写経屋の覚書-なのは「今回は『朝鮮教育と警察行政(隆煕三年九月十七日警察部長会議席上に於ける俵学部次官の訓示演説要領)』の附則事項の3と4だよ」

三、寄附金品の募集請願と学校の設立認可は之を混同す可らず学校の設立請願書には其維持方法として学田の収入、寄附金の募集等を記載し且証憑書類を添付するを常とす然るに学部が設立認可を与ふるに当りては単に此等の事項は参考に供するに過ぎずして設立認可の効力は当然此等の事項に及ぶものにあらず然るに往々学校の認可が当然寄附金の募集に認証を与へたるものゝ如く誤解するものあり寄附金品の募集は閣令に依り内部及関係大臣の認可を受くることを要するにより諸君に於て宜しく此辺の指導あらんことを希望す

写経屋の覚書-フェイト「え?学校設立の認可と寄付募集の許可は別物ってことなのかな?」

写経屋の覚書-なのは「うん。学校設立・維持の資金調達方法として寄付金募集というのはオッケーだし、その旨を設立認可請願書に書くのもオッケーだけど、学部が設立認可を与えたからといって、寄付募集の許可まで与えるわけじゃないということなの」

写経屋の覚書-はやて「寄付の認可自体は内部とか他の部署の管理事項やねんなぁ」

四、従来学校に於て断髪を強制して韓人の反感を買ひ学徒の同盟退学を惹起し又は教員及学校関係者の行動宜しきを得ず或は財産争奪等に依り紛擾を惹起すが如きこと往々之れあり尚ほ将来に於ても頻々出来すべし此際に於ては関係者に十分注意を与へ一面学部に詳細の報告を提出せられんことを希望す

写経屋の覚書-はやて「断髪の強制ってけっこう大問題になってへんだっけ?」

写経屋の覚書-なのは「甲午改革のときに断髪令が出されたんだけど、露館播遷の後結局撤回されたというのはかなり有名な話だよね」

写経屋の覚書-フェイト「強制しないように念を押しているけど…『或は財産争奪等に依り紛擾を惹起すが如きこと往々之れあり』って何だろう?」

写経屋の覚書-なのは「実はこの訓示演説のまだ触れていない前半部分にそれに関する記述があるの」

写経屋の覚書-はやて「前半部分?ああ、ほんで『第六 私立学校』から始まっとったんやな」

写経屋の覚書-なのは「うん。いずれは全文紹介したいんだけど、KJCLUB用のスレをつくった時には、まず私立学校に直接関係する箇所を優先しようとしたから触れなかったの」

写経屋の覚書-フェイト「じゃぁ、ここでは触れないんだね」

写経屋の覚書-なのは「そうだね…とりあえず、明治40年の日韓協約後の教育熱勃興の原因として列挙されている中にこういう記述があることだけは紹介しておこうかな」

五、学校設立の美名の下に私利を営み学校財産を作り若しくは公有財産を学校の所管に移し之を横領して私腹を肥やさんとするもの

写経屋の覚書-なのは「具体的な事例はあげられてないので何とも言えないけど、学校を利用して財を築こうとする考え方があったってことはわかるよね」

写経屋の覚書-フェイト「だから、学校財産が紛擾のもとになることがあり得るんだね」

写経屋の覚書-はやて「『公有財産を学校の所管に移し之を横領して私腹を肥やさんとする』って官吏でないと難しいことやと思うんけど…だいたいやなぁ、官吏で私立学校設立にかかわることってできるん?」

写経屋の覚書-なのは「第20回で触れた『私立学校令頒布に関する訓令』にそのあたりをうかがわせる記述があるの」

写経屋の覚書-フェイト「でも、そのスレは消されたからわからないよ」

写経屋の覚書-なのは「訓令じたいはここでもとりあげるんだけど、これもとりあえず該当部分だけを載せておくね」

七、私立学校の監督に就ては従来地方官の権限明ならさりしか本令は特に明文を以て之を定められたり故に地方官は道府郡の費用を以て設立する公立学校に就ては自ら其の管理者たり私人の費用を以て設立する学校に就ては監督の地位に立つか故に従来の如く地方官として私立学校の設立者となり又は学校長となるか如きは公立学校と私立学校との分界を明ならさらしめ且監督者被監督者の地位を混同して法令の精神を貫徹する能はさるの虞あるに依り自今之を避けんことを要す

写経屋の覚書-はやて「…官吏でも私立学校設立にかかわとったんや…なんで地方官として公費で公立学校つくらんのやろ?」

写経屋の覚書-フェイト「まさか、蓄財とか横領のため?」

写経屋の覚書-なのは「さぁ、どうなんだろうねー」

俵学部次官の訓示演説要領(隆煕3年9月7日)(1)
俵学部次官の訓示演説要領(隆煕3年9月7日)(2)
参考エントリー私立学校令等について(四)

写経屋の覚書-なのは「今回も、『日本植民地教育政策史料集成(朝鮮編)第66巻』収録の『朝鮮教育と警察行政(隆煕三年九月十七日警察部長会議席上に於ける俵学部次官の訓示演説要領)』の続きを見るね」

一、私立学校の設立認可出願が既に二千数十件に達したりと雖実際の学校数は決して右の数に止まらず未た願書を提出せさる学校尠からさるべし願書の提出期は本年三月三十一日までなりしも学部は未提出の故を以て直に禁止処分を断行せさるの方針なり私立学校令のみならず一般法令の周知は韓国の現状に於ては甚だ難しとする所にして私立学校令の如き比較的一般に知れ亘り且各種印刷物を配布して之を督促したるに拘らず尚未だ願書を提出せさるものは之を禁止するも別に差支なきが如しと雖是れ畢竟韓人の幼稚なる結果にして学部は期日経過後も之を受理すべきは勿論督促奨励以て全きに至らしめんことを屡々地方官に訓令せり諸君も此意を了せられ適当なる機会に於て勧誘を試みられんことを希望す

写経屋の覚書-フェイト「設立認可願書の締め切りは3月31日だけど、それまでに出してないからといって即私立学校を禁止するんじゃないということだね」

写経屋の覚書-はやて「まるで夏休みの宿題みたいやな。韓国の現況では、この私立学校令に限らず法令の周知自体が難しいってどういうことやねん?」

写経屋の覚書-なのは「たぶん、獄長日記でも何回も出てるし、ここでも目にすることになると思うけど、流言蜚語や勝手な誤解のせいじゃないかな…」

二、教科用図書に就ては私立学校令に依り学部編纂又は検定以外のものに対しては総て学部大臣の使用認可を受けさる可らす右認可請願に対して一々許否の指令を与へ居るも実際当該学校に於て其指令の通り実行し居るや否や出版法に依り内部大臣の禁したるものにして学校に使用せらるゝものなきや等は取締上甚だ困難とする所にして諸君幷に一般警察官か管下巡視の際に於ては学部の使用認可書に対し適当なる注意を与へられんことを希望す

写経屋の覚書-フェイト「教科書の使用認可申請の許否指令どおりに使用されてるかどうか、出版法で禁じられたものが使用されてないかどうかを憲兵や警察官が巡視の際にチェックするよう言っているね」

写経屋の覚書-はやて「つまり、学部の主管事項に対して日本の官憲が不当に弾圧を加えるんやなw」

写経屋の覚書-なのは「…ほんとに言う人がいそうで怖いよ、はやてちゃん。教科書用図書検定規程については、獄長日記の私立学校令等について(二)に紹介されているし、教科用図書の取り扱いについては、参考エントリーの私立学校令等について(四)に引かれている記述にも言及があるの」

二.私立学校令第六條に、教科書は学部の編纂に係るもの、又は学部大臣の検定したるものを用ふるを本体をし、然らざるものは特に大臣の認可を受けて之を用ふるを要すと規定せられたり。
之に付承知せられたきは、教科書は必ず之を用ふるを要すと云ふにあらず。
又用ふるときは、是非学部の編纂又は検定のものに限ると強ふるものにあらず。
此以外のものは、認可を得れば如何なる図書を用ふるも差支なきこと是なり。
何故に教科書に斯る認可制度を執りしか他なし。
現今韓国内に行はれつつある教科書は、多くは教育上不適当なればなり。
元来教育なるものは、学生に有用の智識と健全んる志操を与へ、優良なる国民の一人たらしむるを目的とす。
今教科書は、其編纂の方法に欠点の多きことは姑く問はざるも、其の内容の全く教育の目的に副はざる、否、寧ろ之に背くもののみに至りては、教科書として使用することを默過し得ざるなり。
諸君の目にも平素触るる処ならんが、教科書中に政治問題又は時事に関する事項を捉へ来りて現政府の非を鳴らし、現政府の組織を破壊せんとするもの、或は、日本の保護を以て独立を傷る耻辱なりとし、之を叙するに諷示的又は挑発的の文字を以てし、読者をして自ら激越悲痛の念を起さざるを得ざらしむ。
斯の如くして、学生は相率ひて不平の徒となり、偏狭の人と化し、他日の健全なる国民たるべき素質を失ふに至る。
国民健全ならざれば、国家亦安んぞ健全なるを得んや。
試みに手近き例を挙げんに、日本や西洋の教科書中には、蟻や蜂は、能く働き能く貯へ勤勉力行の動物として之を説けり。
然るに韓国の教科書には、蟻には大小あり。
大なるは小なるを殺戮す。
蜂は剣を藏して互に相闘争す、などと書し、其善を挙げて教訓の資となさず、弱肉強食又は反目噬臍を説きて、暗に殺伐残忍の念を惹き起さんことを期するが如き、実に言語に絶へざる図書ならずや。


蟻には大小があって、大きい者は小さい者を殺戮する。
蜂は針があって、互いに闘争する。
小学生用の教科書であろうが、もうね・・・。
前回の表において、「修身」の認可率が最も低い理由も分かるのではないだろうか。

写経屋の覚書-フェイト「認可制の理由について言ってるね」

写経屋の覚書-はやて「要するに、教育上不適当な内容、残念な教科書が多すぎるからってことやね」

写経屋の覚書-なのは「うん。獄長もつっこんでいるとおりだよ」

写経屋の覚書-フェイト「でもそれなら模範的な教科書を学部がつくって国定教科書にしたらどうなのかな?」

写経屋の覚書-はやて「うーん、それをやったら金とか手間かかるんちゃう?大韓帝国にそんな余裕あるんかなぁ?」

写経屋の覚書-なのは「とりあえず今回はここまで。次回も続きを見るね」

俵学部次官の訓示演説要領(隆煕3年9月7日)(1)
写経屋の覚書-なのは「今回は『私立学校令』発布の周辺を見ることにするね」

写経屋の覚書-はやて「ああー、前回は私立学校令そのものの見直しだけで終わってもぉたしなぁ」

写経屋の覚書-フェイト「で、周辺っていっても、何を見るの?」

写経屋の覚書-なのは「えーとね、最初は『日本植民地教育政策史料集成(朝鮮編)第66巻』収録の『朝鮮教育と警察行政(隆煕三年九月十七日警察部長会議席上に於ける俵学部次官の訓示演説要領)』を見るの。但し長いから、ここでは私立学校に直接関係するくだりを何回かに分けていくね」


写経屋の覚書-隆煕3年9月17日俵訓示13
写経屋の覚書-隆煕3年9月17日俵訓示14
写経屋の覚書-隆煕3年9月17日俵訓示15
写経屋の覚書-隆煕3年9月17日俵訓示16
写経屋の覚書-隆煕3年9月17日俵訓示17


第六 私立学校 私立学校令は法文十一ヶ条より成るも其主眼とする所は学部大臣の認可を受くるにあらされば学校の存在を認めさると又学部の編纂検定以外の教科用図書は学部大臣の認可を受くるにあらされば使用するを得ざるとの二点に存す私立学校令の頒布に就ては種々の誤解続出し学部は本令を以て私立学校を撲滅するものなりとし盛に世上の疑惑を招きたるも学部は決して学校の存在を妨けさるのみならず善良なる私立学校の設置は衷心之を歓迎し且適当に補翼誘掖して善良なる方向に指導するの主意なること次第に判明し来たるが如し其結果認可請願書の提出本年に入りて激増し其数二千数十件に及ひたり私立学校の設立及認可に就ては法令の適用上寛厳何れに依りて之に臨むべきか若し之を厳にせんか此際学校設立の認可権を以て学校の正否を区別し苟しくも不備不穏のものに対しては全然其存立を認めす且既設の学校に対しては法令の明示する所に従ひ変更閉鎖の処分を加へて仮借するを要せずと雖も此の如き体度に出てんには現時の学校中殆んど存立を容認すべきものなきに至るべく是れ徒に世の疑惑を滋くし今日の時勢に適応する行政の運用にあらず宜しく現今一般の状況に鑑み寛大なる取扱の下に緩急其宜しきを得しむるを以て緊要とす蓋し完全なる私立学校の経営は今日未だ期すべき限りにあらず然るに直に厳正周密なる監督方法を以て之に臨まんかさなきだに上下意思の疎通を欠く今日の状態に於ては徒に誤解を生し民心の紛擾を惹起せんのみ故に今日の要は漸進的に監督の歩武を進め漸次指導改善の実を挙くるに注意せさる可からず唯だ教科用図書の取締は然らず元来教科用図書にして現今の国是を非議し政治を論評するが如き文字を記載し政治と教育とを混同し新聞雑誌の論説の如き挑発的不穏の文句を羅列するものに至りては全然教育の本旨に反するものなるを以て絶対に之が使用を許さゞるなり曩に内部は出版法を頒布し有害図書の取締を厳重にし学部は検定及使用認可の制度を設けて不良教科書又は唱歌の使用を禁したるは即ち此趣意に本くものなり
斯の如く教科用図書及唱歌に関する取締の外私立学校に対する監督権の行使は之を寛大に取扱ひ不完備なる私立学校も認可権を以て直ちに之を廃滅せしむることを避け自然の淘汰に依り廃滅に帰せしむるを以て上策となす何となれば此等不完備なる学校は維持の資を得るの道なくして到底永続する能はさるは明白なる事理なり然るに若し其自然廃滅の以前に於て積極に干渉して淘汰せんか学校経営者をして官吏の暴政に籍口して自己の不成功を曝露するの不利益を免れしむる結果となるべきを以て寧ろ世人の自覚に待ち学校経営者をして其失敗を負はしむるの勝れるに如かさるなり思ふに今日は第一期の学校監督時代にして先つ全国総ての私立学校を学部大臣の認可の下に存立せしめ内容の改善は第二期に之を待たさる可らず
以上長時間に亘り教育の現状及学部方針の一斑を説述したるは一に諸君執務の参考に供し一は機会を以て諸君の尽力により誤解せる世人の疑惑を解き教育界をして健全なる発達を為さしめんとするに外ならず尚ほ最後に諸君の職務執行上に関し二三の注意事項を附加せんと欲す

写経屋の覚書-なのは「けっこう重要な言及が多いんだけど、まずは『世上の疑惑』云々ね」

写経屋の覚書-フェイト「『私立学校令の頒布に就ては種々の誤解続出し学部は本令を以て私立学校を撲滅するものなりとし』ってあたりだよね」

写経屋の覚書-なのは「うん。私立学校令は私立学校を規制するというより、学部の想定する模範ラインに沿って導くほうだよって言ってるしね」

写経屋の覚書-はやて「そやけど、『斯の如く教科用図書及唱歌に関する取締の外私立学校に対する監督権の行使は之を寛大に取扱ひ不完備なる私立学校も認可権を以て直ちに之を廃滅せしむることを避け自然の淘汰に依り廃滅に帰せしむるを以て上策となす』とも言うてるで」

写経屋の覚書-なのは「つまり、強圧的に整理しなくても、きちんとした学校やきちんとしようとする学校は生き残るだろうし、姿勢や基盤のいい加減な学校は淘汰されていくって読みだよね」

写経屋の覚書-フェイト「続いて『何となれば此等不完備なる学校は維持の資を得るの道なくして到底永続する能はさるは明白なる事理なり然るに若し其自然廃滅の以前に於て積極に干渉して淘汰せんか学校経営者をして官吏の暴政に籍口して自己の不成功を曝露するの不利益を免れしむる結果となるべきを以て寧ろ世人の自覚に待ち学校経営者をして其失敗を負はしむるの勝れるに如かさるなり』って言ってるよ。もし、取締を厳格に適用執行して廃校にしたら、学校経営者が『お上の弾圧暴政のせいで失敗したニダ』と責任転嫁して被害者ヅラするだろうって…」

写経屋の覚書-はやて「まぁ、その辺は今と変わらへん言うたら変わらへんのかもしれへんなあ」

写経屋の覚書-なのは「うーん、そうかもしれないけど…『思ふに今日は第一期の学校監督時代にして先つ全国総ての私立学校を学部大臣の認可の下に存立せしめ内容の改善は第二期に之を待たさる可らず』っていうのもおもしろいところかもしれないよ」

写経屋の覚書-フェイト「まずは私立学校を学部大臣の認可制として法令上の改善をして、次は内容そのものの改善をすると。段階的改善というか漸進的に進めていくわけだね」

写経屋の覚書-はやて「なるほど。いっぺんに全部やってもぉたら、ここまで書いたように流言や誤解が噴出横行して、それに乗じて被害者ヅラしたりする連中が出てきてグダグダになるってことやしな」

写経屋の覚書-なのは「そういうことだろうね。とりあえず今回はここまでにして、次回も『日本植民地教育政策史料集成(朝鮮編)第66巻』収録の『朝鮮教育と警察行政(隆煕三年九月十七日警察部長会議席上に於ける俵学部次官の訓示演説要領)』の続きを見るね」