merveillesのストーリーおさらい | 空白の瞬間
2015年11月23日(月) 04時08分29秒

merveillesのストーリーおさらい

テーマ:マリス&GACKTの曲読解
本日はMALICE MIZERの世界観考察。

来年開催されるGACKTさんのLAST VISUALIVEをベストなコンディションで受け止める為に
ソロ活動で表現してきたストーリーをおさらいしようと思ったんですが
まずはマリスから繋がってるっていう設定確認をもう1度ちゃんとしておこうかと。

全部に対して確信的な答えが見つかっているわけではないので
あくまでも私の考え得る範囲での現段階の解説であることをご了承下さい。
リアルタイムで追いかけてない上弦下弦あたりは飛ばすかも。
未開拓のものに触れると足止め食らうので
基本的に既に私の中に見えているものをまとめていくという形にします。

デビューシングル『ヴェル・エール』が全ての軸になっているので
未読の方はまずそちらを読んで下さい。

merveillesは、この恋人たちが輪廻転生を繰り返して再会を目指すお話。
しかし曲によって主人公は異なり、色んな登場人物の目線で描かれます。

そもそもマリスの提示する死後の世界の理論は
人間、もしくは人間ではないものへの生まれ変わりを繰り返す輪廻転生。
しかしそれはやり直す必要性を現世に残した場合のみと考えられます。
生きる役目を全うした魂は生まれ変わらず
天に昇るというか消滅するというか、現世とは関わらなくなるという解釈。

『Le ciel』のPVは、死んだ人の魂を分別する世界を描いたものだと思われます。

ラストシーンで少女が吐血して倒れているところが起承転結の起。
PVを見る限りでは死因は工場爆破事故だと思われますがそれは重要視しません。
とりあえず少女の死からルシエルの物語が始まります。



メンバー5人が扮する白い羽根の衣装は恐らく天使のようなものをイメージしていて
人間界でも天国でもない、中間の世界が舞台となります。
察するに、転生させるか否かのジャッジを下す魂の分別は日常のお仕事であり
人間のように死に対する痛ましい感情を持ち込むことはなく
淡々とその魂を誘導するだけの使命を持った存在。



生前の様子と思われるブランコに乗っている少女の表情はつまらなそう。
「こぼれ落ちる涙はお別れの言葉」の歌詞のところでホロリと涙が頬を伝うも
薄汚れた死後の少女がそれを眺める表情に私は特に強い感情を感じなかったので
これは「現世に然程強い心残りはない」という描写だと解釈します。
つまり、死ぬと思うと悲しいけど執着する程の人生ではなかったと。



汚れてない方の少女が草原で楽しそうに踊っているシーンは
とても開放的で何かに喜んでいる感じ。
辛い人生だったから現世に戻る意思がないのではなく
生前にはそれなりに楽しかった思い出もあったよという描写なんでしょうか。
この楽しい記憶が対人に関するものではないというのがポイントかと。



そんな「お別れは少し寂しい」と「そこそこ楽しい人生だった」を天秤にかけた上で
少女はもう生まれ変わりを望む感情は強くはないのだと思います。
魂は天使に連れられて次の世界へ行くことに躊躇いがない様子。



広大な草原はヴェル・エールの舞台としても印象強い光景で
merveillesが1つの物語であることを意識すると
このPVで子供として描かれている少女は
ヴェル・エールのヒロインを分かりやすくしたイメージ映像なのではないかと思います。
少女とヒロインは同一人物ではないけど、死んだ後こういう経路を辿ったよっていうのが
多分少女の方が表現しやすかったんだろうなと。

というか色んな人間関係に置き換えられる話だと思うので
そもそもヴェルの恋人に拘らなくてもいいとは思うんですが
物語にした時に分かりやすいのでその恋人関係を推してるっていう。

この流れだと生まれ変わる理由がないので、魂は消滅する筈。
しかし、ラストシーンでGacktさんが「このまま消えるのは許さない」とでも言うように
哀悼をイメージしたであろう薔薇を強く握り締め、怒りを見せます。
これは何かに歯向かってGacktさんの独断で再び命を与えることにしたものだと解釈。



なぜ?
Gacktさんの心を動かしたものは何だったのか。

ここでヒントとなる他の曲を見てみましょう。
『月下の夜想曲』は自力で動くことの出来なかったピエロの人形が
涙を流して彼女のいる屋敷へ連れて行ってと少年に懇願し、一夜だけ再会したお話。
元は『ma cherie』に描かれるショウウィンドウの中で売られていた人形が
買い取られた後に屋敷に放置されてホコリをかぶっていたと思われます。

月下での再会は少年の意思によるものではなく
「何かに導かれ」という妖しい力に動かされています。
PVでは大きな鎌を持った死神のようなGacktさんがマリオネットを動かしていて
「離したりはしないから」と意思を持って動かしています。
つまり、ピエロの強い想いに心を動かされてその願いを叶えてあげたかったわけです。



歌詞を書いて歌っているGacktさんが男性なので
男性目線の想いが描かれるのは自然なんですが
実は強く再会を願ったり愛しさを募らせているのは男性側ばかりな気がします。
ヴェル・エールの無声映画の橋ですれ違うラストシーンでも
彼女は気にも留めずにまっすぐ歩いていく光景がその熱意の差なのかなと。
あの橋のシーンを描いたのが『Je te veux』なんじゃないかな。
ヴェルに比べると服装が変わってるので、近未来という説明もしっくりくるし。



鍵となる『Syunikiss』は彼女を失った男性が、蘇りを空に懇願する曲。
ルシエルはここと繋がっているのだと思います。
「僕の願いを叶えてくれた空に宿る主」とは
ルシエルのGacktさんのことだったんじゃないかと。

つまり、消滅する筈だった魂を無理矢理人間界に戻したのは
愛しい人を失った哀しみを叫ぶ遺された人の願いだった
、というのが私の解釈。

ルシエルは、死んだ魂への同情ではなく
その魂を消すことによる人間界の哀しみに対する同情だと思うのです。
その想いがあまりに強く、忘れていた感情を揺さぶられたのがルシエルPVのGacktさん。
しかし、流れに背いた独断には罰が与えられます。



merveillesの最後の収録曲『Bois de merveilles』では
妖精に許しを請い、それまで歌い続けることで罪を償うと言っています。
元々のストーリー上は単純に言葉通りの設定だった筈ですが
皮肉にもGackt自身の活動に見事に重なってしまうんですね。

余談ですが、ルシエルの少女に白い薔薇が手向けられたシーンは
3期MALICE MIZERの『Gardenia』のPVとも繋がっているんじゃないかと思います。



Gacktさんも、MALICE MIZERも、merveillesを元にパラレルワールドを描いているんですね。

merveilles ~cinq parallele~

サンク=5、パラレール=平行線
リリースしたシングル数が5枚という意味も勿論あると思うんですが
1つの物語を共に創っていた5人が、それぞれの物語を紡いでいくのです。
それが1つの紙に描かれ、音符を乗せたら、楽譜になるのです。