秋草スペクトラム | 神経質逍遥(神経質礼賛ブログ)

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真夏の間は、多彩な花が少なかったわが雑木林の周辺も、朝晩涼しくなるにつれ、秋草の季節が訪れてきました。

秋になると、昼間の時間が短くなります。そんな季節の変化に反応して花を咲かせるのが、短日性の植物たちです。

これらの植物は、気温の変化よりも、一日の日照時間の長さに敏感に反応するようです。一定の日照の基準があって、それより日照が短くなってくると、それが刺激になって花を咲かせるようです。

 

 

私が訪れる県南の雑木林の中で、比較的よく見かける秋草を、花の色で分類し、そのスペクトルを作ってみると、こんな風になりました。

〇紫系

アキノタムラソウ、ナギナタコウジュ、ツリガネニンジン、ヤブラン、ツルボ、カントウヨメナ、ノコンギク・・・

〇紅系

クズ、ワレモコウ、ツリフネソウ、ノハラアザミ、イヌタデ、ヤマハギ、ヌスビトハギ、ミズヒキ、カワラナデシコ・・・

 

〇白系

ヒヨドリバナ、オトコエシ、シラヤマギク、オケラ、ゲンノショウコ、ミゾソバ・・・

〇青系

ツユクサ、リンドウ・・・

〇黄系

アキノキリンソウ、ヤクシソウ、アキノノゲシ、キンミズヒキ・・・

思いつくまま並べてみても、こんなスペクトルができます。ここから想像しても、秋の雑木林の華やかさが想像できるでしょう。もしここで春の雑木林のスペクトルを作ってみたら、春の花の色合いは、秋に比べて華やいだものになるかもしれません。

 

 

 

昔、とある植物学者が、東京付近に咲く花の色の割合を、四季別に調べたものがありました。それによると白い花は春秋を通して多い、黄色は春に特に多い、夏になるとそれは減ってきて、代わりに赤や紫が多くなる。これは花の背景である緑色に秘密があるらしいのです。

緑の少ない初春は、白や黄色が目立つが、緑の濃い夏になると、赤が引き立つようになる、さらに緑が褐色になる秋には、白、赤、紫などの色合いが鮮やかに見えるというのです。かの植物学者は、自然との背景の対比にこそ、花の色の意味があるのだろうと結論付けています。

 

花粉を媒介する昆虫にも、それぞれ好みの色があるようです。

ミツバチなどは、赤色が見えないとされています。マルハナバチも同様で、黄、青、緑のほか紫外線も感じられるらしいです。

シロチョウの仲間は、黄色がお好み、また吻の長い八チの仲間は、青や紫が好きで、甲虫や双翅類などは、黄色を好むと言われています。

こんな昆虫たちの好みが花の色にも関係している。と主張する学者もいます。四季によって花の色が変わるということは、そこで働く昆虫の種類も変わってくることになるのでしょう。例えば春は黄色の好きなアブの仲間、夏は赤が好きなチョウ、秋は紫や青が好きなハチ類が、主役となることでしょう。

 

秋の野のスペクトル、その色調から醸し出される情景は、日本人が最も愛してきた秋の原風景であるのかもしれません。

画像説明 上・・アキノタムラソウ 下・・クズ

参考・・・「雑木林の博物誌」