以下ネタバレ含みますので、未読の方はお気を付けください!








この作品を初めて読んだのがたしか中学生か高校生の時で、25年以上は前になるのですが、てことは四半世紀前!うわー(°_°)

その頃はキングについてあまり知らず、この作品以外では「スタンドバイミー」と当時同じ本に収録されていた「ゴールデンボーイ」を読んだことがあるだけでした。

キングがホラー作家ということもあまりピンときていなかったような。

「スタンドバイミー」もそうですが、この「デッドゾーン」もあまりホラーという感じがしない作品です。

現在のいい意味で猥雑で盛りだくさんでパワフルなキング節とは違う、落ち着いた雰囲気があります。

あとなんと言っても吉野美恵子さんの訳がいいです。

言葉のチョイスやセリフの語尾に味があります。

ジェイムズ・エルロイの「ブラックダリア」もこの方の訳がすごく好きです。

最近はキングの訳は吉野さんではないですが、ぜひまたやって欲しいなあ。

さてこの作品、今回たぶん20回目くらいの再読になると思うのですが、今さらながら気づいたことその①

グレグ・スティルソンの登場早っ!

小説の冒頭はまずジョニーの子ども時代の短いエピソードなのですが、それが終わるとすぐに青年時代のスティルソンが登場。

キングのエッセイ「書くことについて」で、読者は小説のはじめに出てきた登場人物に興味と親近感を抱くというような内容がありましたが、それを考えると早めにスティルソンが出てくるのは計算された構成なんだと思います。

そしてもう青年時代からスティルソン、めちゃくちゃ悪もんです。

地方のセールス回りで訪れた家の飼い犬をついカッとなって虐待。

かなりやばいサイコパスタイプ。

ちらりと父親への妄執、憎悪ものぞかせ、自分はもっと大きなことに向いているなどと考え、あーこりゃあかん奴やーと、数ページの登場シーンですがものすごいインパクト。

このあとは成人したジョニーとセーラの話、そしてジョニーの事故と続き、しばらくスティルソンは出てこないのですが、このインパクトのせいで読者の頭にしっかり残っています。

キングはプロットは立てないで書くと聞いたことがあるのですが、それでこんなに絶妙な構成で物語を組み立ててしまうんですね。

やっぱりすごい!

ではキングの偉大さを噛みしめながら、続いて気づいたことその②

これはこの作品というよりキング作品全般のことなんですが、女性キャラクターの「心の声」について。

「デッドゾーン 」では俺様系元彼のことやジョニーとの関係について、セーラの頭の中で声が聞こえてきます。

たとえばこんな感じ。

「彼はとてもいいひとよ。その点は文句なしだわ。気安くつきあえるし、面白いし、彼ならあなたを泣かせたりしないわ。でも、恋ってこんなもなかしら?」

こんなふうに頭の中で別の人間がしゃべっているような声がする、というのはキング作品は女性キャラクターが多い気がします。

私もたまに頭の中で、いつもの自分ではない声に非難されたり軽蔑されたり、ときにはめっちゃ褒められたりするんですが、これはべつに男女の違いとかではないのかな?

でもキング作品でのそういう描写はとてもリアルな感じがします。

大学時代の元彼に別れを告げられたセーラは社会人になってジョニーに出会い、その時しばらくやんでいた心の声がまたしゃべりだします。

それがきっかけで失恋してから自分がどんな状態だったのか気づくセーラ。

「彼女は突然、深夜に一人ぼっちでアパートに座り、リンゴをかじりながら、別に見たくもないテレビ映画を見ていること、どうしてそんなことをしているのかといえば、考えるよりもそのほうが楽だから、自分自身と自分の失恋のことしか考えられないときは、考えごとをするほどうんざりさせられることはないからだ、ということ気づいた。
それはもう、ものすごいショックだった。」

ここの文章は何度も読んだせいもありますが、もう頭に焼き付いています。

まだ15か16くらいで人生ひっくりかえるような恋も失恋もしたことがなかったのに、最初に読んだときから印象的な文章でした。

私がキング作品を好きな理由はたくさんあるんですが(単純に面白い!とか読みやすいとか多作でたくさん読めるとか毎回忠実なる読者へと書いてくれるとかetc)
理由のひとつはキング作品には本当のことが書いてある気がすることです。

セーラがショックを受けるくだりは、最初に読んだときも、いい年になった今でも本当のことだという気分になります。

キング作品は非現実的な出来事、状況の中での人間の姿がとてもリアルに感じられることが多いです。

私にとってキングの本は純粋に楽しみでもあり、ちょっと大げさですが人生の指針にもなっています。

長くなったので次回に続きます。