前回、漫画カフェ(マヌゥアバン/만화방)で韓国語版の『スラムダンク』を全巻読んだと書いた。

そして、その『スラムダンク』が海賊版ではなく「韓国語正式版」だと説明した。

だけど、「正式版」の翻訳はたぶん海賊版のそれを受け継いでいる。

 

その根拠はこうだ。

 

韓国の友人(僕と同年代)と話していて、たまたま『スラムダンク』の話題になったことがある。

彼女もこの作品が大好きで、ストーリーのことなどを話しながら、すぐに「どの登場人物が好きか?」という話になった。

そこで、我々は大きな壁にぶつかった。

 

登場人物の名前が全部ちがうのである。

 

そうなのである。

韓国語版の『スラムダンク』は、登場人物の名前が全て韓国人風の名前に変わっているのである。

いや、よく見ると人の名前だけでなく、学校の名前も変わっていたりする。

 

だから、韓国の読者が知っている名前は、当然日本の名前と一致しない。

僕と友人の話が壁にぶつかったのもそのためであった。

そして今回、初めて読んだ「韓国語正式版」の『スラムダンク』に出てくる名前は、まさにその友人が話していたのと同じ名前だった。

ここから、「正式版」が海賊版の翻訳を受け継いでいるらしいことが窺われるのである。

 

代表的なキャラクターの名前を日韓で対比してみると、こうなる。

 

 桜木花道……カン・ベッコ(강백호)

 流川楓 ……ソ・テウン(서태웅)

 赤木剛憲……チェ・チス(채치수)

 三井寿……チョン・テマン(정대만)

 宮城リョータ……ソン・テソプ(송태섭)

 小暮公延……クォン・ジュノ(권준호)

 安西先生……アン・ハンス(안한수)

 赤木晴子……チェ・ソヨン(채서연)

 彩子……イ・ハンナ(이한나)

 

ずいぶん雰囲気が変わると思うが、どうだろうか。

主人公の名前は桜木花道からカン・ベッコに変わっているが、カン・ベッコはあえて漢字で書くと「姜白虎」になるのかもしれない。

赤い髪のキャラに「白虎」というのもアレだが、かっこいい名前ではありますね。

 

ちなみに、主人公の通う「湘北高校」は「プクサン高等学校(북산고등학교)」になっている。

「湘北」という漢字を韓国語で読むと「サンブク(상북)」なので、それを反対にしたような感じではある(パッチムが一つ変わってはいますが)。

「プクサン」は漢字にすると「北山」だろう。

韓国語的には「サンブク」より「プクサン」がしっくりきたのだろうか。

でも、「北山高等学校」は「湘北」に比べるとちょっとダサいよなぁ(実際にそういう名前の高校があったらすみません)。

 

これは、『海賊版』の翻訳者の功績(?)であろう。

どうしてそんなことをしたのかははっきりしないけれども、今、思いつくところを上げてみると……

 

① 日本人と韓国人の顔が似ているので、キャラクターの名前を変えても違和感がない(これは外国人キャラの場合はできない)。

② 90年代は日本文化開放前でもあり、反日感情を考慮した。

③ 日本人の名前はハングルにすると字面が長くなり、読みにくい。また、発音的にも違和感がある。

 

といったところだろうか。

 

「海賊版」では漫画の中に現れる看板の文字などもすべてハングルに書き換えられていたというのだから、徹底的である。

もしかしたら、「これは日本の漫画じゃなくて韓国の漫画ですよ!」という詐欺的要素もあったのだろうか。

 

『スラムダンク』よりももっと以前の話だが、韓国では日本のアニメがわりと多く放映されていたらしい。

そういった番組は、僕の聞いた限りでは〝すべて韓国語吹替で、歌も韓国語、スタッフロールも韓国語″、いわば「オール韓国語」であり、それが日本から輸入されたものだと知っている人はほとんどいなかったそうだ。

 

本の漫画についてもその方法がとられていたのかどうかはよくわからないし、『スラムダンク』に関してはみんな日本の漫画とわかって読んでいた様子だが、全部韓国語に変えるという発想はアニメの「オール韓国語」と同じところから来たのかもしれない。

 

そんなわけで、桜木くんは韓国でカン・ベッコとして生まれ変わった。

そのカン・ベッコ、実は本家の桜木とは性格がやや違う(ように見える)。

同じ漫画、同じストーリー、同じキャラのはずなのに、どうしてそんなことになってしまったのだろうか。

 

そのお話はまた次回。

 

(つづきます)

 

※ 次は水曜日か月曜日に更新します。

 

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