その努力は何のため? | 神経質逍遥(神経質礼賛ブログ)

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何のとりえもない平凡で臆病者の神経質者が語る森田的生き方ブログです。

今日取り上げる色紙は、

『君子は道の為にす 名の為にせず

神経質は仕事の為にす 治る為にせず』

と言うものです。

 

前半部分の大意は、『君子(徳の備わった人)は、名声を上げるために努力するのではなく、道(人の行うべき道理)のために努力する』と言うものです。勿論論語の言葉です。森田先生はこれをもじって、後半部分を考えました。

つまり『神経質者は、病気を治すために仕事をするのではない。仕事は人間としてしなければならないものだから、するのである』と言う意味合いになると思います。

 

 

入院森田療法では、患者に作業療法が課せられます。作業と言っても炊事を手伝ったり、庭の掃除をしたり、日曜大工のようなことをするのです。要するに日常の作業をやらせることで、社会人としての教育をさせていることになります。また、作業療法中は、患者に日記を書かせていますが、これも森田では仕事の一環と位置づけているのです。

 

作業療法と名前がついているせいかもしれませんが、患者の中には『仕事をしさえすれば治る』と信じ、必死になって仕事をしている人がいます。勿論仕事は神経質症状の治療に必要なものだから、治療メニューとして組み込まれているのですが・・・。

 

無論仕事だけでなく、治療者より指示されたとおりに実行すれば、それだけ症状の改善が進むことは、想像に難くないでしょう。けれども自分の症状を改善することばかりを考えて、作業スケジュールをこなしている人は、かえって治りが遅いものなんです。こういう人には、共通した特徴があります。

 

それは、医師の指導を受けている際にも、患者同士で話し合っているときにも、常に自分の症状のことばかりを話題にする人たちです。毎日の日記にも、その日に起こった症状のことばかり書き連ねて在るのです。こういう人は何のために仕事をするのかまったく理解していないのですね。

 

神経質症でない人もある人も関係なく、仕事や勉強は生きていくうえで必要だからやるわけです。決して病気を治すためにやるのではありません。入院患者たちは、これから実社会に出て、建設的な生活を送るためにも、しなければならないものだから、するのであります。

 

 

このようなことを言うと、患者の中から、『それじゃ日記に書くことがなくなってしまう』と文句を言われることもあります。森田療法の日記は、原則として症状のことは書いてはいけません。その日に行動したこと、実践したことを中心に書いていくのです。毎日同じようなことの繰り返しであるので、症状のことを書かないと、ネタがなくなってしまうのですね。

 

同じようなことの繰り返しは、私達健常者も一緒です。しかし同じことの繰り返しであっても、昨日よりは今日、今日よりも明日、と言うように生活内容を充実させていくことは可能であると思うんです。日記を充実したものにするためにも、毎日を頑張って充実させていかなければならないのです。これが再三言っている『日日是好日』になるんですね。

 

参考・・・『日日是好日』より