サムライカウンセリング2 大家エリックの55年前の決意 | フラクタル心理学開発者から 心理分析を学ぼう

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フラクタル心理学開発者がお答えします。ご質問をお待ちしております。

サムライカウンセリングは二、三年前の作品です。

(なにを書いたか、私も忘れました…)

今回は、二話目。

全文一挙掲載です。

 

ちなみにマダムマヤのイメージは

LA在住の女優でフラクタル心理カウンセラーの中村佐恵美さんです!

 

ベルエアではないですが、豪邸にお住まいです。

 

なお、文中では「フラクタルライフカウンセラー」となっているのは、

アメリカでは心理カウンセラーというためには正規の資格が必要にな為です。

 

右から2番目↓

↑一番左はパートナーのマイケルさん

 

サムライカウンセリング2

 

大家エリックの55年前の決意

 

登場人物

Fカウンセラー Madam Maya 

David (弁護士 White,70歳くらいの引退した弁護士で、ボランティアで相談に乗っている。実はマダムの友達)

サトル(マダムの弟子で、ボディガードもする。お付きのような存在。いつも袴をはいている。剣道が得意)

ロバート(ロバート)

マイケル・ゴードン(精神科医)

 

第二話登場人物

エリック・ホーキング (70歳。いくつかの不動産を持っている。家主)

メイ(借家人)

ベン(借家人)

セレーナ(借家人)

エリックの妻

エリックの父

エリックの母

エリックの子ども時代(5歳)

エリックの妹(子ども)

エリックの弟(子ども)

その他、港の町の貧しい人々

 

シーン デービッドの弁護士事務所

(300sfくらいの一部屋で、ソファセットがあり、隅にデスクと、向かい合った椅子)

 

エリック、息を切らして弁護士事務所に飛び込んでくる。怒りと焦りに満ちた様子。見るからに高血圧。

 

デービッド: お待ちしておりましたよ。ホーキングさん。精神科医のマイケルのご紹介ですね。まあ、おかけになってください。じっくりお話を伺いましょう。

(二人ともソファに座る)

 

エリック: まったく、世の中は本当に困ったものです。(汗を拭きながら)私はアパートを5つ持っているんです。昔は家電の小売業をしていて…、お金がたまると小さなアパートを一つ買い、2つ買い…そして、今は小売業を引退して、5つのアパートの賃貸料で収入を得ています。…いや、得るはずだったんです。ところが…。

 

 

[挿入 エリックの回想]

シーン エリックのアパート1。エリック、アパートの前で、紙をもって住人に遠慮がちな口調で話している。

 

エリック : セレーナ。あんたが芸術家の卵だっていうから、応援してやろうと思って、家賃を相場の半額にして俺は今まで支援してきたんだ。でも、もう3年も同じ状態だ。芸術家と言っても、実質は君は3年間カフェのウエイトレスだ。ここの家賃は1200ドルだよ。悪いけど、もう半額で貸すことはできないよ。私にももう余裕がないんだよ。先月から家賃は通常通りの1200ドルにするという書類にサインしたよな? 悪いけど、それが払えないんなら、出て行ってもらうしかないんだよ。今月で契約は終わりにしてもらうよ。悪く思わないでくれ。

 

セレーナ : そんな、無茶を言わないでください。狭い部屋に移ったら、どこで絵を描けばいいんです? (自分の部屋を見せる。ごちゃごちゃとガラクタのような絵やオブジェがある)私の作品や画材を置くスペースがある部屋なんて、ほかにはないわ。今の私がまともに払えるくらいのアパートじゃ、狭すぎて友達だって泊まれないし…。インスピレーションがわかないと、絵は描けないんです。
 

エリック : 俺にはあんたを養う義務はないんだよ。悪いけど、出て行ってもらうしかないんだよ。俺にも生活がある。この家賃で、俺は食べていっているんだよ。あんたがお金を払ってくれないと、俺たちのせいかつが危ないんだよ。わかってくれ。

(エリック、そういいながら、申し訳なさそうに下を向く)

 

シーン エリックのアパート2。エリック、自分のアパートの中に入って、ベッドに横たわっている借家人を見舞っている。

 

ベン   : 悪いね…、エリック。働かなきゃいけないのは、わかっているんだよ。でもね、体がどうにもならないんだ。医者に行こうにも、金がない。情けないよ。生活保護の世話になるなんて…。

 

エリック : 運が悪いよな、ベン。あんたはパテントをいくつか持っているのに、生活保護なんてな。

 

ベン   : 売れなきゃ1円にもならないんだよ。残念だ。どれも本当に良いものなんだがな…。なんで俺はこう運が悪いんだろう。

エリック : 考えてもしかたないさ。あんただって、好きで病気になっているわけじゃない。家賃は払えるようになったら払ってくれればいいよ。(言ってはみたものの、暗い顔になる)

 

 

[挿入シーン エリックの回想]

シーン エリックのアパート3。エリックがドアを叩いている。ドアが開く。

 

メイ  : 聞こえてますよ! そんなに叩くとドアが壊れるじゃない。

エリック: メイ。家賃を払ってくれ。何回電話しても払わないってどういうことだ。ここは私の家だぞ。なんで家賃を払わない人に家を貸さなくちゃいけないんだ。家賃を払わなきゃ。出て行ってもらうしかない。もう7か月分たまっているんだ。6300ドルたまっているよ。もう我慢の限界だよ! 今週中に出て行ってくれ!

 

メイ  : そんなこと言ったって…。私はどこにも行くところがないんですよ。どこに行けっていうの? 私だって家賃を払いたいわ。でも、見てちょうだい。私はこんなに一所懸命働いているけど、生活していくのがやっとなのよ。家賃だってもちろん払わなきゃいけないのは知っているわ。全然払っていないわけじゃないでしょ。こないだは、150ドル払ったわよ。それはちゃんと勘定してくれているのよね? 

 

エリック : あんたが行くところがなかろうが、そんなことはどうでもいい。こっちのほうが困っているんだ。あんたに家を貸して、今度は俺がどこかに出て行かないといけないことになってしまう。いい加減にしてくれ! 今週中に出て行かないなら、こっちにも考えがある。あんたを訴えてやる! もう我慢の限界だ! 

 

メイ  : ちょっと待ってよ、エリック。あんたには申し訳ないと思っているわ。でもね、あんたは言っていたわよね。お父さんの遺産が入ったから、しばらくは大丈夫だって。だから、もうちょっと待ってちょうだいよ。

 

エリック: 俺が遺産をもらおうが、あんたに関係ないだろう! なんで親父の遺産で、あんたを養わなきゃいけないんだ。待っていたら、全部耳をそろえて6300ドル払うっていうのか? どうせ、家賃を払わずに出ていくのを伸ばしているだけだろう! もうだまされないぞ。今週中に出ていかなければ、警察に訴える! いいな! 俺は本気だぞ!

 

メイ  : 本気で私を追い出そうっていうの? なんてひどいことを言うの? 行き場のない私を追い出すなんて! そんなの人間のすることじゃないわ! 

 

エリック : 馬鹿を言うな! あんたを今まで住まわせてやっていた俺は、この世で一番あんたにやさしくしてやった男だよ。それを恨むなんて筋違いだ!

(エリック、腕を振り回しながら、腹を立てて去っていく)。

 

[挿入シーン終わり]
シーン デービッドの弁護士事務所

 

エリック : 結局、5人のうち3人はこんなふうに、家賃が入ってこないんです。メイとセレーナには出て行けって、言ってはみたけど、そのあとなんの変化もなくて…。俺もだらしがない。本気で裁判に訴えないといけないと考えています。あとの二人は市の借り上げだから家賃は半分、市から出ています。だから問題ないとは言え、結局は自分一人では払えない人たちですよ。なんでこうなったんだか…。まだ三軒の家のローンが残っているし、家賃がもらえなきゃ、こっちは毎月赤字ですよ。セレーナはともかく、まさかベンやメイがお金を払わなくなるとは思いもしなかったんです。店をやめてアパートを貸し始めたころは、まさかこんなことになるとは…。毎日このことで腹が立って仕方がない。貧しい人たちに手ごろな家賃の家を提供したくて貸アパート業を始めたのに、こんなにつらい思いをさせられるとは…。最近は頭痛や動悸がして、こっちが病気になりそうだ。なんとかしたいんです。時々精神状態がすごく悪くなるので、ゴードン先生に薬をもらっていましたが、ゴードン先生にこちらを紹介されたんですよ…。お力を貸してくださるとか。

 

デービッド: ふーむ…(あごを撫でて、考えている)。もちろん、法的に彼らを訴えて、警察に追い出してもらう、ということもできますが。…あなたには精神的にむずかしそうですね。

 

エリック : えっ、どういう意味です?

 

デービッド: つまり、どうも追い出すことに罪悪感を感じて厳しくできない、という様子ですよ。

 

エリック : まあ、そう言われるとそうなんです。周りの人にも言われますよ。「どうしてもっと厳しく言わないんだい? そんなの、向こうが甘えているだけじゃないか。払えない人は、出て行ってもらうって、当然だろう」とね。でも、私も妻も、どうにも強くいえなくて。ベンは病気だし、セレーナはまだ若いし、かわいいし。まあ、さすがにメイには言えるようになりましたけどね。「お前まで甘えるなよ!」という怒りが出てきて…。アパートはみんな、別々のところにあるから、別にみんなで結託してお金を払わないわけじゃなくて、たまたま全部重なってしまったんだと思いますが…。
やっぱり政府が悪いんですよね。セレーナだって、いい仕事がないと言っているし、メイは自分には教育がないから払えないのはしかたがないと言うし、ベンは、医者が高いから、早めに医者に行くことができなかったので、悪くなってしまったんです。みんな頑張っているけど、うまくいかないんです。貧乏は自分ではどうしようもない。

 

デービッド: ふーむ。なるほど…。(同情したかのようにうなづく)

 

エリック : (ふと思いついたように)あなたもそんなことがあるんじゃないですか。一所懸命仕事をしても、相手がはらってくれないとか…。いや、今は貧しい人のために無料で仕事をしていらっしゃると聞きましたが…。

 

デービッド: いや、うちは貧しい人のために無料でやっているわけではありません。お客は自分の好きな額の小切手をあとで送ってくれるんですよ。問題が解決したときにね。支払いがない人に特になにも言いませんが、お金持ちはびっくりする金額を払ってくれますから、収支は合うんです。

 

エリック : はあ、なるほど。そうでしたか。

 

デービッド: お子さんはいらっしゃいますか? 

 

エリック : ええ、二人います。もう一人前ですよ。それがなにか?

 

デービッド: あなたがお子さんになにかしても、あまり感謝されないのではないですか? それどころか、逆にやったことで恨まれたり…。

 

エリック : そうなんです。うちの息子も、私が車の頭金を出してやって、あとの支払いは自分でしろというと、もう、「なんで全部出してくれないんだ」なんて言っていましたよ。うちの女房も似たようなところがあって、旅行に連れて行っても「ホテルのランクが下だった」とか、「ビジネスクラスに乗りたかった」とか、文句が多くて、ちっとも感謝しませんよ。だから、もう連れて行かなくなりましたけどね。…考えてみたら、私はいつも損な役回りだ。周りの人にいろいろやってやっているのに、なぜか感謝どころか、文句のはけ口になっているような気がします。

いやいや、こんなことはどうでもいいんです。とにかく、たまった家賃を払ってもらいたいんですよ。

 

デービッド: そうですね。お金をとり返さなくてはいけませんね。しかし、ちょっと問題があるんです…。(腕を組んだまま、エリックをみつめる)

 

エリック : それはなんなんですか?

 

デービッド: 私の経験では、あなたのような家賃の取り立てに困る家主は、今の借家人が去ったとしても、同じような問題をまた起こしてしまい、結局、いつまで経っても家賃の回収で頭を悩ませるんです。そして、新しい借家人がなかなか入らない、という問題も生じることがあります。

 

エリック : それは困ります。なんでそうなるんですか? 追い出した借家人がネットで悪口を書くとか? 

 

デービッド: いいえ。そういうことではありません。私が説明するのは難しいですが…。しかし、あなたとしても、同じ問題が続くのではいやでしょう。ですから、根本的な解決を考えてみませんか?

 

エリック : それはもちろん、そうできるとうれしいですが…。根本的な解決というのはなんなんです? 家を全部売ってしまうとかですかね?

 

デービッド: いやいや。そういうことではありません。借家人だけではなく、文句の多い奥さんや息子さんも同時に、根本的に解決してしまう、ということですよ。(にやりと笑う)

 

エリック : そんな魔法みたいなことがあるものですかね…(言いながら、デービッドが差し出した名刺を受け取る。それには、フラクタルライフカウンセラー、マダムマヤと書かれていた)

 

エリック : フラ…フラ…クタル…ライフカウンセラー?(きつねにつままれたような顔で、首を傾け、きょとんとする)

 

シーン ベルエアの豪邸。エリックは車に乗ったまま門で呼び出しボタンを押す。

 

ロバート :どうぞ。(ゲートが開く音)

 

エリック : (車で入りながら、独り言)はあ~。俺もこんな家に住んでみたかったな~。

ゲートを抜けて左のガレージに車を止める。玄関に入る。

 

ロバート : エリック・ホーキング様ですね。こちらです。奥さまは奥においでです。

大きな家に入っていく。りっぱな玄関ホール、シャンデリア、赤いカーペットの敷かれた階段。真ん中に美しい桜の盆栽。奥田玄宗の大きな日本画(桜)。ゴージャスだがどこかエキゾチックなロビー、リビングなどを通り抜けて、さらに奥へ。

 

エリック : これはすばらしい。(心の声: ここは7億円くらいかな…。マダムマヤとはいったい誰なんだ?)

 

ロバート : 恐れ入りますが、ここからは靴をお脱ぎください。

 

エリック : ハ? ハア…(靴を脱ぎ、スリッパに履き替える)

 

目の前にはふすまの部屋。それを縁側を歩いて回り込み、その奥の部屋へ。

縁側に面したふすまは空いており、広い洋間、真ん中にはりっぱなテーブルが。そこに、日本人の美しい女性が座っている。とても気品があり、知的な感じ。

 

ロバート : 奥様、お客様をお連れいたしました。

マダム、うなづく。エリック、マダムの正面に座る。ロバートは去る。エリック、マダムをしげしげとみる。

 

マダム  : デービッドは昔からの知り合いです。あなたのことは彼から聞きましたわ、ミスター…。

 

エリック : エリックと呼んでください。いやはや、大変なお住まいですね。私もこんなところに住みたいものだ。

 

マダム  : あなたのお父様は、なかなかの資産家だったのではありませんか? 

 

エリック : 資産家、と言えるかどうかはわかりませんが、ある程度の財産を残してくれましたよ。父は会社を経営していました。…でも、実は今、遺産の件で兄弟ともめているんです。あ、どうして父が資産家だと?(きょとんとして)

 

マダム  : (微笑んで)そのお話を続けていただけますか?

 

エリック : ええ、いいですとも。私は長男で、弟と妹が一人ずついます。父は3年前に亡くなり、遺産を母が管理しています。母ももう93歳なので、そろそろ兄弟で遺産をどうするか、という話をしているんですが、みんな欲張りで、「お前はもうアパートを5つも持っているから、いらないだろう」と弟が言うんです。弟はうつ病でもう10年くらい働いていません。妹は昼間は会社員ですが、夜はわけのわからない音楽をやって、「自分は歌手だ」って言っていますよ。でも、お金なんか稼げてはいないんです。二人とも豊かではないし、結婚もしていないので、老後が心配なのか、「必要な者がお金をもらうべきだ。お前には遺産は必要ないだろう」と私に言うんです。一生懸命働きもしないで、何様だか。とんでもない連中ですよ」

 

ロバート : (お茶のセットを持ってくる)奥様、お茶をお持ちいたしました。(二人に紅茶を出す)

 

マダム  : (優雅にうなづく。そして優雅にお茶を飲みながら、エリックに)つまり…、あなたのまわりには、たいして一所懸命働きもしないのに、偉そうに一所懸命やっていると言い張る人、そして、なにもしていないのに貧乏だからと言って、お金を少しでも多くもらおうとする人、そして、世話をしてもらっているくせに、感謝もせず、それどころかまだ文句を言う人が何人もいる、ということですね。

 

エリック : その通りです。まったく困ったものだ。うちの借家人のセレーナも、今まで半額で住まわせてきたのに、それが当たり前になってしまって、出ていけと言うと、まるでこちらが悪い人のようだ。3年間も私は600ドルを毎月与えてやったのと同じだというのに。ええと、いくらかな。約2万ドルくらいですよ。うわ~、俺は2万ドルも彼女に与えてきたんだ! 本当にばかばかしい! なのに、俺が困っていると言っても、出て行って俺を助けようともしない! 荷物がどうとか、友達を泊められないとか。結局、自分のことしか考えていないんだ、あいつは。

 

マダム  : あなたは、自分の現実を変えたいのですよね?

 

エリック : ええ、そうですとも、マダム。だから、裁判を起こして…。

 

マダム  : あなたは今、自分の夢がかなっているんです。

 

エリック : えっ? 自分の夢がかなっている?

 

マダム  : そうです。あなたは自分がなりたかったものになっています。あなたの人生は、あなたの望みどおりになっていますよ。

 

エリック : アハハ。そんな馬鹿な。いくらなんでも、そんなことがあるはずが…。アハハ。そんなばかばかしい。私がこんな人生を望むものか!

 

マダム  : あなたはそれを望んだ覚えがないかもしれませんが、でも、貧乏な借家人たちに困るのは、確かにあなたの望んだ結果です。だから、あなたの心の中にあるあなたの夢を変える必要があるんです。

 

エリック : (いぶかしそうに)変えるって、どうやって?

 

マダム  : 誘導瞑想を使います。あなたの頭の中に入って、あなたがそんな夢を見ないようにするのです。そして、別の夢に変えます。すると、あなたは貧乏な人に困ることがなくなります。

 

エリック : (むっとして)マダム。失礼ながら、あなたは私の状況がわかっておられないようです。私は精神科医のゴードン先生のところに行っていましたが、頭がおかしいわけじゃありません。私の頭の中を変えたって、現実はなにも変わりませんよ。これ以上、セレーナやメイにやさしく接するつもりはありません。私に必要なのは、弁護士や用心棒ですよ。私は間違ったところに来てしまったようです。

 

マダム  : いいえ。あなたは一番良い場所にいらっしゃっていますよ。こんな言葉をご存じないですか? 「思考が現実化する」つまり、あなたの頭の中にある思考が、積もり積もってあなたの現実になるのです。その思考とは、あなたの望みです。つまり、あなたの夢なのです。

 

エリック : もうたくさんですよ、マダム。私は瞑想なんか、興味ありませんね。

 

ふすまがバッと開き、そこから袴をはいたサトルが出てくる。竹刀を持っている。

 

サトル  : (すたすたと歩いて近づき)では、帰るがよい。

 

エリック : (たまげて)えっ。なんなんです、あんたは…。

 

サトル  : マダムは無駄な時間を使う余裕などないのだ。

 

エリック : (マダムに向かって)なんですか、このサムライのような人は…。

 

マダム  : (くすくす笑って)失礼。これは私の弟子です。サトル、ホーキングさんをお送りしなさい。

 

サトル  : はっ(マダムにお辞儀をする。そして、エリックを追い立てる)

 

エリック : やれやれ…。おじゃましました。

(エリック、帰っていく)

(出ていくエリックの車をモニターで見送っているマダム。そこへサトルが戻ってくる)

 

サトル  : マダム、あの男はまだまだ準備ができておらぬ様子です。デービッドのやつ、すぐにマダムに面倒なやつを送り込んで、おもしろがっている。俺がひとこと文句を言ってやります。

 

マダム  : あら。いいじゃないの。少なくとも、今日は借家人と彼の弟妹、奥さまとお父さまの全部を彼の頭の中でひとまとめにしておいたわ。しばらくすると、問題をはっきり認識するでしょう。…サトル、生け花の用意を。庭のデンファーレを数本。

 

サトル  : はっ、ただいま。(お辞儀して、庭に駆け下りていく)

 

シーン/ エリックの家。

(書斎のクロゼットの奥から、なにかを探している様子。そこへ妻アンがやってくる)

 

エリックの妻: あら、あなた、何をしているの? こんなに散らかして…。

 

エリック : 若いころの日記を探しているんだよ。ええと。あの日記は…。借家人を追い出す前に、ママが亡くなってしまうからしれないから、ママに遺言書をつくってもらわなきゃな。昔、ママが俺に家を残してくれるって言ったんだ。確か、日記にそれを書いたような覚えがあるから、探しているんだよ。どんな経緯でそういったんだか思い出そうと思ってね。

 

エリックの妻: ねえ、あなたは一番上なのよ。弟や妹の世話もしてきたわ。それなのに、お母さんは平等に分けるっていうの? そんなの許しちゃだめよ。

 

エリック : わかってるさ。俺は絶対に負けるものか。親父の財産を、あんなぐうたらどもに与えるものか。

(妻、去っていく。エリック、日記を一冊みつける)

 

エリック : あった…、いや、これはもっと古い日記だ…。中学生のときのだ。よくこんなものを持っていたな。なんだ、こりゃ。へたくそな字だな。

(ぺらぺらとめくっていたが、あるところで目が止まる)

 

エリック : なに? 「僕は貧しい人にただで家に住まわせてあげるんだ」…だって?! 15歳の時に、こんなことを考えていたのか? 「僕が大人になってお金持ちになったら、病気の人やお金のない人に、僕が建てた家を提供してあげる。そして、みんなの世話をしてあげるんだ。そしたらみんな、僕に感謝してくれる…」ハア~!!? なにを考えているんだ、馬鹿野郎め! そんなことしてみろ、感謝されるどころか、俺が金に困っても、開き直って出ていきゃしない。そして、反対に俺を悪者扱いするんだぞ! 貧乏人に親切にして、喜ばれるのは数か月だけだ。あとは当たり前みたいな顔をされて、ずっと吸い取られるんだぞ! まったく俺はなにを考えていたんだ…。

 

[挿入シーン] エリックの回想

 

マダム  : あなたは今、自分の夢がかなっているんです。

(それを思い出して、ハッとするエリック)

 

マダム  : あなたはそれを望んだ覚えがないかもしれませんが、でも、貧乏な借家人たちに困るのは、確かにあなたの望んだ結果です。だから、あなたの心の中にあるあなたの夢を変える必要があるんです。

 

[回想シーン終わり]

 

エリック : こ、これだ! すっかり忘れていたが、そういえば俺は、こんなことを考えていたっけ! もう55年も前だって言うのに、この夢がかなったっていうのか?

いや、まさか! そんなことがあるものか! 

いや、待てよ…。

(青ざめるエリック。いろいろなことが思い出されてくる)

 

エリック : そうだ。むかし事故に遭った時も、子どものころによく遊んだ車のゲームに似ていると思ったんだ。それから…、メイのアパートは、子どものころに見た絵の中に描いてあった家にそっくりだったから、買ったんだ…。ええと…。

いや、まて。思考が現実化するだって? そんなわけ、ないじゃないか。もしそうなら、俺はもっと幸せになる夢をたくさん見たはずだぞ。なのに…。いや、でも…

 

 エリック、まじまじと日記の文字をたどる。

「僕は貧しい人にただで家に住まわせてあげるんだ」

 また別のページを開く。

「僕の夢は、いつか貧しい人たちを集めて、村をつくって、町長になることだ」

 

エリック : (日記から目を上げて、茫然として)こんなこと、今まで思い出しもしなかった。俺は今、とんでもないことに気づいたぞ…。俺の夢が現実化していたんだ!!

 

シーン マダムの家 洋間の縁側

 

サトル  : (縁側の柱にもたれかかって不機嫌そうに)あいつめ、また来おって。こないだは、「マダムは状況がわかっていない」とか、「興味ない」などと無礼なことを言っておったくせに。

 

ロバート : (お客を案内したあと)ああやって、一度帰らせるのが、マダムのやり方なんだよ。(ニマリと笑う。そして、すたすたと去る)

 

サトル  : ふん! マダムの価値がわからない奴は助ける必要なんかないんだ! 

(庭からせせらぎと鹿威しの音)

 

シーン マダムの家 瞑想室(窓がない小さな部屋)

エリックがソファに座っている。マダムはそばの椅子に座っている。

 

マダム  : では、目を閉じてください。ゆっくり呼吸しましょう。息を吐くごとに、深い意識に入っていきます。

 

マダム  : あなたは子どものころから、「貧乏な人を助けたい」と思ってきました。そして、今、それが周りに現実化しています。あなたの頭の中には、たくさんの貧乏な人たちがいます。それがあなたの頭の中から投影され、あなたのまわりに貧乏な人たちをつくってきました。これから、あなたの頭の中を見ていきます。

 

エリック : (目を閉じて、心の声を聴いている)俺の頭の中に貧乏人がいる? んなわけないだろう。まさか…。

 

マダム  : では、頭のてっぺんに扉があると思ってください。あなたはとても小さくなって、その扉をこれから開けて、中に入るところです。準備はいいですか? 

では、扉を開けて中に入りましょう。

 

エリック : うわ~!! こ、これは…(目を閉じたまま絶句する)

 

マダム  : なにを見ていますか? 

 

エリック : 大量の貧乏人です! うわ~、うじゃうじゃいます。若いくせにホームレスみたいなやつとか、よろよろした病人とか、すごいです。…ああ、これは…。思い出しました。実際に、この人たちを見たんです。

 

[エリックの回想シーン] 55年前の港の市場の近くの広場。たくさんの人がぞろぞろと歩いている。

声だけ現在で、ビジュアルは過去。シーンは次のとおり。

 

マダム  : それはいつの時ですか?

 

エリック : ええっと…、5歳だったかな、6歳だったかな。父につれられて、車で港の近くの市場のそばに行ったんです。そしたら、今まで見たこともない貧しい人たちがぞろぞろしていて…。そこで、信号待ちをしていたら、貧しい女が近づいて、赤ちゃんを見せながら、父に「旦那様、1ドルお恵みを」と言ったんです。俺はまだ子どもで、恐ろしくて恐ろしくて、すごく怖かったんです。女がゾンビに見えたんだ。そしたら、親父は、女に手を振って、あっちへ行けって言ったんです。車の中からだから、聞こえなかったかもしれないけど。俺はただでさえ恐ろしいのに、父がそんなことをするもんだから、余計に怖くて泣きそうになった。たくさんの貧乏人が車に押し寄せてきて、ゾンビのようにみんなが襲ってくるような気がしたんだ。

親父は不機嫌そうに車を進めていただけだけど、俺はショックでショックで…。なんだかおそろしいことをしてしまった気がしたんです。

 

(以上、映像はこの会話とおりのシーン。次は、部屋にいるマダムとエリック)

 

マダム  : そうですか。とても怖かったんですね。

 

エリック : こんなこと、ほとんど忘れていました。でも、今、すごくはっきりと思い出しましたよ。恐怖だったんです。

 

マダム  : では、その時の自分をイメージしましょう。

(五歳のエリックが暗い部屋の中で泣いている様子)

 

エリック : ああ、凍り付いて泣いています。

 

マダム  : では、大人のあなたが抱きしめてあげてください。そして、もう大丈夫だよ、と言ってあげてください。

(大人のエリックが子どもの自分を抱きしめる)

 

エリック : もう大丈夫だよ…。もう大丈夫だよ…。

(子どものエリックが大人のエリックに抱きつき、目を閉じて安心した様子)

(シーン、サトルが柱に寄り掛かったまま、庭を見ている。鹿威しの音、せせらぎ、鳥の声)

 

エリック : なんだか心が落ち着いてきました。この自分が恐怖から、貧しい人を助けなきゃと思っていたんですかね…。

 

マダム  : いいえ。それだけではありませんよ。この子は落ち着いてきたようですから、お母さんのいる場所に連れて行ってあげましょう。…さて、あなたはお父さんが好きではないようですよ。お父さんは悪い人だと思っているようです。ですから、これからそれを一番最初に思ったシーンへと移動しましょう。

 

エリック : えっ、もっと前でしょうか。

 

マダム  : 目の前に扉があります。その扉の向こうには、あなたが一番最初にお父さんは悪い人だと思ったシーンがあります。では、扉を開けましょう

 

エリック : あ…。

 

[挿入] シーン エリックの子どものころの家。

(自分は長男で、偉そうにしている。おもちゃを弟や妹から取り上げている。二人とも泣いているので、家はうるさい)

 

母    : エリック! どうしてそんなことをするの。ちゃんとおもちゃを貸してやりなさい。

 

エリック : なんでさ! これは僕のおもちゃだよ。僕のものに触るな!

 

母    : エリック!

 

父    : (妻の声を聞いて、別の部屋から出てきて)エリック! お前はなんて欲張りなんだ! いい加減にしなさい。毎日毎日、お前はいつも弟や妹を泣かしているじゃないか!(おもちゃを取り上げて、弟や妹に渡している)

 

(回想シーン終わり)

 

エリック : 悔しいです。これは僕のおもちゃなのに。弟と妹に、母もおもちゃも全部取られた気がして…。そのうえ、父に「欲張り!」と怒られて…。悔しいです。

(エリック、つらそうに語る)

 

マダム  : あなたはその時、お父さんのことをどう思いましたか?

 

エリック : 父はいつも怒るんです。父に欲張りだと言われて…。悔しかったんです。父に復讐したくなりました。だから、そのあとで貧しい人を見たとき、父が乞食の女にお金を与えなかったのを見て、父がケチだと思ったんです。僕のことを欲張りだと言ったけど、父のほうがケチだって、言いたかった。父を見下したくて、いつかあの人たちを僕が助けてやるって考えたんです。何もできないくせに、父よりも勝ちたかったんだ。だから、貧しい人に親切にすることなら、できると思った。

 

(挿入シーン/ 五歳の自分が運転する父を横目で見ている。ケチで冷たい人だと軽蔑してる。子どものエリックが弟や妹に憎しみの目を向けている。そのシーンに現在の声がかぶさる)

 

エリック : とんでもない馬鹿さ加減ですね。本当に情けないです。父は正しかったのに、父に反抗していたんだ。それに、いつも弟や妹をいじめていました。母親やおもちゃをとられたという恨みをずっと持っていたんです。こんな自分が恥ずかしくもあった。だから、余計に善人をやりたくて…。

 

シーン マダムの部屋

 

マダム  : この子を目の前にイメージして、この子に教えましょう。

 

エリック : 何を言えばいいですか? 頭がまだよく動いていないみたいで、何を言っていいかわかりません。

 

マダム  : 私が代わりに言いますから、伝えてください。

 

シーン (子どものエリックと大人のエリックが向かい合う。声はマダムの声がかぶさる)

 

マダム :「お前は本当に欲張りだったね。そして、自分が人から奪いたいから、自分が弟や妹に奪われたって思っていたね。お母さんやおもちゃを奪われたって思ったんだね。悔しかったね。そして、お父さんに欲張りって言われたとき、悔しくて、欲張りじゃないことを証明してやるって思ったんだね。そして、貧しい人にお金を与えないお父さんを見て、僕はお金を与えてやる!って思ったんだね。でもね、それは間違いだよ。お父さんはケチではないよ。間違ってもいないよ。だから、お父さんに勝とうとして、貧しい人に与えようとするのはやめなさい。大人の自分は、お前がそんなことを決めたから、困っているんだよ。せっかく働いて財産を作ったのに、貧しい人に奪われて、自分が苦しくなってしまうんだよ。だから、自分の罪悪感をごまかすために、貧しい人にほどこそうと思うのはやめなさい。お父さんに勝とうとして、お父さんがしなかったことをしようと思うのはやめなさい。
お父さんは厳しかったけど、しっかりと責任を果たしてくれたんだよ。ありがたいね。だから、お父さんに心から感謝しなさい。お前がお父さんに感謝しないで、見下しているから、大人の自分はなにをしても、感謝されず、見下されて、さらにもっと世話をしろと言われるんだよ。そんなの嫌だよね。だから、お父さんに心の底から謝りなさい。ごめんなさい、お父さん…」

 

[シーン マダムの部屋]

 

エリック : ああ、わかってきました。子どものころ、僕は本当に怠慢だった。何もしなくても、親がなにかをくれて当然だと思い込んでいました。親の言うことをちっとも聞かなかった…。本当に怠慢だった。…それがセレーナに似ているんですね。親にちっとも感謝しないから、俺の息子も娘も俺に感謝しないんですね。…似ていますね」

(マダム うなずく)

 

マダム  : そう。すべてはあなたの心の一部が投影されているのがこの世界なのです。

 

エリック : 自分の心の一部が投影されているのがこの世界? ……

 

マダム  : そうですよ。本当は、この世界に他人はいません。すべてはあなたの心が作り出した夢なのです。この世界は、あなたの夢の結晶です。

 

エリック : この世界は、俺の夢の結晶…。

 

マダム  : 目の前に、あなたの借家人を並べてください。

(三人の借家人がエリックの前に並ぶ)

 

マダム  : そして、こう言います。(マダム、突然表情が変わり、強い口調になる)

「ちゃんと家賃を払え! (エリック、目を閉じたままびっくりする) 人間として、家賃を払うのは当たり前だろう! それが払えないなら、自分にふさわしい場所に行け! 人の好意に甘えるな! 自分の都合ばかり優先して、自分に親切にしてくれた人を悪者にするな! さっさと働け! わがままを言うな! 大した責任も負わずに働いているくせに、一所懸命やっているなんて言うな! そんなのは子どもの延長だ。大人になれ! 楽で楽しいことばかりやるのはサルのすることだ! 人間なら、挑戦して生きろ! 責任を果たせ! さっさと家賃を払え! 甘えるな! 人間として働け! 働け!」

 

エリック : マダム、すごいです。3人がしゃきっとして、働き始めました。さっきまではだらしなく、よれよれしていたのに、ベンまで病気が治ったように働き始めました。すごいです!

 

マダム  : こうやって、ちゃんとあなたの世界をコントロールするのですよ。あなたの思考が現実化している世界です。あなたがなにもしなければ、この世界にはルールがなくなります。あなたがしっかりルールをつくり、自分でも守り、心の中の登場人物にも守らせれば、この世界はあなたの思い通りなのです。

 

エリック : それはすごい…。マダム、これは悟りですね! ああ、すごくいい気分です。

 

マダム  : そして、それはいつかあなたの現実になります。

 

エリック :でも、マダム、この現実ができたのは、5歳のときの思いだとしたら、今のこのイメージが現実化するのも時間がかかるのでしょうか。それまで生きていられるかな…。

 

マダム  : あなたが意識的に変えた思考は、もっと早く現実化しますよ。

 

エリック : 本当ですか…? (目を開けて体を起こす)

(マダム、立ち上がって扉を開ける。すると、サトルが入ってくる)

 

サトル  : (腕を組んで)ここから先は、俺が担当する。

(目を丸くするエリック)

 

シーン マダムの家、庭 

(エリックに紙を丸めた刀を渡す)

 

サトル : いいか! これから特急の修正法を教える。サムライメソッドだ。

あんたの周りには怠慢な奴が多すぎる。それは、あんたの心の中に、怠慢なサルがいるからだ。これからその怠慢なサルを滅ぼすぞ! 

 

エリック: は、はあ。

 

サトル : さあ、俺に続け! まず、頭の中にサルどもをイメージせよ。そして、そのサルを切り捨てるようにこう言う。(剣道のようなポーズで斜めに切り)「怠慢をやめろ! さっさと働け! 頭を使え! サルの生き方はやめろ!」 これはお前の頭のサルの回路を切っているんだ。(とまどうエリック。それを横目で促して)

さっさとやれ! さあ、俺に続け! 「怠慢をやめろ! さっさと働け! 頭を使え! 責任を持て! 大人になれ! サルの生き方はやめろ!」

エリック : (同じようにどなりながら剣道ポーズをする)「た、怠慢をやめろ! さっさと働け! あ、頭を使え! 責任を持て! 大人になれ! サ、サルの生き方はやめろ!」

 

サトル・エリック(二人で): 「怠慢をやめろ! さっさと働け! 頭を使え! 責任を持て! 大人になれ! サルの生き方はやめろ!」

(ベルエアの丘から海が見える。二人の声が空に響く)

 

 

 

 

(一年後)

 

シーン マダムの家。

(ジャグジーにマダム、プールにデービッド、サトルがプールサイドで瞑想をしている。そこにエリックが訪ねてくる)

 

エリック : (ニコニコして)マダム、ご無沙汰しています。

 

マダム  : あら、お久しぶりね。今日はいいことでも? (ロバートが持ってきたシャンパンをマダムとエリックに渡す)

 

エリック : ええ、マダム。ご報告に来たのです。おかげさまで、あれからすっかり経済状況が良くなりました。みんななぜか取っても運がよくなったようなんです。ベンはすっかり元気になって、昔取ったパテントが2つも商品化が決まって、大喜びしています。

メイは、アイダホに住んでいる息子さんが、彼女に家を買ってくれたので、アイダホに引っ越していったんです。それから、セレーナは頑張ってシルバーレイクのギャラリーで仲間と個展をしたら、彼女の絵が日本のバイヤーの目に留まって、売れるようになったので、家賃を1200ドル払ってくれるようになりました。

そして、心の中で弟や妹に謝ることを続けていたら、二人とも、いつの間にかいい仕事をみつけてきたんです。その上、弟も妹も、「遺産はお前が全部決めていい」と言うんです! こんなことって、あるんですかね!? もちろん、きちんと平等にしますよ。なんだか、初めて兄貴らしい、誇らしい気分なんです。ええ、妻も喜んで、俺に感謝の言葉を言ってくれますし…(家を俯瞰して、それからベルエアの明るい空へ)