自分を切り売りする仕事は、時に意に染まない事にも耐えなければならない。
反論すれば叩かれ、黙殺すれば好きに解釈され、どちらにしても俺を置き去りにしたまま憶測のみが飛び交う。
きつい仕事だ。
もっとも仕事なんてのは、どれもきついものだ。
それは分かっている。
だから、たくさんの人が仕事の事で、心が俯いてしまうんだ。
それは所謂金銭を含まない仕事も含まれる。
毎日、目覚めて笑顔を作る。
小さな集団のなかでさえそれはとてつもなく大変な仕事で、近しい人に囲まれているからと言って喜びの日々ばかりではない。
近ければ近いほど遠慮もなくなり、近くに居るのに全く心のうつむき加減に気付いて貰えないこともある。
心が悲鳴をあげているにも関わらず、誰からもそれに気付かれず一人涙することもある。
いわば俺の仕事は、そうして俯いた心を、一時でも解放してあげることだ。
皆が俺を見て笑い、俺も皆を見て笑う。
そこに誰かの思惑が介入して掻き乱さない限り俺達の関係は不変だ。
夢を売る。
簡単に言えばそうだが、一夜にして消え失せる泡沫の夢を売っている訳じゃない。
そこには必ず心があり、皆と心を通わせることが出来る稀な仕事でもあると自負している。
だから皆の目が違う方向を向いてしまうのが怖い。
離れている時は尚更だ。
直ぐに会えない今、俺は声をあげることもままならず、ただ静観するしかないからだ。
そして、そんな経験を少なからず持つ仲間と、寄り添って嵐が過ぎるのを待つしかない。
俺が皆の支えならば、俺の支えは彼だ。
子供っぽい笑顔で笑う天使。
距離も時間も関係なく、いつでも身近な存在で、俺の危うい心を時に叱咤し、時には優しく包み込み助けてくれる。
出会ってからずっと彼は変わらない。
彼は揺るがない。
俺達の関係もだ。
どんな憶測が飛び交おうと、変わらないものは変わらない。
変わるのは時代だ。
時の変化は、人の気持ちも変えていく。
新しく刺激的だったものも、いつしか当たり前になり、飽きられ忘れられる。
永遠を誓っても、心に鍵など掛けられず、新しい風が容易に心をさらって行く。
それが悪いことだとは思わない。
それは当然のことで、その常に新しいものを求める気持ちが歴史を作っていく。
でも時に人は過去に引きずられる。
懐かしい思い出を振り返る時、また俺達は表に現れ、心を癒す。
それでいい。
それこそ俺達の仕事の本来の意味に一番近付く時だ。
イコン。
聖画。
俺達の語源は祈るために作られたものだ。
祈りの行為は、永遠の時を生きるだろう。
だが、聖なる画の中の彼らは飽きられ忘れられた。
熱狂的に迎え入れられながら、忘れられた。
それでも一言も恨みも言わず、暗い場所に追いやられようと、顔色ひとつ変えない。
何もしなくても、敬愛の眼差しで見つめられ、一番いい場所に飾られたにも関わらず、時は無情にも彼らを記憶の底に追いやる。
そんな彼らと俺達は同じ意味を持って生まれた。
だからこそ、救いになれるのかも知れない。
踏みにじるがいい。
人の尊厳など、軽いものと思う者は。
俺は微笑む。
俺はイコンだから。
微笑みこそ、俺達の武器。
いつかくるその未来に、俺達は微笑むのだ。
変わらぬ心で俺達を見つめる瞳が有る限り。
微笑むのだ。
Fin.
Iconはアイドルの語源。
イコンはある時期とてももてはやされた。
でも、あきられ、記憶の底に消えた。
アイドルも似たようなもの。
ある時、熱狂的に受け入れられ、そして忘れられていく。
それでも彼らは微笑む。
彼らはアイドルだから。
自分達の意味を知っているから。
ユチョン。
改めて言うよ。
お帰り。