伊良林 | Flog

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Frogの研究者の息抜きblog

--- since 01-06-07 ---

伊良林 正哉の『権力への階段』を読んだ。

「大学院生物語外伝」とサブタイトルにあるように、処女作の『大学院生物語』の続編とも云える作品である。

前作は、小説と呼ぶよりは、エッセイに近いものであったが、本作は、正に小説と呼んで良い作品に仕上がっている。

独立行政法人生命科学研究所が舞台の場である。その理事長にまで上り詰めた山西だが、彼の野望は、その地位に満足せず、何れは生命科学学会の理事になり、更には、日本学士院の会員になることを胸に秘め、其の為に必要な研究業績をあげるべく、研究所を私物化し、支配下の研究員から業績を絞り摂ろうと画策するが、肝心の研究業績の稼ぎ頭である日高と高田の独立を認めざるを得なくなる。理事長の支配から逃れた日高と高田のコンビは、矢継ぎ早に論文を発表し、山西の焦りは益々強くなる。やがて、日高は大学院生の川淵と共に画期的な研究成果を論文に発表する。その業績を、策を弄して、うまく自分のものにすり替えた山西は、そのニセの「功績」で、生命科学学会の理事に推挙された。しかし、これは、山西の悲劇の始まりであり、更なる業績を求められることになった山西は、やがて、踏み込んではならない世界へ・・・・。

前作に比べると、説教臭さや、助長な表現がなくなり、物語がテンポ良く進んで行く、読み易い作品に仕上がっており、作者の技巧上の成長のあとが見られる。

残念なのは、後半に入って、話の展開が早く、言葉を替えて云えば、薄っぺらになり、物語の厚みがなくなってしまった。

実は、前作と本作の間に、伊良林は、 『ある博士の自壊』(日本文学館、2009年)を発表している。これは、上述の「踏み込んではならない世界」の物語であるが、この小品を読んだ感想は、これは一編の作品にするよりは、もっと大きな作品の中のサブストーリーとして使えば、もっと活きるのになぁ、と思ったものだが、正に、『権力への階段』の後半の物語の展開に 『ある博士の自壊』を持って来れば、より良い作品に仕上がったに違いない。

伊良林を個人的に知る身にとっては、日高のモデルが伊良林自身であることは、明白である。その他のモデルの数人も推して知るべしであり、本作は、完全なるフィクションではあるが、現実の世界に、非常に良く似た世界があるのも、また、事実である。その意味で、伊良林の身の上が、少し心配でもある(笑)。

今後も、伊良林の作家としての成長と、研究者としての活躍を、楽しみに見守りたい。

今日のつぶやき

Thu, Mar 18


  • 21:50  上手い、eye catchingなコピー!RT @5goukan: 光る精子で精子競争をリアルに観察する 続きはScienceで 'Glow-in-the-dark' sperm sheds light on sexual selection http://ow.ly/1o3H5

  • 21:40  ん~ん、今は、要らない。 http://oneclip.jp/bzvm6i

  • 15:51  昼飯喰う暇なくて、頭痛がして来た。バナナ喰う。

  • 12:45  花粉症かな、鼻がむずむず。

  • 11:00  久々にBrioche。

  • 05:05  中途覚醒中

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