非対称 | Flog

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Frogの研究者の息抜きblog

--- since 01-06-07 ---

ぼやぼやして夜中を過ぎてしまったので、万歩計の数字がresetされてしまいました。

今日も、ちょっとlabへ出ただけで、基本的に、読み物をして過ごす。

実は、進化や分類を良く分かっていません(←駄目じゃん!)。で、以下は、ちょっと自分用のメモを兼ねて。


我々の身体は一見左右相称に見えます。しかし、例えば、脳は機能的に左右で分化していますし、また、内蔵に関して云えは、心臓は左側に、或いは右肺と左肺ではその胚葉の数が違うと云うように、実は多くの左右非対称性が見られます。

この左右非対称性を規定する遺伝子のひとつにNodalと云うものがあり、現在知られている限り、脊椎動物に於いては、左右軸が決定される時期に身体の左側の或る部分で局所的に発現していることが知られています。

一方、我々が普段眼にするウニの成体は五放射相称です。でも、実は幼生は初期には左右相称であり、更に、後期には、身体の左側に、将来我々が良く眼にする所謂ウニになる基、"ウニ原基"を作り、左右非対称の構造を示すことが知られています。この左右非対称性にもNodal遺伝子が関わっていますが、面白いことに、その発現は身体の右側で起き、脊椎動物とは逆になっています。

発生の過程で左右相称の時期があることから分かるように、ヒト(脊椎動物)もウニ(棘皮動物)も大きな分類では、左右相称動物(bilateria) です。更に云えば、脊椎動物も棘皮動物も、新口動物(deuterostomes、または deuterostomia) です。これは、平たく云えば、発生の過程で、先ず(原口—発生の過程で最初に出来る開口部—から)肛門が造られて、後から口が造られる、と云うこと。

これに反し、旧口動物(protostemes、またはprotostomia) では、(例外もあるが)原口から口が形成される訳です。

左右相称動物(bilateria)の進化の初期に、 旧口動物と新口動物は分岐したと考えられています。つまり、左右総称動物の中には、旧口動物も新口動物も含まれ得る訳です。

旧口動物は、更に、冠輪動物(lophotrochozoa)脱皮動物(ecdysozoa) に分けられますが、これまでに、線虫やショウジョウバエなどの脱皮動物では、Nodal遺伝子が見付かっていません。

今回、 冠輪動物の一種、巻貝でNodal遺伝子が見付かり、左右非対称性に関わっていると云う報告が、去年12/21付けでNatureにonline出版 されていました。


巻貝の成体は、左右非対称であり、右巻きの種類と左巻きの種類(或るいは、両方のタイプがひとつの種に存在するものもあります)が存在します。右巻き代表としてLottia gigantean(実は、コレは平たくて、どうしてコレが右巻きなのか私には良く分かりませんが・笑)、左巻き代表としてBiomphalaria glabrataからそれぞれNodal遺伝子(cDNA)を単離し、発生過程に於ける発現を調べたところ、何と右巻きでは右側で、左巻きでは左側で発現していました。

更に、Nodal遺伝子の下流では、Pitxと云う遺伝子が、Nodal同様の左右非対称の発現をすることが、脊椎動物やウニでは知られていますが、此れ等、巻貝に於いても、Nodalと一致した発現パターンを示していました。

また、B. glabrataに於いて、薬剤でNodal遺伝子の機能を阻害すると、Pitxの発現が阻害され、つまり、左右非対称性が壊され、更に、貝殻の左巻き螺旋が形成されず、真直ぐ筒状に伸びて発生をしたことから、巻貝に於いても、Nodal/Pitxが左右非対称性に関わっていることが分かりました。

不思議なのは、線虫やショウジョウバエなどの脱皮動物では、(Nodal遺伝子はないけど)実は、Pitx遺伝子が見付かっていますが、左右非対称の発現は見られません。

進化の過程で、冠輪動物や新口動物で、Pitx遺伝子を制御するNodal遺伝子がどうやって新たに獲得されたのでしょう?

また、実は巻貝の殆どが右巻きで、左巻きは少数であることから、巻貝の祖先は右巻きであると考えられています。また、棘皮動物(ウニ)では、Nodal/Pitxの発現が右側であることから、大昔の共通の祖先は、右側で此れ等の遺伝子を発現していたものと考えられます。

では、どうやって脊椎動物、或いは、左巻きの巻貝では、此れ等の遺伝子の発現が左側になったのでしょう?不思議です。

更に、単純な疑問ですが、右巻、左巻両方が存在するLymnaea stagnalis(タケノコモノアラガイ) では、此れ等の遺伝子の発現はどうなっているんでしょう?

私は、きっとこの巻貝の左右性にも、Nodalが関わっているんじゃないかと思っていたんですが、実は、一昨年の分子生物学会で、そこのlabのポスター を見掛けたので、NodalやPitxに関して何か分かっているのかを質問したのですが、全然、興味がなさそうでした(笑)。

今回のNature、さすがNipam H. Patelですが、ちょっと詰めが甘い様な箇所が見られます。でも、この位の大物だと、名前だけで通ちゃうんでしょうねぇ、とちょっと僻み(笑)。

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