愛情ホルモン、オキシトシン | 北さんのブログ

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 一昨年の6月まで、我が家の行事はほとんどが2頭の愛犬(黒のラブラドールレトリバー)を中心に回っていた。エサやり(朝の4時に2頭に鼻で起こされて私が、夜は妻が)、散歩(ほとんど妻が)は当然のこと、室内飼いであったので盗み食い防止への対応(特に雌で年長のティファニーは異様に賢く、飼い主の裏の裏をかくので壮烈な頭脳戦だった。冷蔵庫以外なら電子レンジもふすまも前足や鼻で器用に開けたし、人の会話や電話も盗み聞き、なんと時計の時刻まで読めた・・・)から外出や旅行の時の対応(訓練士の先生に連絡し、先生の自宅で宿泊)に追われていた。悲しいかな、6月に13歳になったティファニーを骨肉腫のため自宅で看取ったが、犬用のCT検査がいかに高額であるか、犬用の在宅酸素機器のレンタルがあることなどある意味、貴重な経験をさせてもらった。今は、残された雄のアーチーをある意味、溺愛している状態だ。注がれる愛情が50%から100%になったことを犬は良く判っており、瞳と瞳が合えば全身をくねらせながら体をすり寄せて来る。こちらもその瞳や姿、行動を見ると思わず目尻が下がり、口元も緩み、ええ年をしたおっさんが、息子たちが赤ん坊の時でさえも言わなかった赤ちゃん言葉で語りかけてしまう。正直言って「愛犬家」や「愛猫家」以外の方から見れば「アホちゃうか」のレベルだし、妻や子どもたちが冷ややかな視線を浴びせてくる。でも一体何故こんな行動をええ歳を取ったおっさんがするのか?
 既にご存知の方も大勢いるかと思うが、二年前に麻布大学獣医学部を中心とした研究チームが、犬と人間(飼い主)が親密な関係を築く理由をホルモンレベル、「オキシトシン」が大きな要因である旨、解明したことを科学雑誌「サイエンス」に発表された。
 「オキシトシン」は脳下垂体後葉から分泌され、哺乳類の進化にとって重要な役割を果たしており、単に出産時の子宮収縮や母乳分泌を促すためだけではなく、愛情や信頼感にも関わっているため、別名「愛情ホルモン」とも言われている。哺乳類の幼い子供と母親は、互いに見つめ合うことでオキシトシンが分泌され、親密な関係が生まれるのだ。また母子関係だけではなく、夫婦関係(雄―雌関係)や同種間での社会性を築くため、つまり複雑な仲間関係の中で自己犠牲や信頼、友情といった感情や社会性行動を行わせることにもオキシトシンが大きく関わっている。
 麻布獣医大学の実験では、犬と飼い主が見つめ合い親密な交流を持った時にオキシトシンが分泌され、更に濃厚な接触を持った場合には犬、飼い主ともオキシトシンの分泌が最大になった。逆に犬の鼻にオキシトシンをふりかけると、犬は飼い主を更に見つめるようになり、飼い主のオキシトシンも増える。また、犬と共通の先祖を持つ狼で同様の実験を行っても犬の様な反応は起こらなかった。つまり犬と人間はお互いに親密な関係を持ち、生活に適応する中で、異種である両者の結びつきや絆を更に深めるオキシトシンを分泌、吸収するように進化してきたのだ。  
 実は人間への投与実験でもオキシトシン分泌の増加は相手への信頼感が増し、対人コミュニケーションが改善、結果として利他主義を誘発する、というような結果が出ている。  
 折しも医療界では医療事故調査制度が開始されている。また、以前から医療崩壊の一因として医師―患者関係の齟齬が問題視されている。日本人の独壇場であるイグノーベル賞で、誰か愛情ホルモンであるオキシトシンをコロンとして医師用に発明してくれないかなあ。