ちょっと前のことだが、韓国語版の『スラムダンク』を全巻よむ機会があった。

 

きっかけは南元(ナムォン)のある喫茶店。

そこの本棚に『スラムダンク』が全巻あったので、何気なく読み始めた。

 

『スラムダンク』は単行本で31巻にわたる長編なので、さすがに一気に読むことはできなかった。

そこで、済州市のマヌゥアバン(만화방;漫画カフェ)に何度か行き、残りを読んでしまったのである。

 

で、その感想をいくつか書いていきたいと思う。

 

まず、最初に気になったのはこれ。

 

 

日本の単行本サイズと同じデザイン・サイズで出ているのだが、この表紙の左上を拡大してみると……。

 

 

小さく「정식 한국어판(正式韓国語版)」と書いてある。

「正式版」ということをわざわざ強調しているということは、その裏に「海賊版」がある(あった)ことを暗示していると思われる。

うちのはちゃんと版権とってますよ!という主張をしているのである。

 

この標示を見て、ある本の一節を思い出した。

『김현구교수의 日本이야기(キム・ヒョング教授の日本の話)』という、去年読んだ本である。

この本はキム・ヒョングという日本史の教授が自身の日本留学体験を交えて日本を紹介するという内容で、たしか今から20年ぐらい前に出版された本だったと思う。

その中に、キム教授が日本で留学していたときに聞いた話として、次のような話があった。

少し長いが、引用してみたい。

 

早稲田大学の商研(商科大学大学院)にLという後輩がいた。彼がアルバイトをしているというので、何をしているのか尋ねたところ、「日本の本屋に行くとどんな漫画がいつ出るという広告があるんだけど、それを見て、本が出る日付になったらすぐにその本を買って、いち早く航空便で韓国に郵送し、一巻につきいくらずつの手数料をもらうという仕事なんだ」と言うのだった。私は 「普通郵便でゆっくり送ってもいいじゃないか。どうして高い送料を払ってまで空港便で送るんだ?」と尋ねた。その答えはこうだった。「韓国では漫画一巻を描いて出版するのに約200万ウォン(当時)かかるので、日本で漫画を買い、台詞だけ韓国語に換えて出版すれば、かなりのお金を節約できる。だから、他の人より早く入手して先に出版しないといけない。それで、空港便で早く送らないといけない」というのだ。しかも、シリーズで出る場合には、第一巻を最初に出版した人がそのシリーズの権利者になるので、アンテナを張って素早く送らないといけないのだというのだった。(下花訳)

 

この話は、キム教授が留学していた80年代の話である。

『スラムダンク』が出たのは90年代初頭だが、だいたいこれと似たような状況があったのではないかと思う。

おそらく、その時にもいちばん早く『スラムダンク』の第一巻を送った人がいて、それを受け取った人が「権利者」となって最初の海賊版を出版したのだろう。

その後、韓国でも版権保護の法が整備され、誰かが日本側と交渉して『スラムダンク』の韓国での版権をとり、「正式韓国語版」が出た、という流れなのだと思われる。

 

でも、僕の見たところ、この「正式韓国語版」も元の海賊版の翻訳をほぼそのまま使用している。

実は、その翻訳された内容が今回の主題なのだが、長くなるのでそれはまた次回。

 

(つづきます)

 

※ 次は水曜日に更新します(たぶん)

 

↓「いいね!」と思ったらポチッとお願いします!

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村