ感想としては、「青春ラブコメ」というのが適当じゃないかなと。

 

 現代の京都の町を舞台に、ふつうの大学生であるはずの主人公が、密かに千年以上の長きにわたり伝えられ続けられてきた「ホルモー」という謎の競技と恋に奮闘する青春の日々を描いた物語です。

 「ホルモー」という競技がどういうものかは読んでのお楽しみということでここでは具体的な内容にはふれませんが、完全にファンタジーの範疇のものです。ですがそのファンタジー的設定は作中ではあまり深く掘り下げられません。なんとなくこういうものみたいだ、どうやらこういうものらしい、こういう風に伝わってる、みたいな。

 「ホルモー」の試合についてもさほど力点が置かれているようではありません。物語のクライマックスの戦いではあることが原因で主人公側が窮地に陥るのですが、正直それが「え、そんなことで?」っていうような理由で、解決策も「なんだよそれ!」と声に出したくなるような、非常に納得しにくい展開でしたし。

 その一方で、物語を推進するきっかけはほぼ恋なので、やっぱりこれは恋のお話と考えていいのではないでしょうか。

 

 二作品とも短く、気負いなく読めるお話なので、年末の帰省や旅行のお供にいかがでしょうか?

 

 あ、その前にメリークリスマスです。皆様、よいクリスマスを。

 

 クロヤギです。


 お久しぶりです。

 先日、シロヤギさんがお手紙と本を二冊送ってくれました。

 ありがとうありがとう。

 さっそく、そのうちの一冊、R・オースティン・フリーマンの『オシリスの眼』を読んでみました。

 

 

 

 

 エジプト学者であり、財産家でもあるジョン・ベリンガムが失踪し、生死不明のまま時が流れた、その二年後。彼の遺言書を巡って法廷闘争が起きようとしているさなか、各地でバラバラになった人の白骨が発見される。これはべリンガムの死体なのか?

 失踪者の美しき姪に心惹かれた若い医師の求めに応じ、法医学者ジョン・ソーンダイク博士が謎に挑む英国探偵小説の名作古典。

 

 1911年発表の作品だそうです。100年以上前の作品です。今でもおもしろく読めるのはすごいですよね。

 物語はポール・バークリーという若い医師を語り部として進みます。彼は医者と患者としてジョン・ベリンガムの弟ゴドフリーと知り合い、その娘ルースに恋をします。

 そしてベリンガムが失踪したために彼らが困窮し、また相続問題で悩まされていることを知り、何とか窮地を脱する助けをしてやりたいと恩師でもあるソーンダイク博士に助けを乞うのです。

 

 物語はバークリーの恋の話と探偵譚が絡み合うのですが、前者については訳者にあとがきで「やや陳腐で時代がかった印象」などと書かれてしまっています。私は好ましいと思ったんですけどね。

 知的で孤独な女性が心の奥底に秘めていた子どもっぽい想像の世界の慰め、それを打ち明けられて好ましく思う真面目な青年の恋。

 ちょっと前までハーレクイン系サスペンス小説を読んでいたせいか、すごくいいなって思いました。

 

 肝心の探偵譚ですが、大筋はよかったんです。「おおー、なるほど」と思いました。

 でも一点、「(ネタバレなので反転注意)1900年代初頭とはいえ、何千年前の骨と二年前の骨の見分けがつかないものなのか」という疑問が頭にまとわりついてしまい……。そこについてなにがしか言及があったらよかったのですが。

 とはいえ楽しく読みました。

 ソーンダイク博士のシリーズは読んでみたかったので嬉しかったです。ありがとう、シロヤギさん。