●ルロイ・アンダーソン
ルロイ・アンダーソン(1975年、66歳で没、写真)は、マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれのアメリカの作曲家。
「アメリカ軽音楽の巨匠」と称され、クラシック音楽と大衆音楽を融合させた「セミ・クラシック音楽」もしくは「ライト・クラシック」に位置する小品を数多く作曲した。最初のヒット曲は「シンコペイテッド・クロック」(1945年)。そして最大のヒット曲で、器楽曲初のミリオンセラーを達成した「ブルー・タンゴ」(1951年)である。
彼の曲はどれも親みやすく、BGMに良く使われているので、必ずどこかで聴いたことがあると思う。自分今も2枚組のLPレコードを持っている。1970年に買ったものだ。
ルロイ・アンダーソン・デラックス/ルロイ・アンダーソン指揮オーケストラ
≪SIDE1≫
1.ブルー・タンゴ 2.タイプライター 3.ワルツィング・キャット 4.そり滑り 5.サンド・ペーパー・バレー 6.舞踏会の美女 7.トランペット吹きの子守唄
≪SIDE2≫
1.トランペット吹きの休日 2.シンコペイテッド・クロック 3.フィドル・ファドル 4.プリンク・プランク・プランク 5.ジャズ・ピチカート~ジャズ・レガート 6.サラバンド 7.セレナータ
ルロイ・アンダーソンの音楽の特長は、タイプライターや紙やすりのような日用品を楽器として、それもしばしば「独奏楽器」として用いている冗談音楽のパイオニアという側面も見出され、真面目に書かれた音楽と、およそそれには不似合いな道具の組み合わせとがからくりとなり、自然なウィットやペーソスが引き出されていることだ。
今回はそんなルロイ・アンダーソンの曲を紹介したい。
●シンコペイテッド・クロック(1946年)
「シンコペーテッド・クロック」(Syncopated Clock)のシンコペーテッドとは音楽用語のシンコペーションのことで、リズムや拍をずらしてメリハリをつける方法のこと。曲中では、打楽器のウッドブロックがコツコツと時を刻むが、4小節目にシンコペーションが入り、独特のコミカルさとユーモアを生み出している。ゆったりとしたリズムにのって目覚まし時計のベル音やカウベルなどが登場する大変楽しい曲である。
●そり滑り(1948年)
「そり滑り」(Sleigh Ride)は、「ブルー・タンゴ」以前の作者の代表作の一つである。後にアメリカ人作詞家のミッシェル・パリッシュによって歌詞がつけられた。歌詞では、雪が積もるウィンターシーズンに馬が引く「そり滑り」を楽しむ様子が描写されている。
最初のヴォーカル入りのバージョンは、 アメリカの歌手ジョニー・マティスによる1958年のレコーディングとされている。バックはパーシー・フェイス率いるオーケストラ。ビング・クロスビー、エラ・フィッツジェラルド、カーペンターズ、ベイビーフェイスなど多くの有名な歌手がカヴァーした。
クリスマス時期によく店舗内などのBGMとして使用されるが、冬のイベントのために作られた曲ではない。
管楽器と弦楽器は標準的なオーケストラだが、打楽器はティンパニを欠く一方で、下図のような通常の管弦楽曲ではあまり用いられない楽器が使われる。なお、曲の最後では、トランペットのバルブを半押しにして吹き込むという特殊奏法によって、ウマの鳴き声が表現される。
●タイプライター(1950年)
「タイプライター」(The Typewriter)は、ルロイ・アンダーソンの最も有名な作品のひとつで、仕事に追われ、忙しいオフィスの情景をユーモラスに描写したものである。
タイプライターが楽器として用いられ、キーをタイプする音、行の右端近くまで文字をタイプすると「チーン」と鳴るベル音、紙を固定するシリンダー(キャリッジ)を次の行の先頭に戻す(キャリッジ・リターン)レバーの操作音が使用されている。独立した「Typewriter」というパートがあり、楽譜も個別に存在している。実際にタイプライターを用いることもあるが、ベル音やレバー操作音はトライアングルやギロで代用されることもある。
●ワルツィング・キャット(1950年)
「ワルツィング・キャット」(The Waltzing Cat)では、子猫が楽しそうに遊びまわる様子が描かれている。曲中ではときおりヴァイオリンが奏でる子猫の愛らしい鳴き声も表現されていて、猫好きにはグッとくるのでは。最後には犬に吠えられて猫が逃げ出す様子がコミカルに描かれている。ワルツの旋律の中、猫の鳴き声をイメージした演奏が続き、最後には犬に吠えられて猫が逃げ出す様子が描かれる。
弦楽器を爪ではじくピチカート奏法が、まるで子猫がピョンピョンと駆け回る軽やかさを演出し、ヴァイオリンの弦を滑らせるように演奏するポルタメント奏法が子猫の愛らしい鳴き声を表現している
●サンド・ペーパー・バレー(1954年)
「サンドペーパーバレエ」(Sandpaper Ballet)のタイトルの「サンドペーパー」とは「紙やすり」の意味。実際に演奏で紙やすりが楽器として使われているのが特徴的。