概要
競馬の血統について、最低限の知識をざっと解説し、その後、日本の血統分布をまとめたうえで、今後の日本競馬の展望を妄想してみた。
・大系統とそのざっくりとした特徴
・日本の血統分布
・今後の日本競馬の展望
血統を知らない頃にこういう記事があればよかったなというものを書いたつもりです。
細かくつきつめればいくらでも細かくできるのが血統ですが、今回はざっくり解説ということで世界的に重要な種牡馬でも日本競馬にあまりかかわりがない場合はカットしています。
血統を全く知らないという人を念頭に説明しているので、血統を知らないという人にこそ読んでほしいです!
来年、再来年と続く、社台SSの輸入種牡馬ラッシュの背景事情についてもできる限り分かりやすく書いたつもりなので来年からの予習にどうぞ。
※本当はミスプロやサドラーからの派生などはもっと細かく記載したかったのですが、それらの派生は日本競馬にはあまり関係ないので今回は記載していません。あくまで血統初心者向けに、日本競馬にかかわりの深い最低限レベルの種牡馬しか挙げていません。
四大系統
欧州の主流血統 ノーザンダンサー系
日本の主流血統 ターントゥ系
日本の芝に高い適性を持つ系統。 サンデーサイレンス(父父父ターントゥ)により日本で圧倒的な勢力を築く。
米国の主流血統 ミスタープロスペクター系統
米国の主流血統 ナスルーラ系
日本の血統分布
ターントゥ系の天下
日本は世界でも珍しく、ターントゥ系が大きく幅を利かせている。対抗するミスタープロスペクター系
日本でターントゥ系に唯一対抗できているのがミスタープロスペクター系の小系統キングマンボ系のキングカメハメハ。
キングマンボ系以外のミスタープロスペクター系は単発的に輸入されるのみで、発展するには至っていない。
キングマンボ系は父サンデーサイレンスの牝馬につけることが出来るという優位性を活かして勢力を伸ばした。
父系としては厳しいノーザンダンサー系とナスルーラ系
世界では大繁栄しているノーザンダンサー系だが、日本では苦戦を強いられている。
ノーザンダンサー系の芝系統は、かつては日本でもノーザンテーストが一大勢力を築いたが、サンデーサイレンスに駆逐された。その後も、ラムタラ、オペラハウスをはじめ、有力なノーザンダンサー系の芝種牡馬が輸入されたが、父系はつながらなかった。社台が導入したハービンジャーも微妙な結果に終わりそうで、父系としてのノーザンダンサー系は日本では厳しい立ち位置。
ノーザンダンサー系のダート系統は、デピュティミニスター系、ストームキャット系が一定の成果は残しているものの、父系として残るかは疑問。
ナスルーラ系は、かつては日本でもテスコボーイ、アローエクスプレス、トニービンなど輸入種牡馬が勢力を築いていたが、これもサンデーサイレンスにほぼ駆逐された。現在はテスコボーイから連なるサクラバクシンオーの仔がわずかに残っているほか、ダート種牡馬として輸入種牡馬が数頭いるのみとなった。
このように日本においてノーザンダンサー系とナスルーラ系は、父系としては発展していない。
もっとも、日本の牝系を語る上で欠かせず、ノーザンダンサー系とナスルーラ系は、母の父として影響力を有している。
〇サドラーズウェルズ系
②ナスルーラ系
衰退一途だったが、米国で復権
〇テスコボーイ系
芝短距離
日本ゆかりのナスルーラ系
テスコボーイ→サクラユタカオー→サクラバクシンオーとつないできたが、父系断絶は避けられないか。ビッグアーサーにはがんばってほしいところ。
これからの日本競馬の血統図
1991年にサンデーサイレンスが輸入されて以来、日本にはサンデーサイレンスとその仔ディープインパクトという圧倒的な産駒成績を誇る種牡馬がおり、この2頭のバトンリレーで輸入種牡馬を駆逐してきた。
しかし、ディープの死亡により、圧倒的な成績を誇る種牡馬はいなくなり、そして日本はサンデーサイレンスの血であふれかえっている。
つまり、非サンデー、非キンカメの血の必要性が高まり、かつ、絶対的な種牡馬がいなくなったことで、海外種牡馬が入るスキが出来ているというのがポストディープ時代の特徴といえる。
これまで、社台グループは、チチカステナンゴ(グレイソヴリン系)、ノヴェリスト(マイナー系統)、ワークフォース(キングマンボ系)、ハービンジャー(デインヒル系)など、優秀なクッションを求めて海外産の種牡馬を導入してきた。
しかし、ハービンジャ―がそこそこの成果を挙げるのみで、その他は父系どころか母の父として残るかも微妙な状況。
これには様々な要因があると思うが、社台が本腰を入れていなかったというのが大きな要因の一つだと思われる。
社台はディープ、キンカメという大種牡馬を抱え、それに輸入繁殖牝馬につけておけばセレクトセールで丸儲けだった。目の前に落ちている大金を捨てて、成功するかもわからない海外種牡馬に良繁殖を回すというのはやはり難しく、ディープ、キンカメが存命のうちは、海外種牡馬の成功を急ぐ動機はそれほど強くはなかったのだろう。
しかし、ディープ、キンカメがいなくなり、そろそろ本気でクッション種牡馬を自前で用意する必要性が出てきるとともに、二大巨頭がいなくなったことで優秀な繁殖牝馬を海外種牡馬に回す、ある種の余裕が出てきた。
さすがにリーディングサイアーを取るような第二のサンデーサイレンスが現れるとは思わないが、海外種牡馬が上位に食い込む活躍できる土壌は揃いつつある。
今、日本競馬は、「優秀なクッション」を求めている。
実際にこの状況は海外種牡馬の導入ペースにも表れている。
これまで社台SSの外国種牡馬の導入ペースは、3年に1頭でも多い方だった。
しかし、18年にドレフォンが導入された後、ディープとキンカメがこの世を去り、それから社台はマインドユアビスケッツ(19年輸入)、ブリックスアンドモルタル(20年輸入)、ニューイヤーズデイ(20年輸入)、ナダル(21年輸入)、シスキン(21年輸入)、ポエティックフレア(22年輸入)と超ハイペースで海外の新種牡馬を導入している。
日高も2019年に、世界的名馬のカリフォルニアクロームを導入した(ラムタラのにおいがするが)。
これらの種牡馬の産駒は、来年からが本格始動となるので、来年以降の一口選びにはこれらのクッション種牡馬の産駒と必然的に直面することになる。
サンデー、キンカメの血を持つ馬同士の次世代種牡馬リーディング争いも見逃せないが、海外産種牡馬の「優秀なクッション」争いも見逃せないのがポストディープ時代の日本競馬。
皆さんはどのクッションがお好みだろうか。
次回は、新規海外種牡馬の血統を概観してみたい。