クリーム(:Cream)解散後,スーパー・グループと呼ばれた ブラインド・フェイス(:Blind Faith)を結成するも,アルバム 1枚 『 Blind Faith (スーパー・ジャイアンツ) 』をリリースし解散,その後,デラニー&ボニー(:Delaney & Bonnie)を含む,幾つかのグループと活動を共にした エリック・クラプトン(:Eric Clapton).

 そして,1970年春に エリック・クラプトン(:Eric Clapton)は デラニー&ボニー(:Delaney & Bonnie)のベーシストのカール・レイドル(:Carl Radle),ドラマーのジム・ゴードン(:James Beck Gordon),キーボードのボビー・ウィットロック(:Bobby Whitlock)がバンドを脱退することを告げられ,この好機を逃さずに彼らと共に新たなバンド:デレク・アンド・ザ・ドミノス(:Derek and the Dominos)を結成.

 この デレク・アンド・ザ・ドミノス(:Derek and the Dominos)も,ブラインド・フェイス同様に,オフィシャル・アルバムを 1枚のみ残して解散.
 その 1枚が,ゲストにデュエイン・オールマン(:Duane Allman)を迎え,名作 ”Layla” を収録した 『 Layla & Other Assorted Love Songs (いとしのレイラ) 』 であるのは有名な話.
 因みにライブ・アルバム 『 In Concert (イン・コンサート) 』 は,解散後,2年近くしてリリースされたもの.

 そんなデレク・アンド・ザ・ドミノスが 『 Layla & Other Assorted Love Songs (いとしのレイラ) 』 の録音前の 1970年8月1日英国ロンドンはダゲナムのラウンドハウス公演を皮切りに,8月22日デボンはプリマスのヴァン・ダイク・クラブ公演まで行った英国ツアーの 1st レグから,8月14日ウスターシャー州はマルヴァーンのウィンター・ガーデンズ公演をオーディエンス録音にて収録した 『 Malvern 1970 (Beano-173) 』 が,Beanoレーベルよりリリースされました.
 メーカー情報にもあるように大元マスターからコピーされたカセットを使用してのリリースであり,音質アップは当然の事ながら,既発盤と曲順が違っている,つまり既発盤はトレードや流通の過程で,曲順が変更されてしまった.等々,このリリースはちょっとした事件でしょう.

 予想通り,リリース告知半日待たずに
 「 5/23 ★デレク・アンド・ザ・ドミノス「MALVERN 1970」のナンバー入りシール・ステッカー付きは予約完売致しました。お問合せ多数の為、急遽30セット(No.51~80)を用意させて頂きました。
 そして週末には
 「 5/26 ★デレク・アンド・ザ・ドミノス「MALVERN 1970」のナンバー入りシール・ステッカー付きは完売致しました。お問合せ多数の為、急遽20セット(No.101~120)を用意させて頂きました。

 距離感は少し感じられ,少々籠った感はあるものの,年代を考えれば充分な高音質と言えますが,1970年代のブート音源に慣れていない方,またファンの方以外は音質的に少し厳しいかも知れません.
 何れにしてもデレク・アンド・ザ・ドミノスは活動期間が短いだけに,音源が残っているだけで貴重ですし,この時期の演奏だけに悪い訳はありません.それがプレスで聴けると言う事はありがたいです.

 メーカー情報では
 『今週は久々の「エリック・クラプトン・ウィーク」となります。クラプトン音源ではお馴染みのイギリス在住の重鎮テーパーからヴィンテージ・ニューマスターが3つももたらされたからです。
 その先陣を切るのはクラプトン自らがキャリア上最高のバンドと認めたバンド、デレク&ザ・ドミノスの新発掘マスターです!
 1970年8月14日、イギリスの地方都市マルヴァーンの小ホールでのギグをモノラル・オーディエンス録音で収録したのが本盤ですが、テープに添えられていた重鎮マスターのコメントでは、
 「この音源には既発盤が存在するが、今回送ったマスターは、実際に当時、当会場でオープンリールデッキによって録音を敢行した人物から直接受け取ったカセットコピーだ。残念ながら元のオープンリールは60分しかなかったのだが、聴いてみて驚いた。ネット上に上がっている既発音源のどれともセットリスト(ソング・オーダー)が異なっている上に、それらには含まれていないTell The Truthが60秒だけ収録されていたのだから!この曲ではエリックがスライドギターをプレイしている。この曲が本日のラストナンバーだと言っているクラプトンのMCも収録されている。これは歴史的リリースになると思うよ。」
 と記されていました。
 つまり、既発盤のセットリスト(演奏曲順)は何らかの理由で入れ替えられた、間違ったものであったということです。しかも本盤が初収録となるTell The Truthが演奏されていました。まさに歴史的事実を塗り替える発掘マスターだというわけです。ここに既発盤の収録順を記しておきましょう。
   
   1. Country Life
   2. Anyday
   3. Bottle Of Red Wine
   4. Don't Know Why
   5. Roll It Over
   6. Blues Power
   7. Have You Ever Loved A Woman
   8. Bad Boy 

 という8曲収録でした。
 本盤とは全然違います。考えてみれば、クラプトンではなく、キーボードのボビー・ホイットロックをフィーチャーしたナンバーからギグをスタートするというのもおかしなことでした。クラプトンが結成したニューバンド、そのお披露目ツアーのオープニングがサイドメンバーのナンバーであるはずもなかったわけです。
 既発盤は流出した時点で誰かが手を加え、そのまま流通していった別マスターから製作されたと結論付けていいでしょう。本盤のリリースによって、デレク&ザ・ドミノスの真実がまた一つ書き換えられたことになります。

 そして、何よりも本盤に価値があるのは、重鎮テーパーがコメントした通り、録音者のオープンリールテープからダイレクトにコピーされたカセットマスターであるという点です。つまり正真正銘ファースト・ジェネレーションマスターということです。それだけに既発盤の音質など足元にも及ばないサウンドクオリティが保証されていました。
 既発盤の音質をC級オーディエンス録音とするならば本盤はB+級オーディエンス録音かA-級オーディエンス録音レベルまで音質がアップしています。もちろん重鎮のマスターそのものは、文字どおりヴィンテージ級のものだけにサウンド上の欠点が散見するものでした。ピッチは経年により半音の40%~50%程度高い所をふらふらしていましたし、過剰な高音ヒスと低音のベースの唸りもありました。さらに全体の音像はモッサリしたものでした。そしてRoll It Overの5:22時点には音の落ち込み、Bad Boyには右チャンネルにノイズが頻発、音ブレ、Anydayにも音ブレがありました。しかし、これらをことごとく解消したのが当店エンジニアによるマスタリングの成果なのです。既発盤を聴かれるとすぐに気づく、ドラムのスネア、シンバルの人工的で不自然なサウンド。その点を踏まえ、当店エンジニアは原音のナチュラル感の維持をとことん重視し、ドラムの質感、特にシンバルの残響音とスネアの音が人工的になってしまうことを避けてマスタリングを行ないました。元々のマスターも既発盤のそれとは雲泥の差でしたが、それに加えて当店のマスタリングがあったればこそ、「これがあの日の音源?」と思えるほどの音質のグレードアップが図れたのです。

 さて、ここでこの日のギグの貴重度、重要性をお判りいただくため、クラプトンの1970年の活動歴を振り返ってみましょう。

  ・1970年1月
   :デラニー&ボニー&フレンズと共にソロアルバム「ERIC CLAPTON」のレコーディングをLAにて行なう
  ・1970年2月2日~22日
   :デラニー&ボニー&フレンズのメンバーとして北米ツアー 
その後、バンドを脱退し、イギリスに戻る
  ・1970年5月5日
   :イギリス、オックスフォードにて行なわれた旧友スティーヴ・ウィンウッド率いるトラフィックのコンサートに飛入り。
  ・1970年6月14日
   :ロンドン中心街のホール、ライシアムにてデレク&ザ・ドミノスのデビュー・コンサートが開かれる。
  ・1970年6月18日
   :ロンドンにてファースト・シングルTell The Truth c/w Roll It Overをレコーディング
  ≪1970年8月1日
   :初のソロアルバム「ERIC CLAPTON」リリース、シングルTell The Truthもこの月リリース≫
  ・1970年8月1日~22日
   :短期イギリス・ツアー ←★ココ★
  ・1970年8月23日~9月中旬
   :アルバム「LAYLA AND OTHER ASSORTED LOVE SONGS」をマイアミにてレコーディング
  ・1970年9月20日~10月11日
   :ヨーロッパ・ツアー
  ・1970年10月15日~12月6日
   :長期全米ツアー
  ・1970年12月18日
   :オリンピック・サウンド・スタジオでレコーディング中のローリング・ストーンズが開催したキース・リチャーズのバースデイ・パーティに出席。ストーンズと共に「Brown Sugar」のスタジオライブ・バージョンをレコーディングする

 これだけのトピックから単純にクラプトンの動向の詳細を読み取ることはできませんが、この年初頭には、参加していたデラニー&ボニー&フレンズの協力を得て、初めてとなるソロアルバムを完成するも、彼らとのツアーを終えるとバンドを抜け、イギリスに舞い戻ってしまいます。ここからは、クラプトンがサイドマンとしての使命を果たし、自分だけの音楽の追求を目指したことが窺えます。そして6月に元フレンズのメンバーを集めてニューバンド、デレク&ザ・ドミノスとしてコンサート・デビューしていることから、3月~5月の間にバンドを結成したことが判ります。その後、ソロアルバムのリリースと同時にバンドの結束と演奏力を確認するため、短期間のイギリス国内小ホールツアーに出ます。
 ここで良好な感触を摑んだクラプトンは、バンドと共にマイアミに飛び、世紀の名盤「LAYLA~」のレコーディングに入ったというわけです。となりますと、本盤はあの「LAYLA~」のレコーディング以前、そしてファースト・ソロアルバムのリリース直後という、クラプトンが暗中模索ながらも最も情熱を燃やしチャレンジ精神を高めていた時期のライブ音源であることがお判りいただけるのではないかと思います。
結成したばかりのニューバンド。イギリス人は自分だけ。アメリカに単身乗り込み見つけたメンバーと共にどこまで自分のブルースを実現できるのか?レコーディングの期日は迫っている。ライブステージで実力を蓄え、マイアミに乗り込みたい。オーディエンスは自分の新しい姿をどう思うだろうか?このバンドへの評価は?新曲の受けは?クラプトンの心には様々な思いが去来したことでしょう。
そしてクラプトンはニューバンドに自信を見出し、意気揚々とマイアミへと飛んだのです。
 その瞬間を、本来の形でありのままにパックしたのが本盤です。
 ここではリリースしたばかりのファースト・ソロアルバムからのナンバーを4曲、そしてニューシングルの2曲をプレイしています。注目すべきは、ここで既にクラプトンがスライドプレイを披露していたことでしょう。1分少ししか聴けませんが、初収録のTell The Truthでのほとばしるスライドギター!ここではシングルどおりのファスト・バージョンでプレイされていました。一般にはマイアミでの「LAYLA~」のレコーディングで巡り会ったデュエイン・オールマンから直伝されてスライドに開眼したと言われていますが、天才ギタリスト、クラプトンは既にスライドもマスターしていたのです。さらにHave You Ever Loved A WomanとAnydayをプレイしています。この2曲はこの後マイアミでレコーディングすることになるナンバーでした。つまりAnydayは既に出来上がっていたこと、Have You Ever Loved A Womanはクラプトンの強固な意志でレコーディングを想定してライブで既にプレイしていたということが判ります。胸に秘めた熱き想いがこの日のプレイに溢れていると言っても過言ではありません。
 格段のグレードアップを実現したドミノスの貴重音源。本マスターで初めて判明した真のセットリスト。重鎮テーパーの言うように、本盤はクラプトンのキャリアにおける歴史的なリリースの一つかもしれません。初回プレスのみの限定リリースとなりますので、この機会をどうぞお見逃しなく。

 ★今年一番のクラプトン・タイトルです。本邦初公開。』

Malvern 1970 (Beano-173)
 
 Live At Winter Gardens,Malvern,Worcestershire,UK 14th August 1970
 [From Original Masters]

   1. Introduction
   2. Roll It Over
   3. Blues Power
   4. Have You Ever Loved A Woman
   5. Bad Boy
   6. Country Life
   7. Anyday
   8. Bottle Of Red Wine
   9. Don't Know Why
  10. Tell The Truth (Cut Out)
  TOTAL TIME (58:04)

 Eric Clapton : Guitar, Vocals
 Bobby Whitlock : Keyboards, Vocals
 Carl Radle : Bass
 Jim Gordon : Drums

 Roll It Over
 
 Bad Boy
 
 Tell The Truth (Cut Out)
 

[参考]
1970 Tour Dates
June
14 Lyceum Ballroom,London,UK (DM)
    Guest Musicians:Dave Mason

UK Tour [1st Leg]
August
 01 Roundhouse,Dagenham,London,UK
 02 The Place,Hanley,Stoke-On Trent,Staffordshire,UK
 07 Mayfair Ballroom,Newcastle-Upon-Tyne,UK
 08 California Ballroom,Dunstable,Bedfordshire,UK
 09 Mothers Club,Birmingham,UK
 11 Marquee Club,London,UK
    Guest Musicians:Dave Mason
 12 Speakeasy Club,London,UK
 14 Winter Gardens,Great Malvern,UK
 15 Tofts Club,Folkestone,Kent,UK
 16 Black Prince,Bexley,London,UK
 18 Pavilion,Bournemouth,Dorset,UK
 21 Town Hall,Torquay,Devon,UK
 22 Van Dyke Club,Plymouth,Devon,UK

UK Tour [2nd Leg]
September
 20 Fairfield Halls,Croydon,London,UK
 21 De Montfort Hall,Leicester,Leicestershire,UK
 23 The Dome,Brighton, East Sussex,UK
 24 Philharmonic Hall,Liverpool,UK
 25 Greens Playhouse,Glasgow,UK
 27 Colston Hall,Bristol,Gloucestershire,UK
 28 Free Trade Hall,Manchester,UK

October
 04 Redcar Jazz Club,Windsor Ballroom,Redcar,UK
 05 Town Hall,Birmingham,UK
 07 Winter Gardens,Bournemouth,Dorset,UK
 08 University Of Leeds,West Yorkshire,UK
 09 Penthouse, Scarborough,North Yorkshire,UK
 11 Lyceum Ballroom,London,UK

USA Tour
 15 Alumni Gym,Rider College,Trenton,NJ,USA
 16 Electric Factory Theatre,Philadelphia,PA,USA
 17 Electric Factory Theatre,Philadelphia,PA,USA
 21 Lisner Auditorium,George Washington University,Washington D.C.,USA
 23 Fillmore East,New York City,NY,USA
 24 Fillmore East,New York City,NY,USA
 29 Kleinhans Music Hall,Buffalo,NY,USA
 30 Albany State University Gymnasium,Albany,NY,USA
 31 Virginia Beach Dome,Virginia Beach,VA,USA

November
 01 Civic Auditorium,Jacksonville,FL,USA
 05 Ryman Auditorium,Nashville,TN,USA
    ⇒ Johnny Cash TV Show [ABC]
 06 McFarlin Auditorium,Dallas,TX,USA
 07 Music Hall,Houston,TX,USA
 13 University Of Nevada,Reno,NV,USA
 14 Fairgrounds Coliseum,Salt Lake City,UT,USA
 17 Memorial Auditorium,Sacramento,CA,USA
 18 Community Theatre,Berkeley,CA,USA
 19 Community Theatre,Berkeley,CA,USA
    Guest Musicians:Neal Schon
 20 Civic Auditorium,Santa Monica,CA,USA
    Guest Musicians:Delaney Bramlett
 21 Civic Auditorium,Pasadena,CA,USA
 22 Community Concourse,San Diego,CA,USA
 25 Auditorium Theatre,Chicago,IL,USA
 26 Music Hall,Cincinnati,OH,USA
    Guest Musicians:B.B. King
 27 Kiel Opera House,St.Louis,MO,USA
 28 Allen Theatre,Cleveland,OH,USA
 29 Painters Mill Music Fair,Owings Mills,MD,USA

December
 01 Curtis Hixon Hall,Tampa,FL,USA
    Guest Musicians:Duane Allman
 02 Onondago County War Memorial Auditorium,Syracuse,NY,USA
    Guest Musicians:Duane Allman
 03 East Town Theatre,Detroit,MI,USA
 04 Capitol Theatre,Port Chester,NY,USA
 05 Capitol Theatre,Port Chester,NY,USA
 06 Suffolk Community College,Selden,NY,USA







[関連記事]
Marquee 1970(Gift CDR)
 
Second Album Sessions (Gift CDR)