言語検死官2021 | マノンのMUSIC LIFE

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今年の新曲です。
10分ジャストと長尺なので、まずはYouTubeをスタートさせてからBGMとして聴きながらお読みください。いつもはネットで拾った画像と動画を繋げてお茶を濁してますが、今回は絵も完全オリジナルですよ~。

言語検死官2021  Coroner for Obsolete Words

/ Manon ft. Ca-μ+ Sabu-liminal BASS

    
東京に出て来た頃、雑司ヶ谷墓地の隣に住んでたのですが、そこを徘徊しながら、言葉の墓場になぞらえる夢想に浸りつつ、日暮しパソコンに向かいて、徒然に心に遷るよしなしごとを…という曲と捉えてもらえればと思います。

言葉を考えるとは人間を考えること、もっと言えば生物を考えることだから「死語」というテーマとはどんどん離れて行っちゃったけど。

 

当時はちゃんと徘徊したことなどなかったので、久しぶりに南池袋4丁目を再訪してみました。自撮り棒持参でww


私が住んでいたアパートはちょうど霊園の北端のブロック塀のそば。
都内の繁華街なんてどこもそんな感じですが、都会っぽいのは駅周辺だけで、池袋もこの辺まで来ると、戦前に建てられた家が建築基準ギリギリでひしめいていて、ドブネズミが電線をぶら下がりながら移動するのを目撃できるような「ザ・下町」でした。お店とかはずいぶん入れ替わって木造家屋も減ったけれど、街並みそのものは変わりませんね。

霊園のすぐそばとはいえ、幽霊がひょっこり遊びに来るようなことはなかったんですが、2年目に入ってそのドブネズミ君が我が部屋まで訪問するようになって、本の背表紙やゴマ塩のボトルのフタをかじられたり、被害がどんどん拡大してたいへんなことに。

いろんな罠をしかけたり、何度か睨み合いになって直接対決したりとがんばってたんですが、彼らが連れてくるダニに噛まれるようになってついにギブアップ。約1年半で埼玉県境近くに引っ越すことになったのでした。かの闘争も懐かしき昔話なり。

動画の文字は読みにくいかもしれないので、著名人のお墓をガイドとして登場順に書いておきます。

荻野吟子→25.小泉八雲→39.夏目漱石→13.大川橋蔵→6.泉鏡花→お昼寝猫ちゃん→36.永井荷風→31.竹久夢二→11.江戸家猫八→クロネコくん


題材の死語について、簡単に分類すると以下のようになるかと。
① かつて流行語であったもの
② 言葉の基礎となる事物がなくなってしまったもの、または逆に特殊性がなくなって当たり前になったもの(ex.プッシュホン)
③ 単純に言いにくい、使いにくい言葉、外来語で代替できる言葉
④ ポリコレや弾圧など社会的な理由によって使われなくなったもの

① 流行語である以上、一時的に消費され尽くせば死語となって消えていくのが宿命ですが、それでも例外的に生き延びたり、なにかの弾みで復活したりするものがあるのが、言葉の面白いところ。

「ガチョーン」がなぜか一時リバイバルしたこともありましたが、川の流れが途切れて干上がったところが、また水が湧いてきて繋がったようなものかな。

② 実体が消えても言葉だけが残る、というケースもありますね。たとえばカセットテープなど使わなくなっても、いまだに「デモテープ」なんて言い方するし、アナログ音盤をリリースしなくなった時代も「レコード会社」って言ってましたね。
音楽以外だと、木材を使わなくなっても「枕木」と言うらしい。

③ 日本語で言えるものをわざわざカタカナで言うな!なんてご年配もいらっしゃるけど、たとえば「自己同一性」なんて言われても全然イメージ湧かないものを「アイデンティティ」と言えばしっくりくる。というかそもそも違うものを指してるような気もするし。

「モチベーション」とかも同様ですが、問題は読みが適切でないと英語としての発音を別に覚えないといけないわけで、これは昔から苦労するところ。たとえば、眉毛を書くコスメ、かつての眉墨を日本では「アイブロウ」と呼ぶのが主流なんですが、browは「ブラウ」なんですよねぇ。

外来語は「エリック・プランクトン」みたいに、どうしても馴染みのある発音に寄ってしまいがちで、「趣味」に引きずられたsimulationはもう「シュミレーション」でOKみたい。今「あらたしい」と書くとXになるように「シミュレーション」が×になる日が来るかも。


現在進行形で誤用が広まりつつあるのがなんといってもfeaturing!!

洋楽ファンには、70年代のルーファスfeat.チャカ・カーンあたりからおなじみだけど(最近の洋楽MVを見ると、featureメンバーの字数が長くなりすぎてft.という略も取っ払ってカンマだけで繋げる表記が多くなってます)、この10年のコラボばやりの影響か、日本でも一般的になってみんなでフューチャー!フューチャー!。

林先生あたりがよっぽどがんばってくれないと、今後10年で「フューチャリングでオッケー!」となること間違いなし。


④ 実はもっとも問題意識を感じていたのはここで、この歌詞自体も「白痴美」ってもう死語だよね、ってとこから始まったのですが「きちがい」「精神異常」「痴呆」など障害関連のものはほぼ駆逐されてしまったようです。
かくいう私も「つんぼ」の末席を汚す立場になってしまったわけですが、差別語に傷つく人はいたとしても、言葉を殺せば差別も消える、というわけではない。
一方「あいのこ」のように、彼らがモデルや俳優として持てはやされるのと並行して「ハーフ」と言い換えられるようになったケースもある。

ハーフと言えば「ニューハーフ」という言葉は桑田圭祐が起源という通説がありますが、差別的な色が薄いからか完全に定着しましたねぇ。それ以前は「ミスターレディ」なんて呼ばれたことも・・・カワイクない。

「デブ」「ブス」「ハゲ」が禁止にならないのは、対象となる割合が多すぎるから?差別語も対象がある程度の勢力を持つ場合は保護されないというのは興味深い現象。「顔面が不自由」とか言い換えても、かえってバカにしてるみたいだしね。
「白痴美」は「白痴」と運命を共にして死んでしまったけれど、先ほど挙げた「テープ」のように、フラットな言葉なら単独に生き残るものもあるのが面白いところなんですよね。

とても一年では掘り切れない、奥の深い題材です。

さ~て、肝心の新曲ですが、今回もなかなかの難産でした。

中間部はこの数年流行ってる、ヴォーカルに和音を設定して自動的にコーラスを生成するハーモナイザー系ヴォコーダーシンセのエフェクトを使ったのですが、3月には発売元のプレゼント応募のためにこれを使った動画をアップする程度に完成してたのに。。。

 

去年が半分くらいメロのない曲だったので、今年は激メロディアスなギターポップを!と思ってたんだけど、歌詞は膨れあがってくるのに乗り物となるメロディを当て切れず、夏頃には暗礁に乗り上げて、もう全編ラップでもいいや、と開き直ってからなんとかここまで漕ぎつけた次第。生ギターのストロークが残ってるのが苦闘の痕跡ですね。

5分に収めるのをあきらめたらさらに長くなって、なんとか10分ジャストに切り詰めました。それでもボブ・ディランの新曲16分54秒に比べれば短いからいいや。
そのディランの事も入れ込んでいますが「どれだけ弾丸が飛べば兵器は禁止されるのか?」と歌った人が、その爆薬で築いた資産のおこぼれをいただく時代ですからね。彼はたぶん「別にそんな意味で作ったんじゃない」って言うと思うけど。


Bob Dylan - Blowin' in The Wind

 

風化するのは自然な話で、どれだけ歌詞に普遍性があるとしても、50年前の歌が今もなにかの象徴として機能する方がおかしい。想像するだけじゃ平和など訪れるはずもないのはみんなわかってるのに、まだ牧歌的な時代に死んだ人の歌をいつまでもありがたがるのも思考停止と呼んでいいでしょう。
古い世代や権威を求める人がそこにすがりつくのはわかるけど、今の時代を活写する曲は毎日産み出されているのです。たとえば一昨年にピューリッツァー賞を受けたケンドリック・ラマーなどが新しい権威になっていくのかも。


Kendrick Lamar - DNA. (Lyric Video)


そもそもノーベル賞なんて賞金が大きいから注目されるだけで、その選定自体に公正性があるわけでもなんでもない。私的な財団のお金なんだから好き勝手にあげればいいわけで、「核兵器を撤廃する!」と言っただけで平和賞をもらってもいいんです。

グラミー賞とかでも同じだけど、誰々が入ってないとか文句を言う方がおかしい。本質的な価値と無関係なものはただ無視すればいい。そのうちレコード大賞のように誰も重視しなくなるでしょう。


ラップってエミネムのようにしゃべり倒すものもあるけど、今の主流は低いトーンでダルなもの。ライムの分量が多いので、私もオールドスクールな感じから、今風のものまでいろいろ試したつもり。和歌やお経まで入れ込むのは、歌ってたら自然にそうなったので想定外でしたけど。

 

でもラップもある程度決まったメロディの流れ(フロウ)に言葉を乗せているように外形的には見えるわけですが、古代の和歌もそういう形式だったわけですよね。

当時の録音が残ってないので本当はどうだったのかわかりませんが、現代の百人一首の詠み手はたいてい同じようなフロウで歌っているように見えます。

なんせ「和詩」じゃなくて「和歌」だもん。メロディが前提としてあったんでしょう。


最近でもラップと歌の境界線はかなりあいまいになってきてますが、ラップがうまい人はやっぱり歌もうまい。

歌詞は歌唱にとっての「乗り物」なわけで、字面でもそれなりの価値を感じれるレベルではありたいと思うけれど、音楽のいいところは意味性に縛られないところなので、音声・リズム的に気持ちいいことが第一なのです。


日本語ラップの元祖は吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」だという説もありますが、本場のラップの素養を持ったアーティストが世に出るようになったのは1980年代半ばあたり。

日本語でやってるとどうしてもカッコばかりの偽物のように見えましたが、それはロックだって同じこと。むしろ言葉のイントネーション、リズムを平坦化させるという部分では、日本語はロックよりも実にラップ向きだと感じます。

今回、小倉百人一首から引っ張ってきてる部分もありますが、たとえば「名こそ 流れて なお聞こえけれ」など、3・4・7で頭韻を畳みかけるところなんて実にラップ的なリズミックさで、千年前も今の日本語ラップと同じような感覚で作ってたのでは?とも思えてきました。

ロックはもう還暦を過ぎてしまったジャンルですが、70年代にどんどん御大層なものになって行って、それをパンク~ニューウェーブが一度リセットして若返った歴史があります。

ヒップホップはロックに代わって世界の軽音楽をリードするジャンルとなって、今や黒人・白人・その他の人種までその影響範囲は史上初とも言えるもの。

PC上のプログラミングがメインとなって、演奏面で肉体性を離れたのも大きいでしょうけど、黒人音楽の流れで言えば最新型のbluesでありfunkなのは間違いないでしょう。

30年ほどロックより若いものの、ある意味成熟期に入ると同時に、音楽的には停滞期に入っているようにも見えます。

ピューリッツァー賞をもらうなんてのも、ヤバい兆候かもしれません。

みんながみんなTR-808系のドラムマシンを使って、サブベースと呼ばれる重低音を強調する流行もそろそろ終わりにして、次のフェイズに進んでほしいものです。

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言語検死官2021  Coroner for Obsolete Words

/ Manon ft. Ca-μ+ Sabu-liminal BASS           

南池を徘徊 碑銘を味わう
狩られた言葉の眠りを破り 墓を暴いて因を辿れば    
並行世界への隠しコマンド拾う 動画催吐に干°すとする         

然すれば忘れられたオリヂナル さしも白魚の美手となる更なる    
笹の葉salasala萌ゆる想いを 醒めた湖畔に似合いのJazzCake
再建術式 軽車熟路と謂へども 無影灯に盲み乍らも

趨勢を詳細に報セヨ     
サクサク画策 ナップサックから零れる 砂喰う歌詞も亦

B級C級gourmet 三ツ星など生護謨の味

白痴美の才媛 shy気怠るく 浪裁てず鳶立てず
衣干すてふ片羽の堕天使 掃溜の鶴のよに 涙目にて機を織る
夜目に浮かぶは 薄きくちびる

星影の下 着色写真かの様に 蒙昧な紅を点す     

人は言葉 言の葉なくして 心無し

未来無し 意味も無し 恥曝し 届かぬ話    
口の端に膾炙せなくば 玩ばれて棄てられる実体
吹溜りの予定調和お希みなら 御定まりの結末に逆戻りしちゃうわ
反駁を畏れずcome-back Scumbug Ladybug 

顛倒するも無視するpassers-by    

斯くして禁忌の民 in a kinky nation

自縛趣味嵩じてMajiに飢餓死する5秒前
汚辱に満ちては 生殺与奪 身の毛も弥立つ
仕事に飽いたらnano葉に泊まれ pfazyピコフェムトアトゼプトヨクト
Mamma Mia! 才能に溺れる 翼も翌も浴も欲も 悪くも能くも

両手両足 持て余す虚栄心と    混同すべからず 克己する自尊心    
猿真似を称してhomageとは笑止千万    逸・悪・莫
口より出づれば独立独歩    後追いの果て言い繕うも復 唇寒thing ↑↗→🏹 溢亜來    

帰りてぇ離職してぇ生涯 死語心地好く脂肪吸いてぇ自国
草食性生来孤独症theRockShow    挫折症/obsession/seduction

革新を画く親鸞 善人猶もて往生を遂ぐ

況んや瘋癲プータロー    ニートをや
高邁なお説に聴き居る 聴衆疎 雲散霧消 O la la 不亦楽乎

Hamelnも心地善ければ笛吹きて スマホアプリでチューニングする
前世紀にはアナキストとや 今やなんなら好々爺 uh-huh

人は言葉 言の葉なくして 伝わらず

波立たず 待ち人来たらず 詠人知らず
吹くKHARAに 話梅の旗の萎るれば    宜讒謗ヲ 護國ト謂フラム

爆心地に埋もれた阿鼻叫喚を 語り継げよ 掘り続けよ
千層を知らない子供・・・No! 古木たちよ
自虐への耐性亡くば    他罰に堕する弱さ露わに成るは
諸世紀の中に切札の功罪を求め弾劾西洋

シンギュラリティが導くsingle's ability
年重ね触り好き物しか口にせざれば 偏食の果てに細胞変shock!   you are what you eat
目先の痛快に靡けば政治ショウ人に賽銭を投げ入れる愚をまた再現
理想失くしては炎上に給油 鉄拳も鉄砲も徹底討論も同等

米寿過ぎても不惑たる自己相似 襟締外套ドレスコード legitimate?    
すまじきものは宮仕え 咳ひとつが鶴の声

NobleなNovelなど掘り尽くした天然ダイヤ
爆風で築いた富のお零れ貰い受けて 古の反戦歌も風化した'10年代や    
それにつけても たれかは測る 口先の平和の重さ軽さ憂さ
肖りたくば勲功は存命中に讃えるがいいや    

権威権力断固断罪 嫌悪憎悪厭忌 唾棄唾棄唾棄唾棄
虎の威を借る妖な狐子なら 虎穴に籠るも孤高を覚えず
慣習因習伝統継承 不要不溶浮揚不用
白々し追悼をお手軽にツイート タダでDLしたスタンプにも劣る

不具者戴天の仇を討つ 三十六景十景加えて美禽に障る ルンペン
プロレタリアート 老life crisis Oh!  何此れポリコレ? 
不遇を託つよりも 代議制の意義を再評価せねば
票犠牲を最小化せねば 在らず N'est-ce pas ?

車夫こそ知るや 旨い汁屋と下々の竈
百姓は生かさず殺さず 獣人として憐みの令を適用するか?
伏字だらけの恐怖政治 起こした老化? 米騒動ゲバルト
戦前とは整然と鼻先揃えさす    凄然たる世界 you like it?
            
水は言葉 言の葉流れて 正誤無 人は哀し 

異議は無 正義も無 抑々の話
二手で掬ぶも 然程は掬えず    時は刹那に慈悲も無
頑迷固陋な侘住居の孤老    勿来流れりゃ猶同じなれ

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就寝儀式忘れず 東西南北 ゆめ怠りなく 祈り捧げよ
精神分裂 四裂八裂    多情人格 4P 8P Let it be 

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劣化するY-geneと引換の    不老不死志向する廃人
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一級河川を叩いて渡るニモ 六文銭 若干多めに携え
地獄の沙汰も心付け次第    名を改むるに若くは無し

球体の何処で生きようと 鯔の詰まり所詮は異教徒
竟の住処にゃ寒くはおへんか? なのに其方は行くのかい 京都

中中に恨みざらまし世は情 孤独死を見越してdetoxy    
恐るるに足らざるSARS    絶つ鳥 址を濁さず
        Coroner 2021     How about it?

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例年どおりつらつらと書き連ねましたが、上の文の中でも、読み返すと「これも死語では?」と怪しい言葉がけっこうありますねぇ。

自分で気づけばまだいいけど、まったく無意識のうちに古臭い文章になっていることが一番おそろしい。

 

よいお年を。

 

 

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