小説「ハイスクール・ボブ」 16-5 | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~
 

16 夏仕様
(5)
 6月9日、金曜日 放課後
 理奈は、教室を出ると、制服姿のまま、食堂棟の方へ向かっている。
 食堂棟の2階にある学園美容室に行くためだ。
 理奈も、倫の話を聞いて、アポなしだけど、空いていればと思い、ダメ元で放課後に学園美容室に行ってみることにした。
 食堂棟に着いた。階段を上がると購買部と学園美容室がある。
 理奈は、階段を上がって、食堂棟の2階の廊下にいる。
 廊下を挟んで購買部と学園美容室が向かい合っている。
 学園美容室の廊下側の一部はガラス張りになっていて、廊下から学園美容室の中が見える状態になっている。
 理奈は、美容室の中の様子をチラッと見た。
 美容室内では2人の女子生徒がカット席に座っていてカット中だ。
 時間は午後4時を少し過ぎたところだ。
 カット中の2人は午後4時で予約をしていた生徒だろう。
 まだカットが始まってすぐのようだ。
 理奈は、廊下からガラス越しに待合の長椅子を見た。
 長椅子には誰も座っていない。待ちの生徒はいないようだ。
 理奈は、恐る恐るドアを開けて学園美容室の店内に入っていった。
 理奈にとっては、学園美容室に入るのは、前回のカットの5月7日以来だ。
天草・後藤「いらっしゃいませ。」
 カット中の2人の美容師があいさつをする。
 理奈は、カウンターに向かった。
 カット作業の最中である2人の美容師のうち、後藤佳代が作業を中断してカウンターに向かった。
 カウンターでは、後藤佳代が応対している。
後藤「予約の生徒さんですか?」
理奈「い、いえ、予約してないんですが、・・・今からカットできますか?」
後藤「ちょっと調べますのでお待ちくださいね。」
 後藤は、カウンターのノートパソコンの画面を見ながら予約状況を確認している。
後藤「今日だったら、4時30分からでお受けできますが、どうしますか。」

 4時30分で予約している生徒が一人だけなので空きがあるようだ。
 4時30分なら、今カットしている生徒が終わればすぐに案内してもらえることになる。
理奈「はい、それでお願いします。」
後藤「承知しました。では、生徒番号とお名前を教えてください。」
理奈「1210番、佐竹理奈です。」
 後藤は、カタカタとノートパソコンのキーボードを打ち入力している。」
後藤「はい、1210番、佐竹理奈さん、本日4時30分でご予約受付けました。」
理奈「ありがとうございます。」
後藤「このまま待たれますか。」
理奈「はい、このままここで待ちます。」
後藤「では、来店の受付をしますので生徒証をカードリーダーに通してください。」
 理奈は、生徒証を取出して、カウンター上にあるカードリーダーに生徒証を通した。
「ピッ」
 カードリーダーの上部の液晶画面には現在の時刻と理奈の生徒番号が表示される。
後藤「では、あちらの長椅子でお待ちください。」
 後藤は、カット席に戻り、カットの作業を再開した。
後藤「すみません、お待たせしました。」
女子生徒「大丈夫です。」
 理奈は待合の3人掛けの長椅子に座った。
 理奈は長椅子に座って、カット席の方を見渡した。
 4席あるカット席の2席でカットをしている。
 平日は、日によって違うが同時にカットできるのは2人か3人までのようだ。
 今日、出勤している美容師は、店長の天草 真由美と後藤 佳代の2人のようだ。
 カット中の2人のうち、一人は1組の生徒でもう一人は2組の生徒だ。
 理奈と同じ2組の生徒は、野木 詩織だ。
 詩織はどちらかというとおとなしめな感じの女子だ。
 休み時間も一人で読書しているか、自席で勉強している。
 たまに話をしている相手も同じような感じのおとなしめな女子だけだ。
 悪い言い方をすれば陰キャグループの子だ。
 理奈も同じクラスでありながら詩織とは、ほとんど話をしたことはなかった。
 理奈の座っている長椅子の場所からは、カット席に座っている詩織の後ろ姿と鏡越しにその表情が見えている。
 理奈は、鏡越しに映る真っ白い袖なしのカットクロスにピンク色のネックシャッターを姿の詩織の表情をじっとみた。
 詩織は、鏡越しに理奈と目が合うと恥ずかしそうに視線をそらせた。
 理奈も気まずいと思い、あわてて視線を手元のスマホに向けた。
 詩織のカットは店長の天草が担当している。
 ちょうど、両サイドのカットが終わったところのようだ。
 両サイド以外の襟足や前髪はまだ伸びた状態のままだ。
 詩織のネックシャッターの両肩のところには、1センチぐらいの長さのカットされた毛クズが落ちている。

 天草は詩織の後ろに回った。
 これから後ろの髪のカットのようだ。
 天草は、粗目のコームで詩織の髪の全体を上から下へといて、毛の流れがまっすぐになるように整えた。
 天草は、トレーからヘアクリップを取った。
 天草は、詩織のバックの髪の上のボブの部分を取り、後頭部の左右2か所にヘアクリップで上向きに留めた。
 詩織もこれからのカットの過程がわかっているので不安な表情をしている。
 理奈は、鏡越しに詩織の不安そうな表情をじっと見ている。
 

つづく