ソース焼きそばの思い出といえば土曜日だ。
今の小学校はどういう時間割になっているか分からないが、昔は土曜日は「半ドン」つまり、4時限目の12時過ぎには学校は終わり。給食もないのでまずは家に帰ってご飯を食べてから、残りの幸せな時間をどう過ごすか思いをめぐらせる日だった。
小学校高学年の時は京都に住んでおり、学校は歩いて10分程度だったので、すぐに帰る事が出来た。自宅に着くと既に母親が昼飯の調理を始めており、何かをするにしても中途半端なのでテレビをつけて大人しく待つ。そうすると、大体13時前ぐらいに調理が完了して、昼飯が出されるのだ。そこで始まるのが「吉本新喜劇」。昼飯+吉本新喜劇、これが関西小学生土曜お昼のトラディショナルでスタンダードなのである。実家は父親がいると食事中はテレビ禁止のしつけだったが、土曜の昼には父親は絶対にいなかったので、母親も少し規則を緩くしていたのだろう。
話をソース焼きそばに戻そう。土曜半ドンの昼飯に良く出たのが、これだったのだ。チルドコーナーで売られてる、麺玉が三つ入った、粉状ソースが付いてくるアレだ。そこに野菜をたっぷり入れて、麺を食ってるのか野菜を食ってるのか分からないくらいのものになっているのが我が家のソース焼きそば。
具は牛肉、玉ねぎ、人参、ピーマン、そして、もやしである。キャベツはあればという程度。
是非肉は牛肉も薦めたいのだが、今回もっと強く勧めたい食材はもやしである。頼むからもやしだけは絶対に入れて欲しい。
まず牛肉を炒めたら、玉ねぎ、人参、ピーマンと順々に入れて火を通していく。最後にもやしを加えて多少塩胡椒して炒める。
「もやしを入れて炒めたら、家庭だったら水が出てしまうじゃないか」と言われると思うが、それでいいんです、これがいいんです。その出た水分で麺玉をほぐすのだ。そして粉状ソースを振り掛ける。
そうすると、もやしの水分を吸ってやわらかくなった麺表面のでんぷん成分が、鍋の熱によって溶け出し、ソースと結びつくことによって、全体的にとろみのあるソース味の作りになるのだ。だから我が家のソース焼きそばは、さっぱりとしてない、どちゃっとしてる。仕上げに青海苔と鰹節を散らして完成だ。
食卓中央の大皿から取り分け皿にどちゃっと持って、野菜の旨味がたっぷり染み出したソース焼きそばを食べる。美味しさを沁み沁みと感じる。そんなところに母親から「ご飯もあるよ」と言われた日にゃぁ、一瞬動きが止まって、「お願いします」とすぐに皿を出してしまう。
褐色のソース焼きそばを見つめていると、隣の純白の白飯に目がくらむ。麺か野菜か、混沌か渾然か、そんなソース焼きそばを口に入れたあとの、白飯の中和と調和。陰陽印の成立を思い知らされるかのような味の小宇宙の完成。
しかし、また訪れるソース味への欲求。なんとも罪深い。