小説「ハイスクール・ボブ」 2-(2) | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~


2 入寮
(2)

 理奈とその両親は、寮棟B棟の3階に着き、廊下を少し歩くと「303」と表示された寮室の前に着いた。
 303の表示の下には
「1組  榎本 有紀」 
「2組  河田 倫」
「2組  佐竹理奈」
「1組  森野 京」
 303号室の寮室のメンバーのクラスと名札が掲げられている。
 理奈は、ドアを開けて寮室の中に入った。
「こんにちは」
 ドアを開けると室内には3人の寮生がいる。

 理奈が303号室で一番最後に来た寮生だ。
「はじめまして、佐竹理奈です。よろしくお願いします。」
 理奈は、ルームメイトになる3人にあいさつした。

 理奈の髪型は肩下10センチぐらいの黒髪をお気に入りの白色のシュシュで後ろでひとつに束ねている。

 前髪は、真ん中で左右に分けて大部分を横に流して前の部分だけを少し前に垂らしてシースルー状態にして眉下で切り揃えている。

「はじめまして、榎本 有紀です。よろしくお願いします。」
 有紀の髪型は、肩甲骨下まである長めの髪を束ねずにそのまま自然に垂らしている。
 前髪は、理奈と同じように真ん中で左右に分けて大部分を横に流して前の部分だけを少し前に垂らしてシースルー状態にして眉下で切り揃えている。
「はじめまして、河田 倫(りん)です。よろしくお願いします。」
 倫の髪型は肩より少し長めの髪をポニーテールにしている。
 前髪は、目の前ぐらいの長さの前髪を左右にわけている。
「はじめまして、森野 京(みやこ)です。よろしくお願いします。」
 京の髪型は元々耳が出ていたショートカットだった髪を伸ばしている最中で、髪全体が短く、サイドはようやく耳下ぐらいまで伸び、襟足は、服の襟に付き始めているといった感じだ。
 前髪は、目の上ぐらいの長さの前髪を左右にわけている。
 3人も理奈にあいさつをした。
「あなたの机はこれで、服などの収納スペースはここだから、で、ベッドはここだから」
 榎本有紀が、理奈の使用スペースを教えている。
 机やベッドには、名札が着けられている。早いもの勝ちではなく、あらかじめ指定されているようだ。
 寮室のドアの前で理奈は父と母から荷物のボストンバッグとトランクを受取る。
父母「うちの理奈をよろしくお願いします。」
 父が寮室の3人に頭を下げる。
3人「こちらこそ、よろしくお願いします。」
母「じゃ、お母さんたち、これで帰るから。」
理奈「駐車場まで送っていくわ。」
 理奈は、寮室を出て、見送りのために、両親と一緒に駐車場へ向かった。
 駐車場に着き、父と母はアルファードに乗車した。
母「じゃあ、理奈、元気でね。がんばるのよ。」
 助手席の窓が開いて母が言った。
 父親の運転するアルファードがゆっくりと動き出す。
理奈「お父さん、お母さんも元気でね。」
 理奈は走っていく両親を乗せたアルファードに向かって手を振りながら、両親を見送った。

 その日の夜、理奈は夕食のため、303号室のルームメイトの4人で寮棟の1階にある寮の食堂に行った。
 まだ、入寮式を済ませていないので、食事は寮生一斉ではなかった。寮室単位で食堂に行けば食事ができるようになっていた。
 食堂に着くと、すでに何組かの寮生が、テーブルに着いていて先に夕食を食べていた。
 食堂にいる寮生たちを見ても、みんな肩より長い髪の子たちばかりだ。
 夕食を済ませ、寮室に戻った4人は、初めて4人揃った夜ということもあり、話が盛り上がっている。
 出身中学校のこと
 中学時代の部活のこと
 中学時代の友人関係のこと
 中学時代の恋愛関係のこと
 なぜ、この学校に来たのか
 など、いろいろとお互いのことを知ろうとしていた。
 そしてやっぱり一番気になるのは、髪型のことだった。
理奈「たしか、あさってが一斉カットの日って予定表に書いてたよね。」
理奈「ホームページで見てたんだけど、スクールボブってなんか恥ずかしいわ。今日もここに来た時、上級生の何人かとすれちがって間近で見たけど、自分があの髪型になると実感が湧いてこないわ。」
有紀「あーあ、私も今から憂鬱だわ。切りたくないわ。自分があの髪型になるとやっぱり恥ずかしいし似合わないと思うの。」
有紀は、肩甲骨下まで伸びた髪の毛先を胸の前に持って来て毛先をいじっている。
倫「私もここに来てから、上級生の人を何人か見たわ。でもみんな普通にしてるし、慣れると何てことないのかも。あまり切りたくないけど、規則なんだから仕方がないと思ってあきらめてるの。」
京「私は、元が短いから、そんなに抵抗ないわ。合格発表から今までがんばって伸ばしたんだけど2カ月ちょっとじゃ全然だわ。」
理奈「いいなぁ。京は、元が短いから」
 最初に4人で話し合った時に、お互い下の名前で呼び捨てにし合うことに決めていた。
理奈「そういえば、みんな、中学の卒業式の前はカットに行ったの?」
京「私は、合格が決まって、学校からの案内文を見て伸ばさなきゃって思っていたからずうっと切らずに伸ばしていたんだけど、ショートだからすぐボサボサになっちゃって、さすがにボサボサのままで中学校の卒業式には出られないから卒業式の前に毛先だけカットしたんだ。」、
理奈「私は、去年の11月の文化祭の前に美容室に行って以来、行ってなかったの。そうするとだんだん後ろの髪の毛先の傷んできたので、卒業式の前に美容室に行ったの。そこで毛先の傷んでるところを少し切って揃えてもらったのと、あと前髪を少し軽くしてもらったわ。」
有紀「私は特に行かなかったわ。美容室は年に1回か2回ぐらいしかいかないから。最後に行ったのはいつだったか忘れちゃったわ。」
倫「私も行かなかったわ。最後に行ったのは年末だったと思うわ。」
 中学時代ショートカットだった京以外は、あまり頻繁に美容室に行く習慣がなかった。
 これからは5週間に1回のペースで美容室に行かなければならないことになることは、事前に送られてきた生徒心得や年間予定表などには書かれていたのだが、まだこのときの彼女らにはこれからそうなるという実感はなかったのだ。

 

つづく