「健康食品」狂想曲時代 | 北さんのブログ

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 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌のみならずインターネットを開けると、「病院にも行きたくないけど血糖値、血圧が高いのを下げたい」、「薬はのみたくないけど膝や腰の痛みを和らげたい」、「何とか身体の脂肪を減らしたい」と言う消費者の思いを見透かすような「健康食品」の広告が洪水のように押し寄せてきます。内閣府の調査では2012年、国民の6割が「健康食品」を利用しており、50歳代以上の3割が毎日摂取しているだけではなく、就学前幼児の15%やペットまで「健康食品」を摂取している、まさに「健康食品」狂想曲の時代です。実のところ「健康食品」に法律上の定義は無く、広く健康の保持、増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指すものです。法律上、口に入るもので「医薬品」以外は全て「食品」になり「健康食品」はここに含まれます。「医薬品」は医学的安全性、有効性が国により認められ、医学的効果、効能が表記されたもので医師、薬剤師の管理下で病気の人に投与されます。一方、「健康食品」は健康な人が対象であり、科学的な安全性や有効性のデータは少なく、製品としての安全性、有効性も充分に検証されていませんし、品質も一定ではありません。「健康食品」の中でも「トクホ(特定保健用食品)」は各企業が平均4年以上の期間と数億円の投資をして臨床試験や安全性評価を行い、科学的妥当性の保障のもと「保健機能食品」として国(消費者庁)が有効性、安全性を個別製品ごとに審査し、「機能表示」する事を許可しています。「機能表示」とは、その食品がどのような働きをするのかを表示するものですが、あくまでも「トクホ」は食品なので、「脂肪を燃えやすくする、吸収を押さえる」、「お腹の調子を整える」や「強い骨を作る」程度の表現しか認められず、疾病の診断、治療又は予防にかかわる表示は許されていません。「サプリンメント」は「トクホ」以外の「健康食品」のうち、「栄養機能食品(ビタミンやミネラルなど17種類)」や、その他の「健康食品」の中で特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の食品のことを言います。(以下、トクホと栄養機能食品を除いたものをいわゆる「健康食品」とします。)「健康食品」には有効性、安全性に関する充分なエビデンスが乏しく、「トクホ」と違って「機能表示」を行えば薬事法違反に問われてしまいます。そこで「バイブル商法」と称される有名芸能人や一般人の体験談を通して、「何となく健康に良さそう」、「膝や腰に何となく効きそう」、「何となく瘠せそう」との怪しげな「グレーゾーン広告」が世間に蔓延っているのです。
 このような状況下で政府は2013年6月、アベノミクス「第3の矢」の成長戦略の一つとして、「国民が自らの健康を自ら守る」の下、「健康食品」の「機能表示」解禁を閣議決定しました。これは国(消費者庁)ではなく「健康食品」を製造、販売する各企業の自己評価、自己責任において「機能表示」を認める決定であります。実は健康食品市場は年間1兆2千億円で手詰まり、停滞ぎみであり、アメリカが「ダイエタリーサプリメント健康教育法」によって「健康食品」の「機能表示」を解禁したことで市場が4倍、3兆2千億円に跳ね上がったことを模倣しようとしているのです。ただ、「健康食品」に関しては各地の消費者センターに年間、1万2千~5千件の健康被害、財産被害(健康食品詐欺)の消費者からの苦情相談があがっています。この様な状況において、安全性、有効性を前提としない安易な「健康食品」の「機能表示」解禁は、規制緩和による経済発展の名の下、国民目線を欠いた企業優先の制度であり、安全性を訴える消費者団体や医療団体は「反対勢力」、「既存の既得権益者」として「岩盤」とまで揶揄されています。2012年の衆議院選挙において、「国民皆保険制度を守る」と同時に「食の安全、安心の基準を守る」と訴えていた安部首相ですが、「国民の自己選択の幅を広げる」、との謳い文句の下、結局は「健康食品」による健康被害の増大に終わってしまいそうです。
 この政策、規制緩和の根本には、国民の医療費削減を目論む財務省の影が色濃く見受けられます。毎年、増大する公的医療費に対して、財政負担のかかる公的薬剤費ではなく、自己負担、自己責任で「健康食品」に誘導することで公的薬剤費を減らそうとしているのです。これは「医薬品」を一般市販薬品のカテゴリーに変更することや、医療用検査薬を一般商品化にすること、医療施設ではなく薬局での自己採血により健康管理を勧める「セルフメディケーション」の一連の流れや、混合診療により有効性、安全性の未確認な医療を容認、推進する事と根底は同じであり、大きな問題を抱えているのです。
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