写経屋の覚書-フェイト「やっと『私立学校規則』を見るんだね」

写経屋の覚書-なのは「うん。例のキャプションにもあったように1911(明治44)年の発布なんだけど、まずはテキストをあげるね」

1911(明治44)年10月20日付官報号外掲載


写経屋の覚書-私立学校規則2
写経屋の覚書-私立学校規則1


朝鮮総督府令第百十四号
私立学校規則左の通定む
  明治四十四年十月二十日         朝鮮総督 伯爵寺内正毅
   私立学校規則
第一条 朝鮮人を教育する私立学校に付ては特別の規定あるものを除くの外本令に依る
第二条 私立学校を設置せむとするときは左記各号の事項を具し朝鮮総督の認可を受くへし
 一 目的
 二 名称、位置
 三 学則
 四 校地校舎の平面図(坪数及附近の状況を記載す)並其の所有者
 五 一年の収支予算
 六 維持方法但し基本財産、寄付金に付ては証憑書類を添附すへし
 七 設立者、学校長及教員の氏名並履歴書
第三条 私立学校に於て前条第一号若は第三号の事項設立者又は学校長を変更せむとするときは朝鮮総督の認可を受け第二号、第四号若は第六号の事項又は教員を変更したるときは朝鮮総督に届出つへし但し設立者、学校長又は教員の変更に付ては履歴書を添附すへし
第四条 私立学校の開校又は廃止は設立者に於て遅滞なく之を朝鮮総督に届出つへし
第五条 私立学校設置の認可を受け六月以内に開校せす又は六月以上所定の授業を為ささるときは設置の認可は其の効力を失ふ
第六条 学則には左の事項を規定すへし
 一 修業年限、教科目、教科課程及毎週教授時数に関する事項
 二 生徒の定数
 三 学年、学期及休業日に関する事項
 四 入学者の資格及入学、退学に関する事項
 五 授業料に関する事項
 六 前各号の外学校に於て必要と認むる事項
第七条 私立学校は其の名称に私立の文字を冠すへし
第八条 私立学校には学校長を置くへし
 学校長は学校を代表し校務を掌理することを要す
第九条 私立学校の教科用図書は朝鮮総督府の編纂したるもの又は朝鮮総督の検定を経たるものを用うへし
 前項の教科用図書なきときは朝鮮総督の認可を受け前項以外の図書を用うることを得
第十条 私立学校に於ては前条第一項の教科用図書を用ゐたるときは其の図書の名称、冊数、使用する学年、著訳者及発行者の氏名、発行年月日を具し朝鮮総督に届出つへし
 前条第二項の図書を用ゐむとするときは其の図書の名称、冊数、使用せむとする学年、著訳者及発行者の氏名、発行年月日を具し申請すへし
第十一条 左の各号の一に該当する者は私立学校の設立者、学校長又は教員と為ることを得す
 一 禁獄又は禁錮以上の刑に処せられたる者但し特赦、復権せられたる者は此の限に在らす
 二 破産又は家資分散の宣告を受け復権せさる者又は身代限の処分を受け債務の弁償を終へさる者
 三 懲戒に依り免職に処せられ二年を経過せさる者但し懲戒を免除せられたる者は此の限に在らす
 四 教員免許状褫奪の処分を受け二年を経過せさる者
 五 性行不良と認むへき者
第十二条 朝鮮総督は私立学校の設立者前条各号の一に該当したるときは設立の認可を取消し学校長又は教員前条各号の一に該当したるときは設立者に対し其の解雇を命することあるへし
第十三条 私立学校の設備、授業其の他の事項にして不適当なりと認めたるときは其の変更を命することあるへし
第十四条 左の各号の一に該当する場合に於ては朝鮮総督は私立学校の閉鎖を命することあるへし
 一 法令の規定に違反したるとき
 二 安寧秩序を紊乱し又は風俗を壊乱するの虞あるとき
 三 第十四条に依る命令に違反したるとき
第十五条 私立学校に於ては左の表簿を備ふへし
 一 学籍簿、出席簿
 二 職員名簿、履歴書
 三 教科用図書配当表
 四 会計に関する帳簿、校地校舎の図面
第十六条 私立学校長は毎年五月末日現在に依り職員氏名並其の担当教科目、学年別、在籍者数及出席者数、教科用図書配当表及会計の状況を翌月中に朝鮮総督に届出つへし
第十七条 本令は書堂に之を適用せす
第十八条 私立学校は特別の規定ある場合を除くの外道長官の監督に属す
   附則
本令は明治四十四年十一月一日より之を施行す
本令施行前設置の認可を受けたる私立学校は本令に依り設置したる私立学校と看做す


写経屋の覚書-なのは「今回はこのテキストをあげるだけでおしまいなんだけど、次回への宿題を出しておくね」

写経屋の覚書-はやて「えーっ?!宿題あるん?ややなぁ…」

写経屋の覚書-なのは「さぁ、私立学校令で見た『私立学校令』と、この『私立学校規則』はどこが違うかな?」

写経屋の覚書-フェイト「間違い探しじゃないけど、比較して違いを見つけろってことだね。がんばって探してみるよ」

私立学校令頒布に関する訓令(1)
私立学校令頒布に関する訓令(2)
私立学校令頒布に関する訓令(3)
私立学校令頒布に関する訓令(4)
私立学校令頒布に関する訓令(5)

写経屋の覚書-なのは「今回でやっと『私立学校令頒布に関する訓令』はおしまいなの」

写経屋の覚書-はやて「ほんまに終われるんやろか……」

  一、教育をして政治の外に特立せしむることは学政上必要のことなりとす然るに往々学校其ものを政治機関として利用せんとする者あり又所定の課程を閑却して現時に於ける政治上社会上の問題を捉らへ来りて討究論議せしむるものあり前者の不可なることは論を俟たす後者も亦学校本然の目的を没却するものなるを以て深く戒むへし蓋し学生たる者は専心―意力を其の学業に注くへきものにして彼の政論に参加し又は時事に関与することの如きは修学時代に於て断して之を避けしめさるへからす然らされは学生をして自ら課業に対する誠意を欠き放漫自ら制せす遂に其の本分を失はしむるの弊に陥るへし

写経屋の覚書-フェイト「教育は政治の外に立つものだっていう認識は、当たり前のことじゃないのかな?」

写経屋の覚書-はやて「それがやな、そうでもないねん。さらに踏み込んで教育は思想の問題や、って言うてもぉとる人がおるんよ」

教育というものについて私がたえず思っているのは、教育は思想と関係ないといういわば〝教育の中立性〟をどうしても主張せざるをえないという面もあるが、しかしこれはじつは非常に大きな偽りで、教育はやっぱり思想の問題だということです。日本は資本主義の国だからそういう〝中立性〟によって反動思想の及んでくるのを食い止めるのが精一杯。だがあの国では根本的に知育、体育、徳育の三つを強調する。その根本になっているのは人間の尊重だ。そして社会主義、共産主義の思想を子供のころからほんとうにあらゆる形で討論したり、議論したりしている。私はこの事をまず非常に印象深くみたのです。
                                 『世界』1972年12月号「日朝交流への課題」

写経屋の覚書-はやて「発言者は岩井章ってヒトや。どんなヒトかは各自で検索してな♪」>

  一、私立学校にして学生に断髪の必要を勧諭するは敢て不可なしと雖之を強制して就学上の疑惧を買ひ又衣服を清潔ならしむるを注意するは嘉すへきことなりと雖服制を一定して無用の消費を増加せしめ或は喇叭を吹き鐘鼓を鳴らし徒に世人の耳目を惹き又兵式訓練若くは戸外運動に熱中して所定の課業を放擲し甚たしきは妄りに大規模の運動会を催ふして数日若くは十数日の課業を廃するか如きは近時最も多く睹る所なり之等は実に教育の普及を害し又其の本旨を愆るものなるに依り周く之を学校に警告して其弊風を除去せんことを努むへし

写経屋の覚書-なのは「断髪については、俵学部次官の訓示演説要領(隆煕3年9月7日)(3)でも触れたね」

写経屋の覚書-フェイト「『妄りに大規模の運動会を催ふして数日若くは十数日の課業を廃するか如き』ってのも俵学部次官演説要領(明治43年7月13日)にあったよ」

写経屋の覚書-はやて「服装については初めて見たわ。制服を決めると生徒家庭の支出増加をまねくっちゅうのはおもろいな。逆に制服とか学校指定鞄とかがないと華美に流れるという考え方もあるやろに」

写経屋の覚書-フェイト「制服一式の購入費用でさえ、家計への負担が大きくなるようなものだったのかな?」

写経屋の覚書-なのは「これでやっと『私立学校令頒布に関する訓令』はおしまい。次回からは朝鮮総督府の『私立学校規則』を見てみるね」

私立学校令頒布に関する訓令(1)
私立学校令頒布に関する訓令(2)
私立学校令頒布に関する訓令(3)
私立学校令頒布に関する訓令(4)
写経屋の覚書-なのは「さて、『私立学校令頒布に関する訓令』はあと第9項だけだし、今回でおしまいにしたかったんだけど…」

写経屋の覚書-フェイト「?どうしたの?」

写経屋の覚書-なのは「この第9項にはさらに附則があったんだよね。にゃははは」

 九、現今の私立学校に就て通弊と認むへき点尠からす今最も改善を急とするものを挙くれは概ね左の如し地方官は特に此点に注意を払ひ学校をして健全なる発達を遂けしむることに努力すへし
  一、私立学校の施設多くは先進国の外形を模倣するに急にして内容を充実するに疎なるの観あり彼の妄りに学科の多きを貪り程度の高きを誇り教授訓練を等閑に附するものゝ如きは徒に軽佻浮薄の風を醸生し教育の目的を達する所以の途にあらす宜しく外観の粉飾を去り力を内容の充実に致し以て着実有用なる人物の養成に努めしむへし

写経屋の覚書-フェイト「大切なのは中身だよね」

写経屋の覚書-はやて「メニューの写真の質や多さとか食器の豪華さを誇ってもしゃーないやんなぁ。料理そのものがまずかったら話にならへん」

  一、産業の振興発達は富国の基礎にして我国の現状は殊に之を以て最大要務となさゝるへからす故を以て教育も亦重きを茲に置き実業思想を普及し実業上の智識技能を養成するは上下の大いに努むへき所なりとす然るに不幸にして国内此種の学校に乏しきのみならす実業に関する科目を加設するものすら猶未た多からさるものゝ如し且つ民俗尚学問を以て単に就官の楷梯と為し実業を卑しみ勤労を厭ふの風未た去らす稍教育を受けたるものにして却て其の課業を忌むの傾向あるは実に家国の為め慨すへきの至りなりとす地方官は此意を諒し機に触れ事に臨み能く民心を開導し学校当事者に誨諭し以て教育の効果をして利用厚生の途に協はしむへし

写経屋の覚書-フェイト「『民俗尚学問を以て単に就官の楷梯と為し実業を卑しみ勤労を厭ふの風未た去らす』って、学問は官に就くための道具として、労働は卑しいものだとみているってこと?」

写経屋の覚書-はやて「儒教の弊害ってやつやんな」

写経屋の覚書-なのは「うーん、そうとらえられることが多いよね。もっとも最近の作者は、労働に対する意識価値観の違いについてはもう少し慎重に考える必要はあるんじゃないかとしているみたいなんだけど…まだまとまっていないし脱線するからこれ以上触れないよ」

  一、私立学校にして従来維持の基礎たるへき財源を究めすして軽々しく其設立を企画し為に或は寄附金を強請し或は財産の所属を争ふもの其数枚挙に遑あらす斯の如きは世人をして学校の真相を疑はしめ却て向学心を阻碍するの結果を来すへきを以て将来其の弊風の防止に努めんことを要す

写経屋の覚書-フェイト「…えーっと、『寄附金を強請し或は財産の所属を争ふもの其数枚挙に遑あらす』ってツッコむとこなのかなぁ…」

写経屋の覚書-なのは「ま、まぁ、朝鮮でなくてもこういう詐欺めいた話はあるんじゃないかなぁ…としておくの」

写経屋の覚書-はやて「別の史料読んどるときに、関連記述とか実例に出会うかもしれへんねぇ」

写経屋の覚書-フェイト「それ、ありがちだよね」

写経屋の覚書-なのは「そうだね。結構長くなったから今回はここまでにしようか。次回こそ『私立学校令頒布に関する訓令』を終わってみせるよ」

私立学校令頒布に関する訓令(1)
私立学校令頒布に関する訓令(2)