その夜の月 ~9~ | infection  ~YooSu~

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「好きです。好きだ。君が好きだ」

 

 

さざなみのように繰り返される告白に、体の震えが止まらない。

僕は震える手を必死に彼に伸ばし、思いっきり頬っぺたをつねった。

 

 

「痛い」

 

 

彼の顔が歪む。

じゃあ、これは・・・。

この告白は・・・。

 

 

「夢・・・じゃないんだ」

 

 

彼の頬をつねった手を見て言うと、その手を強く掴まれた。

 

 

「ひどいな。人で確認するなんて」

 

 

酷いと言いながら、彼の瞳は笑っている。

 

 

「だって、夢だと思ったから」

 

 

「普通は自分の頬をつねるでしょ」

 

 

「だって、痛いから」

 

 

「酷いなあ」

 

 

微笑みながら、掴んだ僕の手にそっと唇を当てた。

 

 

「好きだよ。君は?」

 

 

手に唇を当てたまま、僕を上目遣いに見上げる彼に、一気に恥ずかしさが増す。

目を逸らし、唇を噛む。

答えは一つしかないのに、言葉が出て来ない。

熱に浮かされたように、ただ頬だけが熱くなる。

 

 

「君が好きだよ」

 

 

言い聞かせるように告白する彼に、胸が切なく鳴った。

そうだ。

僕は何を何を怖がっているんだろう。

始めよう。

先ず一歩踏み出そう。

 

 

「僕も、好き」

 

 

ぱっと勢いよく顔を上げた彼を、月明かりが優しく照らした。