『傍聞き(かたえぎき)』長岡 弘樹 | OYJ Dimension

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単なる備忘録として。

『傍聞き(かたえぎき)』

長岡 弘樹

2008年10月12日 第1刷発行 

株式会社双葉社

Book Off \220-

 

迷い箱 (2007年6月号「小説推理」初出)

 出所者の社会復帰をサポートする施設(出所してからしばらくの間、滞在して、仕事に就く準備などをする社会福祉的な施設)の施設長(女性)は、碓井という一人の出所者を気にかけていた。碓井は前に自転車事故を引き起こし、一人の少女を死に追いやって、過失致死で服役していた男だった。施設長は知人の会社に碓井の就職について依頼していた。施設を出て、就職することに成った一日目に、碓井は歓迎会の席から姿を消した。

 タイトルの迷い箱は、捨てるべきなのに捨てる決心がつかないモノを一時的に入れておく箱のことを言う。いったん箱に入れて、しばらく経つと、それほど重要なものではないことに気が付き、捨てる決心がつくというもの。

 

 

899 (2007年10月号「小説推理」初出)

 主人公は消防士で、ちょっと気にかけていた隣家の女性(子どもあり、夫なし)の家が火事になり、救助に入る。899マルアカは「要救助者在り、それは赤ちゃん」を意味していた。

 

 

傍聞き (2008年1月号「小説推理」初出)

 傍聞きとは、<誰かが誰かに話している内容>は、同じ内容を自身が誰かから、直接聞いた場合より、信じてしまいやすい という意味で使われる。

 主人公の女性刑事は、思春期の娘との関係で少し悩んでいた。そんな折に、嘗て自身で逮捕した窃盗犯の一人が、住居侵入及び窃盗の疑いで、再び逮捕される。拘留されているの警察署の男から主人公の女性刑事に面会に来て欲しいとの要望が届いた。

 

 

迷走 (2008年8月号「小説推理」初出)

 救急隊員は、路上で腹部を刺された検事の男を病院に搬送するが、直接病院に行かずに病院の周りを迷走する。その検事は、自分の婚約者が下半身不随になった交通事故の加害者を不起訴にした検事だった。