小説「ハイスクール・ボブ」 2 | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~
2 入寮
(1)
 そして時間が流れ、4月になった。
 入学式は4月11日だが、寮生活に慣れるため、4月1日から入寮が始まり、入寮式がある4月6日の前日、4月5日までに荷物等を運び込み、入寮を済ませることになっていた。
 例年だと入学式は4月10日だが、今年は曜日の関係で10日が月曜日で始業式と重なるため、11日が入学式だ。
 6日の午後1時から新入生全体の入寮式とオリエンテーションがあるのだ。
 4月5日、午前11時半を過ぎたころ、市街地から学校へ通じる一本の山道、理奈は、父親と母親と共に父親の運転する白色のアルファードで学校へ向かっている。

 前を走る車も後ろを走っている車も行先は理奈の乗る車と同じなのだろう。なぜなら、この山道は、途中の分岐路を過ぎると、尼曽根学園への一本道なのだから。
 理奈はアルファードの二列目の座席に座っている。車窓から見える景色は、深い山道だ。道路の両側の木々の枝先には新芽が膨らみ始めている。
 理奈は、車窓からの流れゆく景色をぼおっと見つめている。
 さっきの分岐路から学園への一本道をさらに30分ぐらい走ると、理奈を乗せたアルファードは、学校敷地内への車両専用門の前に着いた。
 前を走っていたセダンタイプの白色のレクサスが門前の警備員からチェックを受けている。
 敷地内に入るには、学園発行の許可証が必要だ。
 保護者には、3月の入学説明会兼制服合わせ、入寮のための荷物搬送等及び入学式等入学後の学校行事への保護者の出席のため、合格発表の書類の発送時に許可証も一緒に発送されていた。

 レクサスは警備員のチェックをクリアして中に入っていった。
 理奈を乗せたアルファードがゆっくりと前進し、門の前で一時停止した。
 警備員はダッシュボード上に置かれている許可証を見ると、
「どうぞ、入ってください。」
と軽くお辞儀をして、校内に入るよう誘導した。
 理奈を乗せたアルファードが校内に入っていった。
 学園の敷地内に入るのは、1月下旬の受験の時と、3月の入学説明会兼制服合わせの時以来で今回が3回目だ。
 合格発表はwebでの発表だったので、ここには来ていなかった。
 学校敷地内の私道を少し走ると来客用駐車場がある。
 来客用駐車場は、学校行事の際に多くの保護者が利用できるよう多くの台数が駐車できるように広くとられている。
 私道を走っている時にも校内道路の交差点などの要所に学校職員が立ち、最も寮に近い駐車場に誘導している。
 駐車場に着き、車を止めた。
 理奈はドアを開けて車から降りた。
 4月初旬とはいえ、山の中だけに、外の空気はひんやりとしている。
 駐車場から四方を見渡しても、山と校舎や寮棟しか見えない。
 理奈の母は、車の後ろのハッチを開けて、大きなボストンバッグと旅行用のトランクを下ろしている。
 同じように駐車場では新入生と思われる他の女子も大きなボストンバッグやトランクを持って両親とともに寮に向かって歩いている風景が見られる。
 駐車場から少し歩いたところに寮棟が建ち並んでいる。理奈が入るのはB棟だ。学年ごとに棟が決まっている。
 案内文には今日は私服で来ていいと書かれていたので理奈の服装はセーターにジーンズといったラフな感じだ。髪は肩下10センチぐらいの黒髪をお気に入りの白色のシュシュで後ろでひとつに束ねている。
 理奈とその両親は、大きなボストンバッグとトランクを持ってB棟に向かって歩いている。
 途中、駐車場からB棟に向かって歩いていると、ジャージ姿の在校生の何人かとすれ違う。在校生らは、どの生徒もパツンと眉上で真っすぐに切り揃えられた前髪。サイドは耳穴の見える高さで水平に切り揃えられていて、襟足は短く綺麗に刈り上げられている。
 何人かの在校生とすれ違うが、どの生徒も同じ髪型だ。それに切りたてといった感じの生徒を多く見かけた。
 理奈は、髪型のことは、合格発表の通知の時に入学手続きの書類と一緒に送られてきた生徒心得にも書かれていたし、学校案内のパンフレットに出ている生徒の写真や、自宅のパソコンで見たホームページの新入生専用のサイトで見ていたからわかっていたのだが、実際の在校生の姿を見ると、自分も3年間この髪型でこの学校で過ごすことを思うと少し不安になった。
 在校生たちは、理奈と理奈の両親に軽く会釈をして校庭側に歩いていく。
 理奈とその両親は大きなボストンバッグとトランクを持ってB棟の寮棟に入っていった。
 寮棟の入口を入ると、上履きかスリッパに履き替える。

 理奈はここで持って来た自前の寮室用のスリッパに履き替え、両親は来客用のスリッパに履き替えた。
 スリッパに履き替えて少し進むと、もう一枚自動ドアがあり、オートロックになっている。ドア横のカードリーダーに生徒証をかざすと自動ドアが開くようになっている。
 自動ドアの手前の横には、管理人室の小窓とカウンターがある。
 理奈の父親は、自動ドアを開けてもらおうと横の管理人室の小窓を覗き込んだが、管理人室には誰もいない。
 父親は、自動ドアを手で開けようとすると、ドアは手動で簡単に開いた。
 まだ、入寮する新入生たちは生徒証を持っていないので、オートロックは解除されていたのだ。
 自動ドアを過ぎると、管理人室がある。やはり中には誰もいない。
 かつては、管理人室には「寮監」と呼ばれる人が住込みでそれぞれの寮棟を管理していたのだが、寮棟がオートロックになってからは、寮監は寮棟の傍の集会所の中にある管理人室に住込みで3つの寮の管理をしている。
 管理人室の前の掲示板に寮室の名簿が貼り出されている。
 理奈は303号室だ。
 寮棟は3階建てで、1階には、食堂、浴室、炊事場などがある。2階と3階が各寮室と洗面所になっている。
 この寮棟は、数年前に改築でリフォームされているので中は明るくきれいな感じだ。
 寮室は4人部屋で2階、3階に各10室ずつある。
 理奈とその両親は、荷物を持って3階まで上がり、303号室に向かって廊下を歩いている。

 

つづく