ゲベール銃とミニェー銃の実弾射撃を見学 | 幕末ヤ撃団

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それを正していくのが歴史学の使命ですから。

 昨日のことになりますが、研究家あさくらゆう先生からのお誘いがあり、幕末の銃砲実弾射撃を見学してきました。

 

 写真は、一番手前からミニェー銃・ゲベール銃・現代の散弾銃となります。当初はゴールデンウィークのイベントに備えて同人誌を増産する予定日だったのですが、あさくら先生が午後からミニェー銃の実弾射撃テストをするけど来ないかと誘われたので飛び付きました。

 午前中にコピーセンターでコピーさえしてしまえば、製本は後ででもできるので……。

 そんなわけで、午後一時にあさくら先生と合流し、栃木県某所の射撃場へ。実は、前回もミニェー銃とゲベール銃の射撃は見学していたりします。が、その時はミニェー銃に問題があったらしく、ミニェー銃は空砲のみだったのですね。今回は、ミニェー弾を使用してのテスト射撃ということで、これは是非見てみたいと思った次第です。

 

 

 あさくら先生自家製のハトロン(?)。球形弾と黒色火薬を紙でまとめたものです。弾込の際は、先端を破って銃口から突っ込みます。火薬、弾の順に銃身内に入れていきますが、弾と一緒に紙も突っ込みます。なので、この紙が弾を押さえる役割をします。つまり、銃口を下に向けても球形弾が銃口から転がり落ちてしまうということはありません。これは、火縄銃講習会の時にも講師だった十四郎氏も主張されていましたが、滑空銃だから丸球だから”下向きに射撃できない”という話は大嘘ですね。でなければ、籠城戦の際に城壁から敵を撃ち降ろす戦い方が出来ないわけですから、籠城戦で銃は役立たずになってしまう。んな、馬鹿な話はないわけです。

 

 あさくら先生が、射撃の準備をしている間に、古銃の細部を見てました。

 ミニェー銃の「火穴(ひあな)」です。この突起部に雷管(キャップ)をはめ、引き金を引くとハンマーが雷管を叩いて着火。着火した火は火穴を通って銃内部の発射火薬に引火し爆発。爆圧にとって弾丸が銃口から押し出されて射撃となります。

 こちらはゲベール銃の火穴です。この部分は、ミニェー銃もゲベール銃も同じですね。まー、最大の違いは「ライフルの有無」ですしね。

 ついでなので、以前に行われた「火縄銃講習会」の際に撮影した、火縄銃の火穴を参考掲載しておきます。

 これが火縄銃の火穴です。火蓋を開いて、火皿が見えています。この火皿に着火火薬が盛られます。火皿の中、銃身側に小さな穴が空いていますが、これが火穴です。引き金を引くと火縄が火皿に落ちて着火、着火した火は火穴を通って銃身内の発射火薬に引火爆発します。

 

 では、今度は弾丸の違いを見ていきましょう~。

 ゲベール銃の球形弾(丸球)です。

 ミニェー銃の球形弾です。銃の口径がゲベール銃とミニェー銃で違うらしく、ゲベール銃の球形弾より少し大きめになっております。ちなみに、この口径の大きさは製作誤差や銃の種類で違っていて、銃にあったものを使わなければいけない。

 ただ、時々見かける「その銃専用の弾丸を使用しなければ撃てない」みたいな論調は、現代の銃ならともかく古銃の場合は当てはまりません。要は爆圧で弾が発射されればいいんです。つまり、銃口より大きな弾は入りませんが、小さな弾なら入るんですね。入るってことは撃てるんですよ。

 ただ、ガスが抜けてしまったりして爆圧が弱くなり、カタログスペック(最大貫通力&最大射程)を発揮できないというだけです。でもね、銃なんて攻撃力の高いものは、70~80%の力でも人殺せます。ちゃんと弾を撃てさえすれば戦争はできます。機動戦士ガンダムでは、赤い彗星のシャアだって80%の完成度だったジオングでガンダム相手に互角に戦ったでしょ?。あ、あれはフィクションか(苦笑)。

 そして、ミニェー銃最大の特徴は、この「ミニェー弾」を使用する点にあります。いわゆる「しいの実型の弾」ですね。ミニェー銃は銃身内にらせん状のライフリング(溝)が施されております。火縄銃やゲベール銃は滑空銃ですから、銃身内はツルツルです。

 このライフリングが弾丸に回転を与え、ジャイロ効果で弾丸の直進性が増し、射程距離が飛躍的に伸びます。

 写真はミニェー弾を後ろから見ています。ミニェー弾の後ろ側は中空になっており、本来はそこに木栓が入っています。写真ではあさくら先生自作の栓がはめ込まれてました。

 ライフリングされた銃……ライフル銃は、滑空銃とは比べものにならないほどの攻撃力を持ちます。が、銃身内にライフル溝があるために弾込がし辛い。爆圧を逃がさず、最大の攻撃力を持たせるには、なるべく銃口サイズと一致した弾を用いなければなりませんが、ピッタリサイズだと、今度はライフル溝に引っかかりまくって弾込めし難いんですね。ミニェー弾は少し小さめにすることで、弾込めしやすくしています。そのかわり、内側を中空ににしてそこに木栓をはめ、射撃時にはこの木栓が弾丸内部に押し込まれて弾の裾が広がり、ライフル溝に食い込みながら発射される。この際にライフルから弾に回転が伝えられるわけです。これが画期的な発明で、火縄銃やゲベール銃が一気に旧式銃とされてしまう要因になっています。

 

 ゲベール銃の先端から黒色火薬と弾を入れ、突き固めた直後の火穴です。

 火穴の中に、発射火薬(黒色火薬)が押し出されて見えています。これに着火すると爆発します。

 こちらはミニェー銃の弾込終了直後の火穴部。ゲベール銃と違い、火薬が押し出されてこない。ミニェー銃の火穴は少し小さいそうで、火が銃身内に届くように手動で火薬を継ぎ足してました。

 

 では、射撃時の写真を見ていきましょう~。

 ゲベール銃からテスト射撃です。

 ゲベール銃です。ハンマーが落ちて雷管を叩いて着火。この着火時の火薬が飛び散っています。銃口からも火を吹いております。

 ああ、これベストショットですなぁ~。これもゲベール銃。

 そして、これがミニェー銃の激発時を撮影した一枚。ゲベール銃は20発前後、ミニェー銃はゲベール銃ほどの安全性が確保されていないということで4発のテスト射撃に留まりました。ライフル銃で、ミニェー弾を使用と言う事もあり、滑空銃たるゲベール銃より爆圧が強いんですよね。「射撃音」も全く違います。ゲベール銃は「パーン!」という感じですが、ミニェー銃は「ズドーン!」という低音が効いた射撃音で、爆圧の違いを音からも感じることができました。

 ちなみに、ミニェー銃も”しいの実”型のミニェー弾と球形弾(丸球)をそれぞれ撃っていたわけですが、ときどき「ミニェー銃はライフル銃だから、使用される弾丸はしいの実型のミニェー弾で、球形弾は撃てない」みたいな事を言う人がいます。それ噓だから。だって、あさくら先生は、ミニェー弾と丸球の2種類の弾丸をそれぞれ撃ってますから。わし、この目で実際に見て確認してるし。

 つまり、カタログスペックを発揮できないってだけで”撃てる”んですよ。カタログスペックを信じてる”ミリタリーオタク”に、そんな勘違いを信じている人が多いので、特にミリオタの人に注意喚起したいっすね。

 自分の命が賭かっているのですから、弾がなけりゃ石だって撃とうとするのが人間です。そこを見ずに武器のカタログデータばかり見ていると勘違いしやすいですよと。

 

 

 古銃の射撃を終えた後、現代の散弾銃で射撃練習するあさくら先生。

 

 という感じで、午後は実弾射撃を見学してきたわけですが、やはり実弾射撃を見ているだけでも勉強になります。歴史学は実験のできない学問ではありますが、銃砲の場合は実験ができちゃいますので、自分の目で見て確認することが可能なのですね。なかなか勉強になった一日でございました~。

 そしてあさくら先生、お疲れ様でした~♪