ボケは一つ。
でもツッコミ所満載!
□□□□□□はじめに□□□□□□
Mー1も終わり、年も明け、、、
……ましたが、遡って『キングオブコント』の話。
9月21日『キングオブコント(KOC)2019』で12代目キングに輝いたのは「どぶろっく」でした。
どぶろっくは森慎太郎さんと江口直人のコンビ。
「もしかしてだけど~♪」でおなじみですね。
点数の高かった1stステージのネタを分析。
……あ、このネタ、
『絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール』でも仕掛けとして披露されていました。
□□□□□□下ネタ一般□□□□□□
「どぶろっく」によるこのネタの笑いはというと、、、
……もちろん下ネタ。
…どストレートな、まごうことなき下ネタです。
願いを一つ叶えてくれるという森の神様への願い事が、
「大きなイチモツを下さい。」
、、、(^_^;)
しかも、、、それだけ。
基本的にそれを4回繰り返すだけです。
下ネタに関しては過去記事で書いた事があります。
下ネタ一般に成り立つ笑いは、
「禁忌の侵犯」というディスコミュニケーション。
まぁ、「禁忌」と表現する程の事ではありませんが、
躊躇われる言動である事は間違いないですね。
< 基準 >:下半身の話を公でする事は躊躇われるにも拘わらず(禁忌)
< ズレ >:下半身の話を公でする(侵犯)
<ツッコミ>:「テレビで何言うねん!」
それに加えて、禁忌の侵犯をしてしまう決断に対する下方評価。
< 基準 >:禁忌を侵犯してはいけないと理解する判断と比較して
< ズレ >:禁忌を侵犯してしまう判断
<ツッコミ>:「こいつアホや、、、」
これらは、下ネタ一般に成り立つ笑い。
□□□□□□コントの笑い□□□□□□
でも以前の記事でも書きましたが、
下ネタの利点は、
その他の笑いを付け加える事も効果的だから。
このネタも、
ただの「下ネタ」ではなく、
「コントの笑い」になっています。
「コントの笑い」の基本は、
その設定からの逸脱です。
そもそも物語の設定は、
「母親と二人きりで暮らす農夫が、不治の病で苦しむ母親のために森に薬を探しに来る」
…という涙もの、感動ものの設定。
その状況で願い事を問われたにも拘わらず、
「大きなイチモツを下さい」というのは、
病気の母を思いやる息子という物語の設定から逸脱しています。
< 基準 >:母の病気を治したい一心のはずにも拘わらず
< ズレ >:母の病気を治す事は二の次
<ツッコミ>:「何しに来たんや!」
ただの下ネタではなく、
コントのオチとしてのディスコミュニケーションになっています。
下方評価に関しても、
親を思いやる優しい息子というより高いモラル水準と、
くだらない願い事をする自己中な低いモラル水準のギャップは、
より大きな「下方評価」の落差を感じさせるでしょう。
< 基準 >:母を思いやる優しさと比較して
< ズレ >:自分の欲望を重視する下劣さ
<ツッコミ>:「お前、最低や!」
さらに、
母親の病気、そして手に入るか分からない薬草は、
場の空気を重苦しくします。
もちろんコントである事を理解しているので実際に重苦しい訳ではありませんが、
少なくとも何も知らない観客にとって、
そんな設定は、この後の展開の期待、緊張感を煽りますよね。
そんな中での突然の「大きなイチモツを下さい」は、
場の空気を大きく壊しますね。
< 基準 >:病人をかかえる重苦しい空気と比較して(緊張)
< ズレ >:下ネタを言う馬鹿馬鹿しい空気(緩和)
<ツッコミ>:「何やねん!」「そんなん言える状況ちゃうやろ!」
設定のおかげで、
緊張の緩和も効いているという事です。
□□□□□□ミュージカル□□□□□□
さらにミュージカル調で演じる事も効果的です。
ここまで説明していませんが実はこのネタ、
振りを付けて、
ギターにあわせて、
ミュージカル調(オペラ調?)で演じられているんです。
つまり、実際はこんな感じ。
「大きな~♪イチモツを~♪下さい~♪」
これって、ミュージカルのイメージからも逸脱していますね。
もちろんコメディミュージカルもありますが、
詳しくない私が思い浮かべるミュージカルは、
劇団四季や宝塚歌劇団、
大自然の壮大な物語とか歴史に翻弄される恋愛など。
歌われる内容も、
怒り、嘆き、喜び、愛、生命など、
わざわざ歌って表現されるに値するものが期待されますよね。
そんなミュージカルのイメージとのギャップも、
面白さに貢献しています。
例えば、こんな風にも突っ込みたくなります。
< 基準 >:ミュージカルで演じられるのに相応しい高尚なテーマと比較して
< ズレ >:ミュージカルで演じられるのに相応しくない下劣なテーマ
<ツッコミ>:「良い声で何を歌ってんねん!」「振りを付けて言う事ちゃうやろ!」
ディスコミュニケーションでもありますが、
どちらかというと下方評価の効果が大きいと思います。
細かいですが、
「銭湯で~♪みんな~が♪二度見~する♪(大きなイチモツを……)」
「肩に~♪かける~♪くらいの~♪(大きなイチモツを……)」
などの表現も、
歌い上げるに値しないくだらなさを強調していますね。
□□□□□□天丼□□□□□□
既述の通り、
このコントの明確なボケは、
「大きな~♪イチモツを~♪下さい~♪」の繰り返しだけ。
審査委員長のダウンタウン松本さんのコメント通り、
『天丼』です。
『天丼』にある笑いは、
1回目と同じ「笑いのフォーマット」を繰り返すというだけではありません。
『天丼』そのものに新たな笑いのフォーマットがあるからこそ、
笑いの技術としての意味があります。
『天丼』が作る笑いのフォーマットは、
一種類という訳ではなく、
話の展開や前フリによって異なります。
このコントに関しては、
神様の説得で思い直すという前フリが効いていて、
「それでもしつこく繰り返す事」が「ディスコミュニケーション」になっています。
「そうだ!そうだった!あの命が一番大事~~♪」
「母の命を助けて下さい~お願いします~~♪」
「愛さえあれば♪愛さえあれば♪愛に勝るものなど~~♪」
……と、神様の説得(というかツッコミ)に納得したようでありながらも、
「だ~け~ど~♪」
「ついで~に~♪」
「それよりも~♪」
……と、結局「大きな~♪イチモツを~♪下さい~♪」とお願いする事に、
「どんだけ欲しいねん!」
って突っ込みたいですよね。
< 基準 >:考えを改めた反応をしたにも拘わらず
< ズレ >:考えを改めていなかった
<ツッコミ>:「まだ言うか!」「しつこいわ!」「どんだけ欲しいねん!」
説得されながらもしつこく繰り返すことで、
「大きなイチモツ」に固執するというディスコミュニケーションをより強く感じさせています。
「下ネタ」の一言で括られがちですが、
物語性のあるコントの笑いとして、
効果的に作られたネタですよね。
ボケは一つですが、
ここまで書いた様に、
色々なツッコミが言えるのは間違いありません。
□□□□□□神様も…□□□□□□
個人的には
神様が真面目に説く所もツボ。
「男よ、イチモツは大きさではない~♪サイズの事を気にしてるのは男だけさ~♪全ては愛さえあれば~♪心満たされ優しさ溢れだす~♪」
突っ込みたいでしょう、
「神様、真面目な顔して何言うてんねん!」
□□□□□□KOCの舞台□□□□□□
どぶろっくらしいド直球の下ネタ。
よくこんな下ネタをキングオブコントという舞台に持ってきたなと思います。
でも、
このネタを披露しているのが、
KOCの舞台であるという事さえも、
笑いの面からは大きな効果があったと思います。
全ての面で落差拡大効果があります。
KOCの舞台ゆえに、
「ちゃんとしたネタ」の期待値が上がり、
禁忌のハードルは高くなりますよね。
KOCの舞台ゆえに、
クオリティーの高いネタの期待も高いでしょう。
また、
KOCの舞台でのネタ披露→採点→脱落の繰返しは、
独特の緊張感を作り出します。
そんな中での「イチモツネタ」は、
「禁忌の侵犯」「下方評価」「緊張の緩和」の落差を大きくします。
KOCでの下ネタ披露は、
リスキーなようでいて、
笑いのフォーマットの面からは、
落差拡大や笑いの追加というプラスの効果があった訳です。
キングオブコントの舞台に相応しくない、
……だからこそより面白く感じる、
……「笑いは逸脱」という本質を考えさせられるネタです。
□□□□□□別の笑い□□□□□□
……と、
『キングオブコント』でのネタの分析はこの通りなのですが、
『絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール』でのこのネタの笑いは全く別の笑いです。
仕掛け人として登場したのは、
元SMAPの稲垣吾郎さん。
細かいアレンジはありますが、
やってる事は同じです。
「肩に~♪かける~♪くらいの~♪……大きな~♪イチモツを~♪下さい~♪」
吾郎ちゃん、全力でやってました。
「やってる事」は同じでも、
「何が面白いか」は変わってきます。
突っ込みたい言葉は変わるでしょう。
当然、吾郎ちゃんのイメージとやってる事のギャップに突っ込みたくなりますよね。
< 基準 >:イメージと異なる言動(下ネタ)をしそうにないにも関わらず
< ズレ >:イメージと異なる言動(下ネタ)をする
<ツッコミ>:「そんなんやらんでえぇねん!」「はっきり言うたなぁ!」
やっているのが稲垣吾郎である事が笑いを作っていますね。
同じ事をやっても、
人が変わるだけで別の笑いに変わる訳です。
笑いも奥が深いですね。
m(__)m
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