写経屋の覚書-なのは「さ、今日も続きを見るよ」

写経屋の覚書-はやて「ところでこの史料ってどれぐらい続くん?」

写経屋の覚書-なのは「んー、あと20ページ少し残っているね。回数にすると3、4回くらいかな?じゃ本文に行くよ」

写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_48
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_49
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_50
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_51
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_52
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_53

    丁、私立学校設立認可の方針
私立学校の設立認可及監督に就ては法令の適用上寛厳何れに依りて之に臨むへきか蓋し之を厳にせんか私立学校の多数は其内容教育の実績を挙くるに足るものは寥々として暁星も啻ならす随ひて現時の学校中其設立を容認すへきものなきに至るへく是れ徒に世上の疑惑を滋くするのみならす彼の宗教学校の如きは是に籍口して学部の監督の範囲外に立つも亦施すに■なかるべし是今日の時代に適合する行政の妙にあらす先つ私立学校令の下に立たしめ其内容の改善矯正の如きを徐ろに之を期せさるべからす故に学部か私立学校の認可請願書を取扱ふや務めて寛大なる方針の下に其宜しきを制することを旨とし教科用図書の如き直接生徒の頭脳に危険不穏の思想を注入するものゝ如きを除くの外其設備、其教師、其経費の如きは敢て多く之を問はす殆んと総ての私立学校を認可するの方針を採りてあらゆる範囲、種類、程度に於て今日多数の私立学校を私立学校令の支配下に立たしめ之か内容改善の如きは監督の第二期に譲らんとせり

写経屋の覚書-フェイト「『宗教学校』ってキリスト教宣教師のつくった学校のことだよね。私立学校の設立認可を厳密にやれば、今ある私立学校はほとんど不認可になってしまうけど、それは世間の疑惑を招くだけじゃなくて時勢にマッチしないから、まず私立学校令の範囲内に取り込んで、それから改善していこうってことだね」

写経屋の覚書-はやて「せやな。内容が不穏な教科書はさすがにあかんけど、設備・教師・経費面は問わんと全部認可して、まず私立学校を私立学校令の支配下に置く。内容改善は次の段階でやるんやって繰り返し言うとるなぁ」

写経屋の覚書-なのは「うん。2月8日の宣教師との会見でも『私立学校令は、私立学校を今直に理想的に完全にせんとするものにあらず。本官演説筆記にある如く、私立学校令頒布の第一理由は、何地に如何なる学校ありて、如何なる学科を教へ、如何なる情況に在るかを知らんが為めなるが故に、既設の学校の如きは、全く現在有りの儘を記し、第二條の手続をなせば足れり。学校の改良の如きは、漸く以て之を期するの考なり。此点、克く諒悉あられんことを望む』って言っているしね」

    戌、私立学校の現状
     一、維持困難と整理改善
斯かる如上寛大なる取扱の下に認可せられたる私立学校の多数は今に及んて経費の窘窮を訴へ廃滅を余儀なくされんとする境遇に瀕し来たり思ふに学部か最初に於て監督権の行使を寛仮し不完備なる私立学校も敢て之を認可したるものは軈て来るへき自然の淘汰に依りて基礎不完全なる私立学校の自動的に廃滅を期したる所以にして徒に積極的干渉に依りて他動的に之を廃滅せしむることは学校経営者をして非政に籍口して罪を為政者に帰するの結果となるへきを慮りたるに出てたるなり元来韓国に於ける私立学校の多数は其経営の基礎鞏固なるものにあらす多くは学田、渡舩税、市場税の如き公課的収入若は寄附金の如き他人の財貨に依頼して設立するものなりしか今や一面に於て地方費法の発布となりて其財源の多くを収上せられ寄附金■募集取締規則の発布に依りて寄附金の募集に大打撃を蒙り維持基礎茲に危く廃滅の窮境に瀕する至りたるなり而して今や学部は是等多数の私立学校の窘窮困憊に瀕するに臨み予め収めたる監督の手を下して能く是等私立学校の内容実質を査覈し優良にして改善に値するものに対しては之を保護して其維持を継続せしめんとする方針を採り其然らさるものに対しては之か併合を懇飭し若は其自然の廃滅に放任せんとす

写経屋の覚書-フェイト「『不完備なる私立学校も敢て之を認可したるものは軈て来るへき自然の淘汰に依りて基礎不完全なる私立学校の自動的に廃滅を期したる』って、経営状況の悪い私立学校はほったらかしにするの?ひどくないかなぁ?」

写経屋の覚書-はやて「フェイトちゃん、続きをよぉ読んでみぃ。『徒に積極的干渉に依りて他動的に之を廃滅せしむることは学校経営者をして非政に籍口して罪を為政者に帰するの結果となるへきを慮りたるに出てたるなり』って書いとるで。前にもふれとるんけど、経営状況が悪いからいうて積極的に干渉したら『政府の干渉のせいで廃校に追い込まれた!』って言うて責任転嫁してきよるからやで」

写経屋の覚書-なのは「そうなんだよね。だから干渉行為は他校との合併を勧めるくらいで、自然に廃校になるのを待つんだよ。地方費法や寄附金募集取締規則を発布することで財源を潰して廃校に追い込もうとしたなんて解釈をする人がいるかもしれないけど、大韓帝国の地方行政の現状と、財務整理が必要だったことには注意するべきだよね」

     二、維持困難と外国人宣教師
私立学校の多数か其維持の困難を訴へつゝある現状に於て注目に値すへきの事実は基督教宣教師の活動なりとす彼等は韓国に於て百万の教徒を得へく全力を傾注しつゝあり而も能く韓国の趨勢、思潮に迎合するに巧なる彼等は手を教育界に伸して将に廃滅の悲境に立てる私立学校を救済せんとしつゝあるものゝ如し現に京城に於ける私立西北協成学校の如き私立普成学校の如き皆彼等の手に依りて救はれんとしつゝあり斯る現象は私立学校の整理問題と同時に其研究を等閑に附することを得さる重要事なりとす

写経屋の覚書-フェイト「『百万の教徒を得へく』ってすごい数だね…」

写経屋の覚書-なのは「当時『百万救霊運動』ってのがあったんだよねぇ。そうそう、宣教師が西北協成学校と普成学校を助けようとしているっていうのは、どういう展開になったのかちょっとわからないんだけどね」

写経屋の覚書-はやて「その2校って、愛国啓蒙運動やっとった西北学会のつくったもんやろ。ほんなら排日宣教師とコラボしてもおかしくはないんちゃう?」

写経屋の覚書-なのは「それはそうなんだけど、現時点で作者の持っている史料や知識では何とも言えないしねぇ…今日はここまでにして、次回は私立学校に対する監督について見てみるね」

  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(1)    俵学部次官演説要領(明治43年7月)(2)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(3)    俵学部次官演説要領(明治43年7月)(4)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(5)    俵学部次官演説要領(明治43年7月)(6)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(7)    俵学部次官演説要領(明治43年7月)(8)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(9)    俵学部次官演説要領(明治43年7月)(10)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(11)

写経屋の覚書-はやて「『漢城府内私立学校・学会代表者招集席上学部次官演説筆記(隆煕2〈明治41〉年10月)』は前回で終わったし、今日からは『明治四十三年七月十三日韓国駐箚各道憲兵隊長(警務部長)会議席上 俵学部次官演説要領(明治43年7月)』に戻るんやね」

写経屋の覚書-フェイト「どこからだったかな?ってあれ?ブログの正式名称が長くなってる?」

写経屋の覚書-はやて「ほんまや。フルメタルって追加されとる」

写経屋の覚書-なのは「うん。夏になるしちょっとしたリニューアルなの。じゃテキスト39ページ目から見ていくね」

写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_43
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_44
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_45
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写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_47
写経屋の覚書-明治43年7月13日俵訓示_48

     二、教育と宗教との関係
外国宣教師の設立に係る私立学校は前述の如く其目的宗教の宣伝に存し教科目には聖書を課す而して斯る宗教学校の存在する所以は日本の学制と著しく相違する点なり日本に於ける小学教育は義務教育として小学校令に依り一定の教科課程を設け父兄は其児童をして必す小学校に就学せしめさるへからさるの義務あり故に小学教育に於ては宗教学校の存在すべき余地を存せず韓国に於ては日本の小学校に相当する普通学校令あるも固より義務教育にあらす故に韓国の父兄は其子弟を普通学校に入学せしめさるへからさる義務を有せす随ひて韓国の子弟は普通学校に入ると私立学校に入るとは其任意なり而して普通学校に於ては法令の命する学科課程あり宗教々育を容るゝの余地なきも私立学校にありては基督教たると仏教たるとを問はず宗教々育を課するは毫も妨けなき所なり此点に関して世人或は日本の教育制度を援用して私立学校に宗教々育を容認せすとの謬見を抱くもの往々にして是なきにあらさるを以て茲に一言を加ふ

写経屋の覚書-フェイト「義務教育制度がないんだ?」

写経屋の覚書-なのは「うん。普通学校ってのはあるんだけど入学の義務はないの。日本の場合、国民皆学の方向じたいは明治5(1872)年の学制で定められたんだけど、明治19(1886)年の小学校令でようやく義務教育が確立したんだし、義務教育制度の実施ってたいへんなんだよねぇ」

写経屋の覚書-はやて「え?そんなにたいへんなん?」

写経屋の覚書-なのは「その理由が次に書いてあるんだよ」

     三、義務教育制度
韓国教育か日本の如き義務教育制度にあらさることは前述したり而も頃日説をなす者往々にして日本の制度に倣ふて義務教育施設の必要を唱ふ是固より韓国々勢を解せさる架空の議に過きす予は聊か其妄を弁する為め前陳「韓国教育の現在」の中に之を詳記したるも茲には唯其要を挙くへし
義務教育制度を論せんと欲せは先つ韓国の国勢に照し経済的方面より之を議するに当り日本の例を引証するを必要とす日本に於て所謂義務教育たる小学校教育に投する経費は最近に於て一ヶ年約四千余円に上れり日本は実に斯くの如き莫大なる費用を以て学齢百人中就学児童九十七人余に当る比類なき好成績を挙けつゝあり而して是等の経費は総て市町村の負担に係るものなることは諸君の既に了知せらるゝ所の如し今仮に韓国人口を一千二百万人と概算して之を日本の人口、学齢児童、就学児童、経費等に対照し同一の比例、同一の歩合を以て学齢児童数並就学児童数を有するものと見做し韓国に於ける義務教育施設に対し之に要する経費を算出すれは約四分の一たる一千万円を有せさるへからす仮に就学児童数を学齢児童数の半数とするも尚且五百万円を要す翻つて之を韓国の財政の見るに歳計総額約二千万円にして而かも事実上韓国人民の負担に係るものは約一千万円なりとす然らは国庫収入二分の一に当るの過大なる費用を投して義務教育制度を施行せんとするか如き到底根拠なき主張は何等の効果を事実上に現はすを得さるや明なり

写経屋の覚書-はやて「…お金の問題かぁ…大韓帝国のお約束やなぁ」

写経屋の覚書-なのは「そうなんだよねぇ…第三次日韓協約後の韓国軍解散だって、多大な軍事費を削るのが目的だし、施政改善の経費はいくらあっても足りないんだよ。日本からの借款だって無限じゃないしね」

写経屋の覚書-フェイト「だから私立学校をうまく改善指導して教育普及の補助をさせようっていう考えになるんだね」

写経屋の覚書-はやて「せやけど、いつかは義務教育制度を施行せなあかんわけやろ?」

写経屋の覚書-なのは「うん。土地調査事業なんかと同じで、教育についても大韓帝国の施策を継承しつつ段階的、漸進的に進めていくしかできないわけなんだけど、一応、昭和17(1942)年には、義務教育施行を昭和21(1946)年度から実施するっていう方針を打ち出すんだよ。アジ歴の『本邦ニ於ケル教育制度並状況関係雑件 第四巻 1.自昭和十七年一月 至昭和十七年十二月 (11)朝鮮ニ義務教育制度施行ニ関スル件(レファレンスコード:B04011478200)』に関連記述があるの。まずは2枚目から。画像はここに載せると見えにくいからアジ歴で確認してね」

  昭和十七年十二月十九日
        朝鮮総督府学務局長
 内務省管理局長殿

    朝鮮に義務教育制度施行に関する件

首題の件に関し去る十二月五日本府に教育審議委員会を招集朝鮮に義務教育制度実施に付附議其の審議を経て昭和二十一年度より朝鮮に義務教育制度を実施のことに決定致したるに付御了知相成度
同委員会に於ける総督挨拶の要旨及附議事項並仝日発表せられたる政務総監談話等御参考までに添付す

写経屋の覚書-なのは「総督挨拶要旨は省略して、9枚目以降の附議事項をあげるね」

昭和十七年十二月
 教育審議委員会附議事項

    朝鮮総督府教育審議委員会附議事項
朝鮮に義務教育制度施行に関する件

第一 義務教育制度実施の時期
    昭和二十一年度より実施す

第二 義務教育制度の内容
   (イ)就学義務年限
     当分の間概ね六年とし現行の簡易学校は総て世紀の国民学校に改組するものとす
   (ロ)義務教育制度実施初年度に於て学齢期に在る者の就学率目標男子学齢児童の凡そ九割女子学齢児童の凡そ五割とす

第三 義務教育制度実施に要する準備
   (イ)教員の養成
     義務教育制度の実施に伴ひ急激なる教員の需要増加に応ずる為取り敢へず昭和十八年度に於て師範学校の増設並に既設学校学級増加を図るものとす
   (ロ)国民学校の増設及学級増加
     昭和十八年度以降昭和二十一年度に至る向ふ四箇年間に第二項(ロ)に於て掲げたる目標に到達せしむるが為必要なる国民学校の増設並に既設国民学校の学
級増加を為し以て児童の増容を図るものとす

第四 義務教育制度実施に要する経費
(イ)設立団体の負担
  国民学校の設立及維持に要する経費は設立団体の負担とす
(ロ)国庫の助成
  概ね従前の例に依り国庫より助成を為すものとす

附言
 昭和十六年三月二十五日朝鮮教育令の改正に依り朝鮮にも国民学校制度を実施せられたる等の実情に鑑み前述師範教育機関の拡張の外師範教育制度の向上を図り併せて教職員待遇の改善に付ても相当考慮せんとす

写経屋の覚書-なのは「総督府学務局の発行していた『文教の朝鮮』(昭和18年2月)にも同内容の記事があるの。あと、戦後の編纂物だけど『総督府時代の財政』(水田直昌監修 友邦協会)にもほぼ同じことが書いてあるの」

 (b)義務教育の実施決定 昭和19年から徴兵制が行なわれることとなったのに伴い、これとほとんど不可分の関係にある初等教育の義務制という朝鮮統治多年の懸案が実行に移されることになった。すなわちその準備として教育施設および教員の充実に最大の努力を払うことにして、昭和21年4月を期して断行することに決定せられたのが昭和18年である。

写経屋の覚書-はやて「義務教育制度を施行しよ思たら、教える教員や校舎かて増やさなあかんしなぁ。ほんでまた育成費用や建設費とかでもお金がかかると」

写経屋の覚書-なのは「経費の支弁見込みの数字について、佐野通夫は『日本植民地教育の展開と朝鮮民衆の対応』の中で『このように枢密院審議資料の中でさえ、矛盾した数字が挙げられていることなどから考えると、義務教育制度実施予算について、本当に見通しのある予算が立てられていたのか、疑わしいといえる。また、「内地人優秀人材ノ吸収ヲ図ルモノトス」とあるが、この当時、日本国内においてさえ教員払底という状態の中で、これが困難であることは第1章に述べたとおりである。義務教育制度実施は打ち出したものの、どこまで実施する意思があったのかが疑われる』って疑問を呈しているんだよね」

写経屋の覚書-フェイト「でも、期限を明言して実施するって公表した以上は実施しないといけないんだよね…校舎は建てるだけでなんとかなるかもしれないだろうけど、教員はいくら速成しても急には増やせないよね…」

写経屋の覚書-なのは「特に教員はきちんと養成しないとダメだしね。教育の根幹にかかわる問題だし。それじゃ、今日はここまでにするね」

  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(1)   俵学部次官演説要領(明治43年7月)(2)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(3)   俵学部次官演説要領(明治43年7月)(4)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(5)   俵学部次官演説要領(明治43年7月)(6)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(7)   俵学部次官演説要領(明治43年7月)(8)
  俵学部次官演説要領(明治43年7月)(9)   俵学部次官演説要領(明治43年7月)(10)

写経屋の覚書-フェイト「今回は説明じゃなくて質疑応答の部分だよね」

写経屋の覚書-なのは「うん。そんなに長くもないし、今回で全部見てみるね」

写経屋の覚書-俵説明質疑(1908・41・2)_18
写経屋の覚書-俵説明質疑(1908・41・2)_19
写経屋の覚書-俵説明質疑(1908・41・2)_20

質問の梗概
○崔在学(私立孤児学校々監)
一、私立学校令第二条第五号維持の方法に関し幾何の有志者若は一区域に於て其維持を担当することゝし証明書を添付するときは設立認可上差支なきや
二、第三条第三号学員若は学徒の定員は家屋の狭小なるは差支なしとするも一学級の学徒数七八十名に至るも差支なきや
三、第六条第二項学部の検定なき教科書と雖学校より使用願出つる時は之を認可すへきか
四、第十条第二号即ち安寧秩序を紊乱し又は風俗を壊乱する虞ある云々の如きは事実上学校に於て斯の如きことは断然なかるへきことなるも壊乱の虞と云へは事未発に繋り行政官の見込に依り如何様にも処置さるへきに依り虞は行動と改正せられたし

写経屋の覚書-なのは「質問は4点あるんだけど、まず1の『私立学校令第二条第五号』はこれだよ」

第二条 私立学校を設立せむとする者は、左の事項を具し、学部大臣の認可を受くべし
  五 維持方法但し基本財産又は寄附金に対しては、証憑書類を添附すべし

写経屋の覚書-はやて「基本財産や寄附金に対する証憑書類って何なん?会社つくるときに資本金を出資した証明書とか領収書みたいなもんなんかな?」

写経屋の覚書-なのは「そんな感じでいいと思うよ。2は学級の定員について規定はないけど、1学級の生徒が70人、80人になっても問題ないかってことだね」

写経屋の覚書-フェイト「…常識で考えたらわかりそうな問題のような気もするけど…」

写経屋の覚書-なのは「たしかに法的な問題というより常識の問題だとは思うけどね。3は学部の検定していない教科書の使用を申請したら認可されるかってことで、4は私立学校令の第十条第二号の適用についての質問だね。条文はこれだよ」

第十条 左の場合には、学部大臣は私立学校の閉鎖を命ずることを得
  二 安寧秩序を紊乱し、又は風俗を壊乱する虞あるとき

写経屋の覚書-フェイト「安寧秩序の紊乱・風俗の壊乱の可能性があるというだけで閉鎖を命じられるなら、行政官の考え一つで左右されてしまうから、可能性ではなく実際の行動があった場合に改正してほしいってことだね」

写経屋の覚書-なのは「この4番目の質問が一番のポイントだと思うの。じゃ、俵の回答を見てみるね」

○俵次官
一、私立学校令第二条第五号の但書に基本財産又は寄附金に就ては証憑書類を添附することゝ定めたるは従来の例に依れは唯寄附金幾何と記載するのみにして之か出所を記載せす亦之を記載するも実際寄附金なき場合も之あるやの形跡あり故に私立学校令は之を証憑書類を添附することに規定せられたり而して学部か寄附金の事実確実なることを認め得らるゝ場合に於ては敢て寄附者全体の捺印を要せす唯学部に於て調査上疑点あるときは全体の捺印を要する場合も起るへく其事実の信憑するに足るへき時は敢て全体の捺印を要せす、要するに斯かることは事実問題なれは左様了承せらるへし

写経屋の覚書-フェイト「これまでのパターンだと、単に寄附金○○円と記載するだけで、誰が払ったかっていう出所を記載しなかったり、出所を記載しても実際には寄附金を出してなかったりすることがあるから、きちんとするために証憑書類をつけることにしたってことなんだね」

写経屋の覚書-はやて「スマトラ沖地震の義援金騒動みたいに、景気のええ金額言うだけ言うといて払わへんってことやな」

写経屋の覚書-なのは「まぁそこまでいかなくても、お金のことだから不明朗な部分があるのはよくないことだよね」

二、学員若は学徒の定員に就ては学徒を教授する場合に当り一人の教員か学徒の総てに対し完全に教へ得らるゝ程度に於て定むることを必要とす若し狭隘なる教室に学徒を充満せしめ学徒各自か身動きも出来さるか如き有様にては教授する者も教授を受くる者も共に困難を感することは云ふ迄もなく衛生上より見ても有害なとりつ信す故に此の如きものを除くの外教室の面積を許す程度に於て学徒を収容することは敢て差支なしと信す

写経屋の覚書-なのは「生徒数は、教員1人が教えられる範囲、余裕をもって教室に入る範囲でってこと。ほんと常識の問題だよ」

写経屋の覚書-はやて「意訳したら『教師1人で70人も80人も教えれるんか?狭い教室に生徒詰め込んで勉強できるんか?常識的に考えてみぃ!』ってことやね」

写経屋の覚書-フェイト「はやてちゃん、それ意訳じゃないと思うよ…」

三、教科書に就ては学部に於て編纂したるものを用ふるは勿論可然ことなりと雖或は学部の検定を経たるものにても可なりとす然れとも此検定を請ふと請はさるとは著述者の自由なるか故に未検定の図書を用ひんとする場合は其学校より第六条第二項に依りて学部大臣の認可を受くることを必要とするなり

写経屋の覚書-なのは「未検定の教科書の使用については学部大臣の認可が必要って回答してるけど、これじゃ回答になってないんじゃないかなぁ?」

四、第十条第二号に就ては各位の多数か多分同一の懸念を有せらるゝことゝ信す併しなから余は各位に向て明言す既往に於ける政府の措置如何は知らす将来の政府は決して各位か懸念せらるゝ如く行政官の手心にて閉鎖処分を濫するか如きことなし即ち私立学校令頒布に関する訓令の第三号には閉鎖処分の如きは監督の最終手段にして事体甚た重大に属し之か行使は素より望む所にあらさるも万々一之に該当するものあるときは教育上姑くも看過すへからさるを以て処分の茲に出つるは寔に已むを得さるなりとあるに徴しても政府の意思のある所を知るに足るを以て此点に就きての質問は全く杞憂に過きさるものたるへし

写経屋の覚書-はやて「赤字部分やねんけど、これまでの政府の措置はいざ知らず、これからの政府は行政官の手心で処分を濫発せぇへんって、えらいこと言うとるなぁw ともかく、私立学校令頒布に関する訓令の第3条にあるように、閉鎖処分は已むを得ない最終手段やから心配せんでええってことやね」

写経屋の覚書-なのは「このへんは行政に対する信用度の問題になってくるしねぇ…じゃ、次の質疑応答も見てみようか」

○玄■(私立長薫学校々監)
一、第一条別段の規程とは如何なる規程を指すものなるか
二、第十二条に依れは毎年一回限り報告書を提出するに於ては将来は毎月々終報告書の提出を要せさるや
三、第十三条の地方官とは漢城府尹も含むや

写経屋の覚書-フェイト「1で言ってる第1条って『私立学校は別段の規定あるものを除くの外総て本令の規定に依るべし』なんだけど、これじゃたしかに具体的にどんな規程を指すのかわからないよね」

写経屋の覚書-はやて「そうやね。2で言うとる第12条は『私立学校長は毎年五月末日現在に依り職員姓名、担当学科目、学年別学員学徒在籍者数及出席者数、教科書用図書名及会計状況に関する報告書を調製し翌月中に学部大臣に報告すへし』って条文なんやけど、将来的には毎月報告書を提出せなあかんようになるんかって質問やね。なんでそんなふうに思ったんやろ?」

写経屋の覚書-なのは「3の第13条は『地方官は学部大臣の指揮を承け其所管内の私立学校を監督す』って条文について、地方官とは漢城府尹も含むのかって疑問なんだけど、漢城は首都だからこういう疑問も出たのかな。それじゃ俵の回答にいってみよう」

○俵次官
一、訓令第一に明記しあり就て見らるへし

写経屋の覚書-なのは「この訓令も『私立学校令頒布に関する訓令』のことなんだけど、『第一』はこんな条文なの」

 一、私立学校令は私立学校に対する一般法なるを以て特種の私立学校に関し別に法令の規定あるものに就ては各其の法令に依るへきは勿論なりと雖其の法令に規定なき事項に関しては総て私立学校令の支配を受くへきものなりとす例へは私立普通学校又は私立高等学校の如きものに在りては先つ普通学校令又は高等学校令に依るへく而して該令に規定なき事項に就ては私立学校令に依るへきの類なりとす地方官は能く此関係を知悉し執行上遺漏なからんことを期すへし

写経屋の覚書-フェイト「えーっと、まず私立の高等学校だったら高等学校令、私立の普通学校だったら普通学校令に従うんだけど、そこに規定されてない事項については私立学校令に従うっていうことだね。一緒に出ている訓令もきちんと読まなきゃダメなんだね」

写経屋の覚書-はやて「土地調査事業について『複雑な申告手続きや朝鮮農民には理解が難しい申告内容』なんて言いよる連中もおるくらいやし、これもじゅうぶん複雑な内容って言われるんちゃうw」

二、特種の命令に基き提出する場合の外従来の如く毎月々終報告書を提出するに及はす

写経屋の覚書-なのは「特別な命令のない限り毎月提出しなくてもいいってことだけど、『従来の如く』は『毎月々終報告書を提出する』と『提出するに及はす』のどっちにかかるのかな?もし前者だったら、これまでは毎月提出してたことになるんだけど、小学校令とかの法令にそんな規定あったかなぁ?」

写経屋の覚書-はやて「作者の調査漏れってこともあるさかい、そのへんは保留しとこ。どっちでも特に問題あらへんやろし」

三、御見解の通り

写経屋の覚書-フェイト「つっこむところも、解説するところもないね」

写経屋の覚書-なのは「そうだね。こういう質疑応答があって、4ヶ月後の宣教師との会談につながるんだよ。次回からは『俵学部次官演説要領(明治43年7月)』の本文に戻るね」

  私立学校認可に関する事項説明(1)
  私立学校認可に関する事項説明(2)
  私立学校認可に関する事項説明(3)