今更ですが「国家戦略特区」 | 北さんのブログ

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 下火にはなったものの一時、各メディアは安倍内閣に係る「忖度」疑惑で持ちきりで、中でも我々医療界に近い?獣医学部新設問題ではメディア上に「国家戦略特区」の文字が飛び交っていた。ところがメディアや一般市民のみならず、医療従事者の多くが「国家戦略特区」に関してほとんど関心や知識を持っていのが現状である。安倍首相が復権した当時、ブログに「忍び寄る国家戦略特区」https://blogs.yahoo.co.jp/kitaga0798/68789403.htmlと題した一文を載せた経緯もあり、今更だが「国家戦略特区」に関して記載する。
 まず、我が国における「特区」は市場原理主義を錦の御旗に規制緩和を勧めた小泉内閣での「構造改革特区」がスタートである。本来、世界中にある約3500にもわたる「特区」のほとんどが「経済特区」として途上国に設けられており、先進国である日本に「特区」が設けられたのは異例なことである。その後「先端医療開発特区」、「総合特区」、「復興特区」とその裾野が拡がって行き、アベノミクス第3の矢、成長戦略の柱として成立したのが今話題の「国家戦略特区(いわゆるアベノミクス戦略特区)」なのである。 
 初期の「特区」は地域活性化を目的とした地方からの提案で、関係省庁が関与し得た「提案型、ボトムアップ方式」であった。しかし、「国家戦略特区」は内閣府の閣議決定と安倍首相が議長を務める特区諮問会議(規制緩和を唱える民間議員が名を連ねる)による「トップダウン方式」で、関連省庁の大臣をメンバーから外す念の入れようであった。
 経済成長を柱としている「特区」だが、「特区」における安易な規制緩和が日本の医療制度に与える危険性を早くから警鐘していたのが神戸市医師会や兵庫県医師会であった。兵庫県医師会では平成22年から28年まで特区問題特別委員会を立ち上げ、私も当初より委員として参加してきた。委員会では「特区」での医療問題に関してフォーラムや地元議員、行政との勉強会を開催。また日本医師会も平成24年に、川島(前兵庫県医師会長)委員長のもと、特区対策委員会を立ち上げ、日本の医療に与える「特区」の現状と対応に関して報告書(日本医師会HPからダウンロード可能、「特区の現状、課題および対応について」)を作成した。
 報告書では、株式会社の医療機関経営への参入や新たな保険外併用療養である患者申出療養など、安易な医療への規制改革のために医療の安全性や生命倫理などが形骸化し、「特区」は「TPPの内国化」として日本の医療制度を根底から揺るがしかねない、と訴えている。
 今回、「国家戦略特区」では「日本の獣医師不足」対策として獣医学部新設が計画されています。しかしながら、一人あたり診る家畜やペット数で比較すると、日本の獣医師数は諸外国に比べ十分か、やや多いレベルで、問題なのは「地方の公務員獣医師不足」、つまり獣医師の偏在なのである。同じように千葉県成田市の「国家戦略特区」において「医師不足」のためと称して厚労省、文科省を蚊帳の外のままに医学部新設が認可された経緯がある。獣医師と同じく、医師需給や地域、診療科の偏在を十分に検討することなく、以前から医学部新設を希望していた首相、官邸との大きなパイプを持っている大学に認められたため、「第3の忖度」とも囁かれている。
 「特区で岩盤規制に風穴を開ける」ことで破壊されるのは国民の健康や権利で、結果として恣意的な扱いによる新たな利権構造を生むだけである。新自由主義的な規制緩和を声高に主張しながら、一方では首相、官邸がトップダウンとして政策介入してくる整合性に欠ける「国家戦略特区」に対して今一度、注視する必要がある。