なぜか、私のところにメンタルコーチングを受けに来るアスリートの多くが、キャプテンに任命されることがよくあります。
アスリートのメンタル面を支えるスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。
キャプテンに任されるということは、とても光栄なことです。
なぜなら、チームでたった一人しか選ばれない“重役”だからです。
そして、特に団体競技であればあるほど、キャプテンの「心構え」や「姿勢」は、チームの勝敗や雰囲気に大きな影響を与えます。
近年では、日本代表の長谷部誠選手や遠藤航選手など、そのキャプテンシーが称賛された選手たちが印象的です。
彼らのように、キャプテンは「背中で引っ張る」存在とも言えるでしょう。
ただ、キャプテンという役割に対して、事前に指導を受ける機会はほとんどありません。
長年、競技に打ち込んできた選手にとって、キャプテンに任命されることは“未開の地”を歩くようなもの。
突然、重い責任を担わされて「どうしたらいいかわからない」と悩む選手がほとんどです。
さらに、監督やコーチに相談しても、
「〇〇のやりたいようにやればいいよ」
と突き放されたような返答をされることも少なくありません。
ところが、いざチームがうまくいかなければ、
「キャプテンの責任じゃないか?」
と厳しい視線を向けられてしまうのです。
私の元にも、こうした相談は本当によく寄せられます。
では、キャプテンとしての心構えとは、一体どのようなものなのでしょうか?
最も大切にしてほしいこと。
それは
「チームを無理にひとつにまとめようとしすぎないこと」です。
チームというのは、社会の縮図のようなもの。
同じ日本人でも、思想や価値観はさまざまです。
考え方が違うからこそ、無理に“同じ方向を向かせよう”とすれば、摩擦が起きたり、お互いに疲弊してしまいます。
違いを受け入れつつ、協力し合えるチームこそ、強くなるのです。
では、どうすればチームとしてまとまりが出るのでしょうか?
それが、「共通のチーム目標を持つこと」です。
チームとは、例えるならば“船”のようなもの。
選手たちは、その船に乗って「どこを目指すか?」という目的地を共有しなければなりません。
ところが実際には、話を聞いてみると、選手一人ひとりが違う方向を目指していることがよくあります。
これでは、どれだけ頑張ってもまとまりません。
逆に、チーム全体の目標が明確であれば、意見が多少違っても、「その目標に向かってどう進むか?」という建設的な話し合いが可能になります。
チーム目標さえ共有できていればたとえ意見が分かれても、
「この道もあるよね」
「こういう考え方もありだよね」
といった対話ができるようになります。
そして、意見を無理にひとつにまとめる必要はありません。
その時々で、目標に合った“最適なアイディア”を取り入れれば良いのです。
皆が違うからこそ、チームは進化します。
キャプテンとは、孤独な役割に感じるかもしれません。
けれど、あなたは一人ではありません。
完璧を目指す必要はありません。
「みんなをまとめなきゃ」と肩肘を張らずに、まずは“共通の目標”をみんなと一緒に見つけていくことから始めてください。
それが、キャプテンとしての最も大切な「心構え」だと私は考えています。