★第242話:タバコ(たばこ、煙草) | 中高年の中高年による中高年のための音楽

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日本とタバコの歴史

  前作、★第241話:スペインとポルトガルのご当地ソングで、タバコの起源について少し触れたが、日本語のタバコの直接の語源はスペイン語やポルトガル語の「tabaco」である。日本ではポルトガル語の音に近い「タバコ」として広まった。漢字の当て字としては「多巴古」、「佗波古」、「多葉粉」、「莨」、「淡婆姑」などが用いられる事があるが、「煙草」と書かれる事が最も多い。中国語では「香煙」と呼ぶ。なお、山口県の一部地域には「煙草谷」(たばこたに)という姓があるそうだ。

 1492年、黄金の国・ジパングを目指して大西洋を西に向かったコロンブス(1506年、55歳で没、画像左(1451〜1506)は、苦しい航海の末、サンサルバドル島に到達した。ヨーロッパの人々にとっては未知の新大陸への道が開かれた大きな出来事だった。そこには彼らが想像もしなかった豊かな自然と文化があり、タバコも、新大陸原産の珍しい植物のひとつとして、ヨーロッパに伝えられた。画像右は、コロンブスとタバコの出会い(想像図)(「たばこの歴史と文化」参照)


 日本では、慶長年間(1596年~1615年)の間にタバコが伝来。

 慶長6年 (1601年) に肥前国平戸(長崎県平戸市、画像左)に来航したフランシスコ会員ヒエロニムス・デ・カストロが、平戸藩主松浦鎮信にタバコの種子を贈呈し、これを記念して平戸城跡である亀岡神社には「日本最初 たばこ種子渡来之地」の石碑(写真右)が建てられている。また同年、ジェロニモ・デ・ジェズス徳川家康に贈呈している。そして、慶長10年 (1605年) には長崎の桜馬場で、初めてタバコの種が日本に植えられたという。(Wikipedia 参照)

 タバコはわずか2年であっという間に日本全国に広がり、江戸時代には、農村部では子供も当たり前のように喫煙していたそうだ。当時のタバコは
刻みタバコだった。刻みタバコとは、葉タバコを細かく刻んで、キセル(煙管)に詰めて吸うもの。(写真左)

 その語源はカンボジア語のkhsier、つまり「管」という意味だと言われている。


 余談だが、
「キセル乗車」(キセル)とは、旅客の旅行区間において、有効区間が連続せず乗車駅および下車駅についてのみ有効な乗車券を所持し、中間の区間の運賃支払いを不正に免れようとする行為を指すが、言葉の由来は、キセルでは吸い口とタバコを乗せる部分である雁首にのみ金属を使用することから、「入るときと出るときは金を使うが、中間には金を使わない」意味とされる。

 

タバコ人気と衰退の歴史

タバコ全盛期

 ところで、昔の映画やテレビを見ていると、タバコを吸っているシーンが多いのに気づく。タバコを吸う仕草は大人のカッコよさの象徴だった。日本の成人の喫煙率は1966年には52.0%(男83.7%、女18.0%)とピークに達した。

 タバコは身近なところにあり、今は少なくなった、いわゆる「街の煙草屋」もいたるところにあった。

平井英子&岸井明/煙草屋の娘(1937年)

 ジュリー(沢田研二)が絶好調のころ、「憎みきれないろくでなし」(1977年)でタバコを吸い、ポリス帽で片目を隠し、黒の皮パンの腰をうねらせ、曲の間奏で井上堯之バンドと身体をすり寄せた。

沢田研二/憎み切れないろくでなし(1977年)

 戦後から1960年代あたりの映画では、「タバコを吸うシーン」が多い。俳優ではハンフリー・ボガートクリント・イーストウッドアラン・ドロンスティーブ・マックィーンショーン・コネリーマレーネ・ディートリッヒなどの映画が真っ先に目に浮かぶ。

 特に、ハードボイルド小説が映画化されたとき、主人公のキャラクターが身に着けていたトレンチコートソフト帽ダークスーツなどのファッションを、「ハードボイルドな格好」と表現することがある。また主人公が好んだバーボンタバコなどの嗜好物も、ハードボイルドの世界観を表す記号となっていた。

 少なくとも、成人なるまでタバコは「不良」が吸うものであり。「多くは不良のかっこよさにあこがれ吸い始める」と思っている。
 自分も、学生のころタバコに手を出したことはある。何でこんなおいしくないものを、お金を出してまで、しかも健康を害することがわかっているのに吸うのか不思議に思いやめただけである。そのときおいしいと思っていたら今でも嗜んでいるかもしれない。

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド/スモーキンブギ(1974年)

RC Succession/トランジスタ・ラジオ(1980年) 【タバコのけむりとても青くて…】

<歌詞>
 授業をサボって 日のあたる場所にいたんだよ 寝転んでたのさ 屋上で 
タバコのけむりとても青くて 内ポケットにいつもトランジスタラジオ 彼女教科書ひろげてるとき ホットなナンバー空に溶けてった こんな気持ち うまく言えたことがない ベイエリアから リバプールから このアンテナがキャッチしたナンバー 彼女教科書ひろげてるとき ホットなメッセージ空に溶けてった
尾崎豊/15の夜(1983年) 【
煙草をふかして見つかれば逃げ場もない…】

<歌詞>
 落書きの教科書と 外ばかり見てる俺 超高層ビルの上の空 届かない夢を見てる やり場のない気持ちの扉破りたい 校舎の裏 
煙草をふかして見つかれば逃げ場もない しゃがんでかたまり 背を向けながら 心のひとつも解り合えない大人達を睨む そして仲間達は今夜 家出の計画を立てる とにかくもう 学校や家には帰りたくない 自分の存在が何なのかさえ解らず震えている 15の夜…

禁煙運動

 ところが、1970年代ごろからタバコの有害性が叫ばれるようになり、禁煙運動が盛んとなって先進国においてたばこの消費は減少の一途をたどることとなった。厚生労働省「国民健康・栄養調査」 によると、現在習慣的に喫煙している者の割合は、16.7%であり、男女別にみると男性 27.1%、女性 7.6%である。(図)

 都道府県別にみるとこんなに差がある。(国立がんセンター資料)

 

  「喫煙はアンチエイジングの大敵である。喫煙によって血管が収縮し活性酸素の発生が促進される。また、血液の粘度が高くなり、血栓ができやすくなる。たばこの煙には多数の発がん性物質が含まれていて、がん、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、脳血管疾患(脳卒中など)、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫、喘息)、消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、歯周病などの病気になる危険度を高める。喫煙者は非喫煙者に比べがんによる死亡の危険度は1.5倍高くなります。特に肺がん、喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がんによる死亡の危険度が10倍以上も高くなるという調査結果がある。循環器疾患による死亡、あるいは気管支喘息、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、歯周病などになる危険度は1.5~3.4倍高くなる。

 一方、禁煙(男性)によって、肺がんによる死亡の危険度は3分の1に、虚血性心疾患による死亡の危険度は半分に減少(喫煙者を1として禁煙後10年以上経過したとき)するとされている。

 喫煙は百害あって一利なしといわれる。日本は先進国の中で最も喫煙率の高い国」というわけである。

五木ひろし/倖せさがして(1980年)【おまえはタバコを 笑ってとりあげる…】

<歌詞>
 あなたのために 生まれてきたのと おまえははじらい 小指をからませる 探していたんだよ 小さな倖せを 俺のこころを ささえてくれる やさしいひとを 探していたんだよ からだのために わるいと叱って おまえは
タバコを 笑ってとりあげる 探していたんだよ 小さな倖せを 俺に一生 ささげてくれる かわいいひとを 探していたんだよ きれいな花と いわれるよりも おまえのような 素直な花がいい 探していたんだよ 小さな倖せを 胸にほのぼの 灯りをともす おまえをひとり 探していたんだよ…

自分とタバコ

 自分はタバコを吸わなくて本当に良かったと思うのにはある事件があったからである。6年も単身赴任していたときのことだ。一人の部屋に帰っても寂しいだけなので、それを紛らわせるため毎晩飲んだくれるか、マージャンをしていた。
 ある日、お腹がすいたので、帰りにアルミ箔に入った鍋焼きうどんを買って家に帰った。それに直接火をつけ3分ぐらい待てば出来上がる。ところが、そのときはへべれけに酔っていた。あろうことか、火をつけたまま寝込んでしまったのである。
 次の日の朝、目が覚めてびっくり。何と、うどんはアルミ箔ごと跡形もなく消失しており、コンロの火はずっとついたままだったのである。正に奇跡だった。大火事になるか、ガス中毒で死んでもおかしくない。背筋が寒くなった。こんな調子の人間がタバコでもやっていたら、とっくの昔に
寝タバコで焼死していたことであろう。

 今は「嫌煙」が一般的になり、タバコを吸うことに対する反発が世の中に蔓延している。愛煙家にとっては肩身の狭い時代になった。そういう意味でもタバコを吸わないで良かった。タバコを止めるのがとても辛いのはよく分かる。

沢たまき/ベッドで煙草を吸わないで(1966年)

 

女性の喫煙

 女性の喫煙はダイエットのためという話はよく聞く。しかし、妊娠中や子育てに良くないことは明白である。それでも、カッコいいと思うこともある。

五輪 真弓/煙草のけむり(1973年)

小坂恭子/想い出まくら(1975年)【あの人の まねをして けむたそうな 顔をして 煙草をすうワ】

<歌詞>

こんな日は あの人の まねをして けむたそうな 顔をして 煙草をすうワ そういえば いたずらに 煙草をすうと やめろよと 取りあげて くれたっけ ねエあなた ここに来て 楽しかった ことなんか 話してよ 話してよ
こんな日は あの人の 小さな癖も ひとつずつ ひとつずつ 思い出しそう こんな日は 少しだけ お酒をのんで あの人が 好きだった 詩をうたうワ ゆらゆらと 酔ったら うでに抱かれて 髪なんか なでられて 眠りたい
ねエあなた ここに来て 楽しかった ことなんか 話してよ 話してよ こんな日は あの人の 想い出まくら 眠りましょ 眠りましょ 今夜も一人…

 
 タバコファンには逆風が続く。10月からまたタバコの値上げがあるようだ。自分は吸わないので値段も知らなかったが、メビウス(旧マイルドセブン)が580円(現在540円)、セブンスターが600円(現在560円)だと聞くと、「ああ!吸わなくて良かった」とつい、つぶやいてしまう。タバコファンの方、ごめんなさい!