The Miracle Worker | 星垂れて平野闊く 月湧いて大江流る

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 先日、視覚障害の友人が京都から東京に遊びに来ました。視覚障害者向けの製品の展示会があったのです。

 この間別の所で介護現場の報告を聞いたばかりだったので、興味があって連れて行ってもらいました。

 その時、ちょうど彼の話もしていたのでビックリしました。噂をすれば影、ですね。

 

 展示会は盛況で、彼も点字プリンター等々、色々見て買っていましたが、あたしも「サリバン先生とヘレン―ふたりの奇跡の4か月―」という絵本を買いました。著者はデボラ・ホプキンソン、作画はラウル・コローンです。

 

 以下、アマゾンに落としたレビューです~。特にネタがないからこっちにも上げとく。

 

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 「奇跡の人」っていうのはほんとはヘレンじゃなくてサリバン先生を指してるんだよ、というのは知ってる人は知ってるお話ですね。より正確に訳せば「奇跡を起こす人」ですからね。目も見えないし耳も聞こえない人に「言葉」をわからせる、人とコミュニケーションする方法を習得させるという「奇跡」を。
 その称号の元になってる同タイトルの映画は、サリバン先生役のアン・バンクロフトがアカデミー主演女優賞、ヘレン役のパティ・デュークが助演女優賞をそれぞれ受賞しています。つまりサリバン先生が主人公=The Miracle Workerです。

 「ある日のこと、サリバン先生はヘレンを井戸に連れて行きました。マグカップから溢れた水がヘレンの手にザアッとかかると、先生はもう片方の手にw-a-t-e-r(水)と綴りました。その時です。勢いよく手にかかった水の冷たさと、先生が綴ってくれた指文字の言葉が、ヘレンの頭の中で、夜空の稲妻のようにパッと閃き、しっかりと結びついたのです」

【アニー・サリバンの手紙】
 「1887年4月5日
 勢いよく手にかかる水の冷たさと、水という言葉がしっかり結びついたことに、ヘレンは、びっくりしたようでした。驚きのあまりマグカップを落としたヘレンは、その場に凍りついたように立ち竦みました。ヘレンの顔に、新しい光が差しこんだように見えました」

 以上、本文より引用しました。

 絵本ですが、文字数も多めでしっかりした内容です。今時の子どもたちには萌え萌えきゅんきゅんしたコミック調の絵の方が受けるのかも知れませんが、個人的には、こういう本は本作のような写実的で落ち着いた絵柄の方が気品や温かみを感じさせて好きです。

 引用部分は映画のクライマックスにもなっている非常に有名なエピソードです。私の高校の英語の教科書にも載っていて、「神秘」と思ったことを覚えています。
 しかし、その続きは映画でも教科書でも触れられておりませんでした。ヘレンはどのようにして、大学まで出て、執筆したり、世界中飛び回って講演したりするような第一級の知識人になり得たのか。
 「わたしの掌に滴り落ちるこの冷たくて不思議なものが『water(水)』」ということはわかった。手で触ったり、匂いを嗅いだり、舌で味わったりできるものに名前があること、それらがそれぞれ「子犬」とか「花」とか「アイスクリーム」とかいう名前だということはわかった。でも、形容詞とか副詞とか、抽象的な概念とかはどうやってわかったんだろう?サリバン先生はどうやって教えたんだろう?ということが長らく疑問でした。
 それがこの絵本には、実に興味深く、わかりやすく描かれています。
 それにしても、サリバン先生という人の賢さと忍耐強さ!ヘレンを預かった当時、まだ弱冠二十一歳ですよ!信じられん。

 こう書くと、ほんとにスゲーのはサリバン先生の方でヘレンは大したことないんだみたいな印象を与えるかも知れませんが、いや、ヘレンもすごいです。もしIQを測ることができれば、恐らく天才と呼べる域に達するほど高かったと思われます。
 私、健常児を教えたこともありますから、ヘレンの非凡さがよくわかります。大変失礼ながら、目も見えてるし耳も聞こえてるのになんでこんなことがわからないんだ!?覚えられないんだ!?私には寧ろそっちの方が不思議で不可解だ、としょっちゅう思わされるような子たちにも度々出会ってきました。いや、もう学校教育がとっくに終わった大人でもよくいますね。

 アン・サリバンとヘレン・ケラーという二人の大きな知性が巡り会ったことが一番の「奇跡」、神の奇しき御業だったのかも知れません。