「どうぞお掛け下さい」
低く抑えた声で促され、細かい装飾を施した椅子にそっと腰を下ろした。
意外にも座り心地のいい椅子に安堵して、深く座り直すと、照明を落とした部屋の中を見回す。
明るい外から入って来たときにはよく見えなかったが、存外広い空間に、やはりその職業らしい小物類が整然と並べられている。
『凄いんだ。まるですべて見てるみたいだったんだぜ』
興奮して声を上擦らせた兄から紹介してもらったここに、電話を入れたのは今朝だった。
仕事柄、休みの日が決まっていることがなく、前もって予約を取ることは出来ないが、兄は、時間が出来たらすぐ電話してみろ、と、黒い紙に銀色の文字が妖しげに並ぶ名刺をくれた。
❝占い師J❞
そう書かれた名刺は、それから数ヵ月忘れ去られたように財布の札入れに無造作に押し込まれたままだった。
その間、ことあるごとに思い出しはしたが、休みが取れず今日やっと日の目を見た。
「今朝あなたから電話があることは分かっていました」
「えっ?」
「だから、他の方の予約はお断りしておきました」
頭には黒いベールを被り、顔はやはり黒いフェイスカバーで目の下ぎりぎりまで覆われていて、表情はよく分からないが、ベールの影から僕を見つめる瞳は穏やかな微笑みを湛えているように見えた。
「それは申し訳ありませんでした。兄の紹介だからですよね」
兄は誰にでも好かれる。
それがいくら仕事絡みだとしても、皆、兄の魅力に、何かしてあげたいと思うらしい。
そんな兄の紹介だから、僕を優先してくれただけだろうけど、悪い気はしない。
「違います」
「えっ?」
「お兄さんは関係ありません。ワタクシハ見たくない人は見ないことにしているんです」
そう言って占い師は、今度ははっきり分かるように、声を立てて笑った。
To be continued.....
うーむ( ̄ー ̄)
何で始めてしまったんだろう( ̄ー ̄;
まあ、また気長に付き合ってねーヽ(゜▽、゜)ノ←先をまったく考えてないが