神経質は救世主? | 神経質逍遥(神経質礼賛ブログ)

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何のとりえもない平凡で臆病者の神経質者が語る森田的生き方ブログです。

『神経質』と言う言葉を発明したのは、森田先生です。

森田先生の時代、流行していた『神経衰弱』と言う病気の概念がありました。これは心身の過労が原因で起こるとされ、治療法はただ安楽に療養させるだけでした。

ところが森田先生は、神経衰弱の本当の原因は、過労によって起こるのではなく、もともとの性格傾向と特有の心のからくりによって起こってくることを発見されたのです。よって『神経衰弱』に変わる概念として『神経質』を提唱されたのです。

 

ですからもともとはある種の疾病概念でした。ところがいつの間にか『神経質』はある種の性格傾向や態度を評する言葉として定着してしまいました。これに危機感を募らせた高良先生は、神経質性格が原因になって引き起こされる病的状態を、『神経質症』として呼ぶようにされました。このようにすれば、性格を現す『神経質』と、治療を必要とする病的状態、本人が苦しい思いを抱いている状態を『神経質症』と区別出来るようになりました。

 

 

さて、では『神経質の基本性格』とは、どういうものなんでしょうか。

結論から言うと、それは『ヒポコンドリー性基調』と言われるものです。ヒポコンドリーとは、『肋骨の下 = みぞおち部分』と言う意味で、『心気的傾向』の事をいいます。

神経質症は、なんでも気に病む性格基調から起こり、すると注意はその一点の感覚のみに集中し、その結果感覚も鋭敏になり、感じが強くなればいよいよ注意も是に集中すると言う風に、自らその深い感覚を憎悪させてしまうのが、いわゆる『精神交互作用』と呼ばれるものです。

 

それではこれから『ヒポコンドリー性基調』を構成する各性格群について述べていくわけですが、それとは別に、神経質を特徴付ける性格について、いくつか述べてみたいと思います。

みなさん『神経質』と聞いて、どんな性格を思い浮かべますか?

まずは、細かい事に気がつく。

皆が気にしないような事にこだわる。

粘り強い。

感覚鋭敏である。

・・とりあえずこのくらいにしておきますか。

私は上記の性格傾向から、ある方を連想したのです。

 

その方とは、ノーベル化学賞に輝いた”吉野彰氏”です。

まさに彼があの大発見に至る事が出来たのは、勿論吉野氏の天才的な頭脳のなせる業だと思うのですが、それをサポートする形で、『細かい事に気づく』、『皆が気にしないような事にこだわる』、『粘り強い』、『感覚が鋭い』と言った性格傾向が役に立ったのではないかと思われるのです。勿論吉野氏は自らを神経質と言っていませんが。

たとえばニュートンが万有引力を発見できたのも、『細かい事に気づく』、『皆が気にしないような事にこだわる』、『感覚鋭敏』、『粘り強く考え続ける』事があったから、あの大発見に結びついたのですね。

『あっリンゴが落ちた、当たり前だ』

等と捉えていたら、大発見は無し得なかったのです。もちろん吉野氏も然りですよね。

 

 

このように考えていくと、神経質性格って、とても天才的な性格傾向なんです。けれども余り天才ばかり輩出されてしまうのも、穏やかではありませんので、森田先生は『平凡で行きましょう』と言ったのです。

決して突出した人を目指すのではなく、ごく普通の人になる事を目指しなさいと言っているのです。

だけれど、『普通の人』になるのが、一番難しいのですよ。

ここで勘違いして欲しくないのは、『平凡』と言っても『努力をしなくていい』とは言っていない事です。毎日少しずつでも弛まぬ努力を続けること、それコツコツと毎日積み重ねていくこと、この積み重ねこそがもっとも確実な『非凡』への道なのだそうです。

あのニュートンも、もちろん吉野氏も、コツコツと『平凡』を積み重ねて、『非凡』な人となったのでしょうね。

 

世の中にはいろいろな人が居ます。天才も居ればそうでない人も居る。お金持ちも居ればそうでない人も居る。権力を持った人も居ればそうでない人も居る。

そんな世の中で、どんな人がもっとも大切な存在なのでしょうか。私個人的に言うと、大多数を占める『平凡』な人たちだと思います。

もし世界中の神経質者が、この『凡人』への道を歩んでいくのであれば、地球上の争いや人間同士のトラブルもずっと少なくなると思うんです。まさに神経質は地球人類の救世主と言っても良いくらいなんです。

実際『神経質』がこの世に存在しなければ、人類は当に滅亡していたかもしれないのです。

 

 

私たちは神経質性格を忌み嫌います。特に症状に悩んでいるときはそうですよね。でもある程度神経質である方が、結果的に勝利を得る場合が多いような気がするのです。

例えば体の不調や違和感ばかり気にしていた人が、気になるのに任せて精密検査を受けたら、早期のガンが見つかったとしましょう。

普通に考えればマイナスですよね。

でも暴飲暴食を重ねていて、無神経のために手遅れになった人に比べれば、明らかに生きる事に置いて勝利したと言えるのではないでしょうか。

 

高所恐怖がなかったら、皆高いところから落ちて死んでしまうし、不潔恐怖がなかったら、伝染病や細菌が蔓延し、是も人類が死に絶えるかもしれません。

さらに先端恐怖がなかったら、刃物などに恐怖心がなく、殺人事件が絶え間なくなるでしょう。

非常に極論かもしれませんが、人間に神経質と言う性格傾向が在ったがために、人類は滅ぶことなく、今日の繁栄を築く事が出来たのだ。

と言うことなのです。

そういう意味で神経質は人類の救世主なんですね。

次回より、ヒポコンドリー性基調について詳細します。

 

参考・・・『悩む人ほど強くなる』