大韓帝国期のキリスト教(二)
「画像は前回であげているから、テキストの続きに行くね」而も彼等の監理下にある韓人の牧師、伝道師中却て之を悦はさるものあり米国長老派か私立学校令に依りて認可を受くへきことを決せるや即ち曰く我等基督教徒は治外法権を有す何を喜んてか日本人の手に依りて作られたる法令の支配を受くることを敢てなさんや長老派にして若し私立学校令の支配下に立つに於ては我等は須らく去りて監理教の下に走るべし聖公会派に投せんと放言して頻りに反対を唱えたりしか各宗派宣教師の態度殆んと同一に以て其総て私立学校令に依り認可を受くるに至るを見るや其反対も無容に終りたり斯くして宗教学校も学部に統一せられたるも若し之に反して私立学校令の精神徹底せす基督教宣教師設立の学校にして此支配の外に立たんか韓国私立学校は殆んと悉く宣教師の下に走り私立学校令は所謂空文徒法に過きさるべし予は基督教宣教師が進んて其設立の認可を受くるに至りし一事の教育行政上甚た慶賀すへき事柄なりと信す
「赤字部分に注目してね♪」
「えーっと、韓国人の宣教師や信徒が私立学校令に応じることに反対したってことかな?ここでもキリスト教徒は治外法権があるなんて言っているんだ…」
「つか、私立学校令を受け入れるなら他教派へ鞍替えするって、信仰っちゅうもんを何やと思ってるんやろ?って多分愚問やわなw」
「今回の参考エントリー大韓帝国期のキリスト教(二)でもふれられているとおりだよ。あとアービン(二)にも何点か言及があるね」一昨年の7月24日のエントリーでは「教師たる身分上、官庁に召喚せらるる義務なし」。
同じく一昨年の8月6日のエントリーでは「韓民にして我教徒たるものは我教会の保護に依り、濫りに官憲制肘を受けず、生命財産の安固を保障し、且つ已往の罪悪と雖ども其罪を逃るを得ん」。
同じく一昨年の10月20日のエントリーでは「教徒は納税の義務なし。又本年度結税は金12円なるも、実際金8円を納付せば可なり。若納税の義務を免れんと欲せば、速に耶蘇教に入教するに如かず。」。
昨年の1月10日のエントリーでは「外国の圧迫を免るるには耶蘇教に入るの外、道なし」&「耶蘇教徒は、官憲の干渉を受くることなし」。
プロテスタント系宣教師の様々な名言の中に、また一つ。
耶蘇信徒は韓国政府の支配を受けず
結局、アービンの話よりこっちがメインかもと、今思った。(笑)
「…外国人宣教師側も煽っとるんちゃうん…あかんやん」
「実は獄長があげている外にも、何点かおもしろい史料はあるんだよね♪まず明治42(隆煕3・1909)年5月17日付『機受第1386号 鎮南浦理事官提出機密月報抜粋』から」一、韓国官民の帝国政府及人民に対する感情其の他類似事項
(中略)耶蘇教徒就中長老派に属する教徒は兎角排日思想を鼓吹するの聞あり未た具体的に其の事実を指摘する場合に至らすと雖も新税を徴収して韓国を亡ほさんとする者は日本人なり日米戦争は遠からす開始せらるへし貧小なる日本は米国に勝ち得へくもあらす等の流言は彼等の内より喧伝せらるゝか如くにして未た世界の大勢に通せさる韓人をして流言を信し危惧の念を抱かしむることなきにあらす其の行動に就ては常に観察を怠らす居候
「次は明治42(隆煕3・1909)年4月分の『清津理事官機密警察月報抜粋』」一、外国官民の帝国政府及臣民に対する感情其の他類似の事項
当管内には外国官憲なく清津、鏡城、羅南、雄基等に散在せる清国人の多数は労働者にして帝国政府及臣民に対し何等悪感情を有せさるのみならす却て帝国官憲及臣民に信頼することは前月報に同し唯茲に特に記すへきは外国宣教師の行動是なり
久しき以前より城津を本拠として耶蘇教の伝道に従事しつゝある英国人「グレーゼン」宣教師は近来斯教拡布の目的を以て鏡城郡明澗西面新郷洞、漁浪面龍山間洞及美北面院洞地方に各支部を開設して助教師(韓人)を派遣し盛に布教に努めつゝあり而して彼等助教師は説法に際し「耶蘇信徒たらんには信徒としての特権上暴者の虐待就中日本軍隊の圧迫等を免るゝことを得るのみならす文明的の教義に基き生命名誉財産等に関する権利を伸暢し得るか故に専制的政治の法令即ち人道に反する禁制及苛税には服従せさるも差支なし」等の言を弄する趣にして鋭意布教の結果既に前記地方にて百二十余名の信徒を出すに至れり而して是等信徒は何れも無智の愚民にして多少の才識あるものは之を蔑視するの状あるを以て到底発展の望なしと雖も布教の目的を達せんか為め前述の如き不穏等なる言辞を弄する一事は等閑に附し難き儀に付目下大に注意を加えつゝあり
「次は隆煕3(明治42・1909)年11月5日付の『高秘発第349号』と11月6日付の『高秘収第6262号の1』」高秘発第349号 耶蘇教徒に関する件
慶尚北道にては耶蘇教徒に関し左の風説行動及計画あり
一、現統監は韓国に於ける各派耶蘇教を一団とし韓民へ布教せしむる為め金二万円を下賜せりとの噂あり
二、韓皇帝陛下南巡に際し大邱に教育費として多額の金員を下賜せられたり然るに観察使郡守は之れを配布せす該金を自己の学校に充用し之れを以て宗教学校を閉鎖せしめんとせりと韓人牧師間に誤伝せられ先般七八名の牧師会合し反対決議をなし其趣在京城の同輩に移
三、比安郡に於ける教徒は十面に渉り人員二百八十余人あり然るに此等は稍もすれは面洞長に反抗し其命に服せさること屡々あり又負担すへき公費さへも之れを拒絶し義務を履行せさる向あり為めに面洞長より駐在所に之れか願出を為す場合等あるを以て大邱警察署は宣教師に面会したるに米国人安牧使及仏国人金保縁の両名は意外に胸襟を披き曰く本教会より学校を設置しある地方に於て他の私立学校の経費を強制的に徴収せんとする傾向ある為め教徒は苦情を申出て学部或は当理事庁に事情を開陳し該徴収を免れたることあるの外官公吏の関係事務に干渉を試みたる事あらす常に国法を遵奉し官憲の命に従ふは神の命に従ふに均しと伝道せりと云ふ要するに宣教師の使嗾にあらさること判明せり
右及通報候也
隆煕三年十一月五日
内部警務局長 松井 茂
統監府 総務長官事務取扱 石塚 英蔵 殿
高秘発第349号 耶蘇教徒に関する件
咸鏡北道鏡城郡に於ける耶蘇教徒納税に関し暴行せし件咸鏡北道警察部長より左の詳報あり
一、鏡城郡西面新郷洞に於ける耶蘇教徒相一致し煙草耕作税、酒造税を相当手続を為さす公然之れを行ひ居るに付巡査山下常蔵の説諭に対し暴行を加へたる件に付鏡城警察署長は鏡城財務官佐野林太郎と共に同地へ出張取調をなしたり
二、昨年十二月十日城津本部教会より布教の為め西面新郷洞に支会を設け排日的行動を取り洞内五十八戸の洞民は同地鄭周封、金漢国、文錫圭等の為めに勧誘せられ耶蘇信徒となりたり其勧誘方法として
(イ)耶蘇信徒は神の力により心身上偉大なる快楽を受くるか故に無病長寿の幸福を得ること
(ロ)同信徒は文明的に基く教養を受くるか故に啻に世界列強の大勢に通暁するのみならす生命名誉財産等を安固にすへき権利を主張するの智識を収むることを得且つ信徒たるの特権あるか故に日本官吏及軍隊の圧迫を免るゝことを得ること
(ハ)同信徒は生命名誉財産等の権利を伸暢し得るか故に専制的政治の法令即ち人道に反する禁制及苛税には服従せさるも差支なきことを以てせり
三、以上により信徒たるものは第一政府への納税は地租以外に上納せさるも差支なく今般発布の家屋税、酒造税、煙草税の如きは日本官吏か圧政的に徴収するものなるか故に城津本教会牧師「グレーゾン」及魯牧師の命令あらさる限りは決して上納せさるも差支なく日本官吏及軍隊と雖とも吾信徒の邸宅に一歩も入るゝこと能はすとし鏡城財務署より吏員出張該烟草耕作地検査を為すも之を排斥して納税の義務なしとし酒税煙草税に対する成規の手続をなさす之を公行し居るの状態なり従て各面に於ても耶蘇教信徒に対し三税を免除せらるゝに於ては悉く耶蘇教に入教する旨揚言し既に免許申請したるもの迄へも波及せんとするの状況なりし
四、茲に於て鏡城警察署長及ひ財務官立会の上取調たるに目下左の脱税者を発見せり
煙草税脱税者 二十一名
酒造税脱税者 二十六名
さりしにより之れに対しては其場に於て免許の申請を履行せしめ夫々免許状を交付したる上徴税をなせり
五、而して暴動をなしたるものゝ内判明せる金漢国外十二名を逮捕し且つ暴行証拠品として十字架耶蘇旗其他の器具を押収せり然して検挙せるものは去る二十日之れを鏡城支部検事へ送致し未検挙の者に対しては十月二十二日同支部検事中川一に同行検挙手続中なり
右及通報候也
隆煕三年十一月六日
内部警務局長 松井 茂
統監府 総務長官事務取扱 石塚 英蔵 殿
「信徒の脱税、公費負担拒否なんてのもやってるんだね。5月16日のエントリーでは測量を煽っていたけど、こっちのほうが性質が悪いよね…『高秘収第6262号の1』のほうは『清津理事官機密警察月報抜粋』で触れられていた事態が進行して起こった事件みたいだね。『グレーソン』は『グレーゼン』のことでしょうし」
「つか、暴動やった連中の逮捕送検は当然やろけど、脱税者には煙草耕作・酒造の免許の交付申請をさせてその場で免許交付したうえに税を徴収してお咎めなしって、どんだけ甘いねんw ほんで観察使や郡守のような行政側でもええ加減なことしとるように書いとるけど、誤伝だけやのうてほんまに不公平な経費徴収とかもしてたみたいやな」
「あ、行政側と宣教師の反目についてはこんなのがあるんだ」高秘発第6517号の3 郡守・宣教師反目の件
忠清北道鎮川邑在留英国宣教師金宇逸は同郡守朴初陽と相反目せる聞有之調査するに
一、郡守は本月二日鎮川郡広恵院私立学校維持費として万升面民に寄附金の募集を為し又学生に対し断髪及黒衣を着する様奨励をなしたるに宣教師は信徒に対し韓国従来の習慣風俗を改むるは不可なり郡守の訓示は不法なりなと反対演説を為したるに由り今尚実行する能はす
一、本年十月郡守は宣教師の私立宣明学校に臨み教科書を検閲し且つ生徒に対し勅令の旨趣に基き断髪及黒衣を着することを訓示したるに宣教師は之に対し大に激昂し郡衙に来り郡守に対し我学生に断髪黒衣を
右及通報候也
隆煕三年十二月九日
内部警務局長 松井 茂
統監府 総務長官事務取扱 石塚 英蔵 殿
「『勅令の旨趣に基き断髪及黒衣を着すること』って断髪令のこと…じゃないよね?」
「私立学校令頒布に関する訓令(5)で見た訓令で『私立学校にして学生に断髪の必要を勧諭するは敢て不可なしと雖之を強制して就学上の疑惧を買ひ又衣服を清潔ならしむるを注意するは嘉すへきことなりと雖服制を一定して無用の消費を増加せしめ』って言うとるように無理したらあかんようんに言うとるんけどなぁ。せやけど、宣教師側が理由をつけて、学校に対する官吏の指導干渉を排除しようとしとるようにも読めるんけどな」
「そうだね。ここで触れたほか、救世軍に関してはまとめてみるとかなりおもしろくなるから、また別のエントリーで紹介するね。次回からはテキストの続きをちょっとお休みして、2月8日の俵と宣教師の会見について以下のエントリーで触れている箇所を見てみるから、予習しておいてね」私立学校令等について(四)
俵学部次官演説要領(明治43年7月)(1) 俵学部次官演説要領(明治43年7月)(2)
俵学部次官演説要領(明治43年7月)(3) 俵学部次官演説要領(明治43年7月)(4)
俵学部次官演説要領(明治43年7月)(5) 俵学部次官演説要領(明治43年7月)(6)
俵学部次官演説要領(明治43年7月)(7) 俵学部次官演説要領(明治43年7月)(8)
俵学部次官演説要領(明治43年7月)(9)




