2023年試衛館稲荷神社初詣と市谷柳町史跡巡り | 幕末ヤ撃団

幕末ヤ撃団

勝者に都合の良い歴史を作ることは許さないが、敗者に都合良い歴史を作ることも許しません!。
勝者だろうが敗者だろうが”歴史を作ったら、単なる捏造”。
それを正していくのが歴史学の使命ですから。

明けまして、おめでとうございます。幕末ヤ撃団代表・梅原義明です。

本年も、宜しくお願いします。

 

ということで、今年も市谷柳町にある試衛館跡にある稲荷社に初詣に行って参りました。

初詣のご紹介の前に、大晦日に行われました同人イベント「コミックマーケット101」のレポを……

 

↑東京ビックサイト

 

 今回もまたコロナ感染対策が行われ、参加人数の制限があるなかで開催された冬コミケでした。幕末ヤ撃団もサークル参加しまして、同人誌の方を頒布致しました。また、研究家あさくらゆう先生にも売り子に入って頂きまして、お手伝いしていただけて大変助かりました。コミケに参加された皆様、あさくら先生、お疲れ様でした~。

 

↑サークル設営風景

 

↑幕末ヤ撃団ブース

 

 今回は、コミケ二日目の東館456ホールに配置されたこともあり、かつミリタリー系ジャンルが同じ東館123ホールで行き来しやすい関係からか、昔からの常連さんに多く来て頂けた感じでした。これまでは人数制限のあるチケット購入制で、二日間参加すると二日分の入場料を取られてしまうということ、男の子向けの二日目ではなく女の子向けの一日目配置が多かったということで、昔からの常連さんが来にくいという条件だったのですね。その意味では、コロナ流行下でのコミケでは新刊がなかなか売れないという感じでしたが、今回は新刊がどんどん出ていったという感じ。とはいえ、売り上げ的にはコロナ流行前に回復したとは言えず、やはりチケット事前購入制&人数制限のためにチケットも抽選で当選しなければならないという条件がキツイんだろうなぁと。気軽に参加できる以前のコミケに戻る日を願わざるを得ない状況が続いております。

 

そして、今回の幕末ヤ撃団の新刊は『大坂城の慶喜』です。

↑新刊『大坂城の慶喜』

↑同人誌の本文

 

 本当なら、戊辰戦争における土方歳三と幕臣達の武士道を考察する本を出す予定でしたが時間的に作成時間が足りず、急遽『大坂城の慶喜』と題した突発本の頒布となりました。

 上記の本は、近年のウェブマガジンで書き殴られている「徳川慶喜」に関し、特に”大政奉還~王政復古~鳥羽伏見の戦い”に特化して時系列で日々の動向と政局を説明したという形態の本となります。とにかく「大坂城から逃げた慶喜→弱虫・愚将だった慶喜→こんなのが総大将では勝てるわけが無い鳥羽伏見→旧幕臣達は正義を掲げていたのに可哀想……」という論調のウェブライターや「旧幕軍は薩長に倍する圧倒的な兵力と武装があった→錦旗など無視してしまえば勝てた→大坂城を逃げた慶喜は愚将だった」というミリタリー方面からの批評をいくつか見かけた上、「西郷隆盛は江戸薩邸浪士テロリストを江戸で暴れさせたテロリストの親玉→明治政府はテロリスト政府だった→日本はテロリストが作った国で、水戸学はテロリストの思想」とか「戊辰戦争は薩摩藩の仕組んだ謀略で起こされ、謀略が成功して彼らは権力に握った→これが明治政府」といった、歴史を真剣に調べている人が見たら「はぁ??」という論調の歴史記事が多く見られるようになったことに対する私の抵抗で作られた本です(苦笑)。まぁ、予定になかった突発本なので(笑)。

 

 ぶっちゃけ、西郷や大久保、岩倉具視はもちろん徳川慶喜も政略はしていますが、ことごとく読みがハズレています。ハズレてアクシデントが起こり、それを手当てしようと藻掻きます。西郷も慶喜も両方共です。そこには土佐藩や尾張藩、越前福井藩、伊予宇和島藩に芸州広島藩も関わってみんな右往左往してます。誰かが何かをたくらみ、そのたくらみが成功し、たくらみ道理になったという陰謀論、誰かのシナリオ道理になった明治維新なんてないんですわ。「シン・エヴァンゲリオン」のような創作物語ではなく、歴史は事実ですから。イメージで言えば、N○Kでやってた「プロジェクトX」に近い。予想外のアクシデントや突き付けられた現実を前に、力なき人間達が置かれた立場で知恵を絞って戦いを挑み悪戦苦闘する。それが結果論として我々が知る明治維新という形にたまたまなった。本書からそんな歴史を感じて頂けたら幸いです。

 

 ということで、今回の冬コミケも終了し帰宅。疲れ果てつつも釣ってきたハゼを天麩羅にして、「ハゼ・イモ天麩羅の年越し蕎麦」を食べて寝ました(笑)。

↑ハゼ・イモ天麩羅の年越し蕎麦

 

↑静岡県は焼津の雑煮

 

 んで、朝起きて雑煮作って食べたあと、試衛館稲荷へ初詣に。ちなみに、静岡県焼津市の雑煮と書いたものの、どちらかと言うと我が家流というだけかもしれない。でもまぁ、カツオ出汁と醤油で味付けして鰹節をぶっかけるスタイルは、醤油味で真っ黒おでんに「おでんの粉(イワシ粉や鯖節粉)」をぶっかけて食べる静岡のソウルフード「静岡おでん」と同じなんすわ(苦笑)。

 私にとっての雑煮はコレで、透明なすまし汁みたいな美しく上品な雑煮はちょっとなぁ(苦笑)。漁師町だけに、これ食ったらパワー出るし、鰹節は腐るほどあるからどんどん使え~的な雑煮が好きです。

 

↑試衛館稲荷

↑試衛館跡の案内柱

 

 普段は立ち入ることができない試衛館稲荷ですが、毎年元旦だけは研究家あさくらゆう先生と地主さんのご厚意で解放されます。また、市谷柳町試衛館さまや今戸新選組さまなど、各新選組同好会さまのご協力の下、初詣が可能となっておりまして、神社に近寄ってお参りすることができます。

 

↑試衛館稲荷の額

↑社殿の彫り物

 

 上記の彫り物は江戸時代のものが残されている可能性が高いそうで、そうであるならば近藤勇や土方歳三、沖田総司等はこれを見ていた可能性が高いかなとか思ってたり。

 

↑「試衛館稲荷 由緒」

 

 上記はあさくら先生の文による「試衛館稲荷由緒書」です。この稲荷神社の由来を知ることができます。

 

 さて、参拝が終わったわけですが、あさくら先生は遅れてくる人々のためにしばらく待機するということで、その時間を利用して市谷柳町の史跡を巡ってこようかなと。実は、ここから徒歩10分の所に「由井正雪の屋敷跡」と伝わる場所があるんですね。なので、そちらに行ってみました。

 

 てくてく歩いていると、途中にこんなものが!!。

↑林氏墓地

↑林氏墓地案内板1

↑林氏墓地案内板2

 

 なんと、江戸時代初期の儒学者・林羅山と大学頭を世襲し、江戸時代の朱子学の地位を確立した林家の墓所です。こんなところにあったのか……気がつかなかったわ~。ただ、普段は封鎖されていて墓域には入れません。毎年11月上旬の頃に解放される日があるみたいです。それ意外は、格子の隙間から遠目に覗き見ることは可能です。いやぁ、事前に知ってたら一眼レフカメラに高倍率ズームレンズ付けて持っていったのに、手元にあるのはコンパクトカメラのみです(泣)。

 

 林氏墓地からさらに歩き、「秋葉神社」へ。

↑秋葉神社

 

 この秋葉神社境内にある「正雪地蔵尊」があります。

↑正雪地蔵尊

 

 この場所は、江戸時代初期に軍学者由井正雪の屋敷の一部だったという伝承がある場所だそうですが、史料などで実証されてはいません。あくまでも言い伝えられている場所と言う事になります。祀られている地蔵は、ここから掘り出されたものを地蔵として祀っているらしいのですが、正確には「キリシタン灯籠」と言われるものらしいです。

 キリシタン灯籠とは、灯籠の竿と呼ばれる部分に人物像が彫られた洒落た灯籠のことで、隠れキリシタンが灯籠に刻まれた人物像をマリア像に見立てて祈りを捧げたとも言われますが、これもまた後世の人々が後付けでこじつけたものとも言われます。

 そんなわけで、隠れキリシタンと関係あるのかないのかわかりませんが、少なくとも地蔵として長く祀られておりますので、今は地蔵なのです。

 由井正雪という人物に関しては、江戸幕府三代目の徳川家光が死んだことを切っ掛けに、正雪が浪人救済掲げて浪人を集め幕府打倒を企てたとされます。挙兵前に発覚したため正雪が生まれ育った静岡県清水あたりで捕り方に追い詰められ、自刃した事件「慶安の変」が起こりました。この江戸にある屋敷は、由井正雪がまだ江戸で軍学者として塾を開いていた場所という伝承のある場所と言うことになります。

 この徳川家三代目家光あたりまでは、徳川幕府は武断政治で外様大名が取り潰しまくった時代です。取り潰された大名家の家臣が浪人となって巷に溢れており、彼らは日雇いの肉体労働などで不安定な生活が強いられていました。もう戦も無い時代であり、彼らが武士として武功を立てて立身出世する道はありません。そして儒学倫理もまだ広まりきっていないことから、士道倫理も生まれたばかりで広く普及しておらず、武士にとっての存在理由「合戦で活躍する」が失われた時代で、武士の心が荒んでいたんですね。町奴や旗本奴といったチーマー化する若い武士や、浪人という無頼の徒を集めて叛乱を企てた由井正雪といった者たちが出てきた時代です。そんな時代背景のなかで、兵学者の山鹿素行が平和な時代における武士の使命を示した「士道」を生みだし、同時代の保科正之(会津藩祖)が四代将軍家綱を補佐し、武断政治をやめて文治政治に切り替えて大名潰しをやめて浪人増加に歯止めを掛けたりしています。

 

 まぁ、そんな時代の片鱗を感じることができる市谷柳町の史跡は、試衛館跡も含め見所多いです。試衛館跡を見たら、こういった近場にある史跡もついでに巡るとおもしろいと思います。

 

 ということで、元旦早々から史跡巡ってきて充実した一日でありました♪。