写経屋の覚書-はやて「前回は軍需会社法とそれによって徴用扱いになるケースについて見たんやったよね」
写経屋の覚書-フェイト「個々に徴用令書を出していないけど、会社ごと徴用された感じだったね」
写経屋の覚書-なのは「じゃ、今回は、国家総動員法、国民徴用令に基づいた徴用について見ていくよ」
写経屋の覚書-はやて「普通『徴用』いうたらこっちのほうをイメージするよね」
写経屋の覚書-なのは「ただ、ここで扱っているのはあくまで労働者の徴用で、軍要員の徴用には触れていないから注意が必要だよ」
写経屋の覚書-フェイト「…あ!軍の方は本題に関係ないからだね」
写経屋の覚書-なのは「そういうことだね。じゃ見ていくよ」

四 国民徴用令による徴用
 「被徴用者」には、現員徴用者以外に国民徴用令(昭和一四年七月八日勅令第四五一号)により徴用された者もあった。これらの者は、政府の管理する工場事業場その他の施設(管理工場)にて行う総動員業務に「従事セシムルモノ」とされていた。また、特別の場合には、厚生大臣の指定する工場(指定工場)に「従事セシムルコトヲ得」(同令第四条)とされていた。
 この管理工場、指定工場の事業主は、当該工場を管轄する主務大臣を経由して、厚生大臣に対し、徴用により人員の配置を必要とする旨請求又は申請をすることができ(同令第六条)、厚生大臣は、「徴用セラルベキ者」の居住地(現に使用されている官衙、管理工場、指定工場において行う総動員業務に従事させるため「徴用セラルベキ者」については、当該官衙、工場の所在地)を管轄する地方長官に対して、徴用命令を通達する(同令第七条)ことなどが定められていた。
 厚生大臣から徴用命令の通達を受けた地方長官は、「徴用セラルベキ者」に対して、出頭命令書を交付し(緊急を要する場合は省略できた。)、身体検査、家庭状況の調査等を行い、その適否を判断した。その結果、適格だと判断された者には、従事すべき総動員業務、職業、場所を決定した上、徴用令書を交付する(同令第七条ノ二)こととされていたのである。

写経屋の覚書-フェイト「政府の管理、指定する事業場、業務について人員配置の要請があったとき、厚生大臣が徴用命令を発して、地方長官が出頭命令を出すんだね」
写経屋の覚書-はやて「業務は限定されとって個人が対象いうあたりが、軍需会社法による動員と最大の違いかな?」
写経屋の覚書-なのは「んー、戦局の変化とそれにともなう必要性の違いがあるんだよね。だから国民徴用令も何度か改正されていて、1941(昭和16)年12月の改正では政府の管理、指定する事業場、業務以外に民間工場への動員が可能になって、1943年8月の改正では被徴用者の職場移動を禁止したの」
写経屋の覚書-フェイト「個人個人を徴用して重要産業に動員するのでは足りなくなってきたから軍需会社法が制定施行された感じ」
写経屋の覚書-はやて「あー、最初に戦局と時代背景が述べられていた通りやねんな。軍需省も作っとったし」

写経屋の覚書-なのは「ここまで徴用の形態について見てきたけど、募集や官斡旋、或いはコネで内地に渡航して軍需に関係なさそうな会社に就職した朝鮮人が、徴用令書も交付されていないのに、いつのまにか被徴用者、応徴士になっていた、というケースが有り得るというのは理解できたと思うよ」
写経屋の覚書-フェイト「我が社は軍需会社法によって軍需会社に指定されました、って社長や上司が連絡周知しても、それが徴用とみなされるなんて知らないってこともあるんだね?」
写経屋の覚書-はやて「徴用令書を受け取ったわけでもあらへんしね…せやけど、さっきなのはちゃんが言うたケースに当てはまる朝鮮人への補償とかどないなんの?所謂『徴用工』の話になるやんな?」

写経屋の覚書-なのは「うん、そだね。でもね…なんにしても日韓基本条約に基づく請求権協定によって解決済みだから日本政府や日本企業を訴えても意味がないんだよね…」
 

 




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