サボっていてなかなか読んだ本の感想を書けないままになってしまっているが、リストだけまとめておいて、また追いついたときに、思ったことを記そうと思う。
■医学
・立川昭二『病気の社会史 文明に探る病因』,岩波現代文庫,2007 →明治政府による強制的な消毒や隔離に対して起こった「コレラ一揆」の存在を知った。
・川喜田愛郎『生物と無生物の間 ウイルスの話』,岩波新書,昭31
・川喜田愛郎,佐々木力『医学史と数学史の対話 試練の中の医学と科学』,中公新書,1992 →「今世界で一番重要な病気は飢餓だ」(16頁)、 「人の悩みに及ばずながら手助けしたいという慎ましやかな願いを原点として始まった医学は近代に入って科学と結んで大きな成果をあげた反面、今、方向を見失い始めたと私は見ているのです」(17頁).川喜田先生の言葉はずっしりとしている。
・川喜田愛郎『生命・医学・信仰』,新地書房,1989
・杉山登志郎『自閉症の精神病理と治療』,日本評論社,2011
・杉山登志郎『発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療』,誠信書房,2019
・清水將之『子ども臨床 新訂』,日本評論社,2009年
・山上敏子『方法としての行動療法 新訂増補』,金剛出版,2016
・西園昌久『精神分析を考える』,中山書店,2014
・西園昌久『精神分析を語る』,岩崎学術出版社,1985
・山鳥重『言葉と脳と心 失語症とは何か』,講談社現代新書,2011
・石黒忠悳『懐旧九十年』,岩波文庫,1983
・河合隼雄『日本人とアイデンティティ』,講談社α文庫,1995
・竹島多賀夫『迷わない!見逃さない!頭痛診療の極意』,丸善出版,2014 →読んでよかった。知識がなければ、臨床は立ち行かない。
・ヴァン・デア・コーク著,柴田裕之訳『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』,紀伊國屋書店,2016 →「爬虫類脳」のカテゴリー、迷走神経の捉え方など、脳科学の成果を医学的にまとめ返す視点が有用。実はまえまえから個人的に考えていたことが他の人もいっていることがわかっておもしろかった。
■思想
・小川修パウロ書簡講義録刊行会編『ガラテヤ書講義Ⅱ』,リトン,2022 →ついに小川先生のパウロ書簡講義が完結した。最終巻がガラテヤ書講義Ⅱ。小川先生は、この講義の最後で宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に言及されている。この詩の「サウイフモノ」には無教会の斎藤宗次郎というモデルがいるという山折哲雄氏の説(異論もあるようだが)が紹介されている。斎藤宗次郎は「10メートルを走っては神様に祈り、そういう新聞配達をしていた」ひとらしく、ほとんどの弟子に見捨てられた内村鑑三の最晩年を支えたとのこと。小川先生は、「サウイフモノ」は「紛れもないイエスの姿ではないか」と大胆にも述べられているが、そういう見方から浮かび上がってくることもあるかもしれない。僕なりの理解では、科学や技術が力を持たないとき、人間にできる最も誠実なことは、「デクノボー」と呼ばれながら「オロオロアルク」ことだったのかもしれない。それが隣人愛なのかどうか、僕の中ではやたら難しい宿題になっている。
・内村鑑三著,松沢弘陽編『日本の名著 38 内村鑑三』,中央公論社,1984 →「地人論」が印象深かった。科学的な素養があった内村鑑三は、地理学から文化の成立を理解しようとしたのだなと分かっておもしろかった。宗教がどこまで文化で語れるかはわからないけれど、日本では「当たり前」でないキリスト教を選ばなければならない。いかにして「当たり前」でないことを納得していくかという難問について、内村という巨人の考えの軌跡が残っていること自体、「後世への最大遺物」である。
・廣松渉,小林敏明『哲学者廣松渉の告白的回想録』,河出書房新社,2006
・プラトン,藤澤令夫訳『国家 上・下』,岩波文庫,1979 →ソクラテスが、議論の相手から「しらじらしい」と思われていたことがよくわかる。読んでいて、僕もソクラテスのような人がいたら、むかっとするとお感じた。論破という言葉が流行っている昨今だが、ソクラテスは論破など眼中にない。彼の産婆術は、相手に議論で勝つことではなく、真実を知ることを目指している。
・西谷啓治『宗教と非宗教の間』,岩波現代文庫,2001
・和辻哲郎『古寺巡礼』,岩波文庫,1979
・和辻哲郎『イタリア古寺巡礼』,岩波文庫,1991
・山折哲雄,上野千鶴子『おひとりさまvs. ひとりの哲学』,朝日新書,2018 →加藤周一氏や中井久夫氏が高齢になってカトリックを受洗したことについて上野さんが論理的に突っ込んでいるところがおもしろい。禅を高く評価する上野先生、宗教を「便利なもの」とけむにまく中井先生の姿勢はおもしろい。仏教でいえば、宗教はもともと「方便」なのだから、おふたりとも意外と近い所におられるのではないか。
・宮田光雄『カール・バルト 神の愉快なパルチザン』,岩波現代全書,2015
・宮田光雄『ボンヘッファー 反ナチ抵抗者の生涯と思想』,岩波現代文庫,2019
・中村元『仏典のことば』,岩波現代文庫,2004
・宗左近『小林一茶』,集英社新書,2000
・阿満利麿『選択本願念仏集 法然の教え』,角川ソフィア文庫,平成19 →なぜ念仏・称名によって救い(弥陀の本願)が起こるのかという点については「善導さんがそう書いている」と根拠づけられるので、もうすこし法然には突っ込んで欲しいとおもうものの、人間が凡夫であることの説明には非常に説得力があった。法然の人間に対する分析は非常に鋭い。
・花崎皋平『生きる場の哲学 ー共感からの出発ー』岩波新書,1981 →市民運動への参加でしられる哲学者の文章で。「生きる場」という言葉にその「運動的」な姿勢が表れている。「共感」から始まる花崎氏の思考は、他人の問題に共感し、他人の問題を自分の問題のように感じて行動するという経過をたどる。個人的には花崎氏を非常に良心的な人だとは思うのだが、他人の問題を他人に頼まれたわけでもないなかで自分の問題として感じるということに僕は良心的な飛躍を感じてしまうので、花崎氏の議論に素直にうなずけないのである。
■歴史・経済・建築
・円仁著,岡谷憲訳『入唐求法巡礼行記』,中公文庫,1990 五台山を知った。廃仏にあって還俗も辞さずに経典を日本に持ち帰った円仁の姿が興味深い。霊仙上人という”三蔵法師”の尊称を得たがゆえに日本への帰国が許されなかった人の存在をしれたのも勉強になった。霊仙上人毒殺説も面白い。遣唐使船に占いの人が乗っていたり、順風を住吉大社の神に祈祷する下りがあるが、古代日本で宗教的な分業があったこと示していて興味深かった。
・C.アウエハント著,小松和彦他訳『鯰絵 ー民俗的想像力の世界』,岩波文庫,2013 →香取神宮に行ってみたくなる本。
・カヴァリエ著,二宮フサ訳,『フランス・プロテスタントの反乱 カミザール戦争の記録』,岩波文庫,2012 →仏カトリックがプロテスタントに対して「ミサへの強制参加」という「踏み絵」を課していた事、プロテスタントの背景にはカタリ派やアルビジョワ派などの異端の歴史があること、プロテスタント信仰を捨てなかった人たちがガレー船の漕ぎ手という苦役につけられていたことなど知らなかったことが満載。フランス南部のゲリラ戦は、第二次世界大戦でも繰り返される。
・ユージン・B・スレッジ,伊藤真・曽田和子訳『ペリリュー・沖縄戦記』,講談社学術文庫,2008 太平洋戦争当時のアメリカ軍の補給、食事事情がよくわかる。沖縄戦では、人間のおぞましさと自然の美しさの対比に作者はなんども言及する。この作者にとっては戦争は「地上の楽園でおこる悲惨」であった。
・渡邊京二『逝きし世の面影』,平凡社ライブラリー,2005
・藤森照信『建築史的モンダイ』,ちくま新書,2008
・藤森照信『日本の近代建築 上・下』,岩波新書,1993
・森嶋通夫『サッチャー時代のイギリス その政治,経済,教育』,岩波書店,1988
・森嶋通夫『政治家の条件』,岩波新書,1991
・アーネスト・サトウ,『一外交官からみた明治維新 上・下』,岩波文庫,1979 →幕末、大阪枚方から京都宇治まで船でさかのぼって移動していたことがわかった。
・メチニコフ著,渡辺雅司訳『亡命ロシア人から見た明治維新』,講談社学術文庫,1982
・ジョン・ダウアー著,猿谷要監修,斎藤元一訳『容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別』,平凡社ライブラリー,2001
・西岡文彦『簡単すぎる名画鑑賞術』,ちくま文庫,2011
・千田嘉博『戦国の城を歩く』,ちくま学芸文庫,2009 →観音寺城がそんなに画期的な城郭だったとは・・・。山城、堀切、土橋、馬出しの面白さをまなんだ一冊。
・和歌森太郎『山伏 入峰・修行・呪法』,中公新書,1964
・和歌森太郎『神と仏の間』,講談社学術文庫,2007
・司馬遼太郎『歴史と視点 私の雑記帖』,新潮文庫,昭55
・司馬遼太郎『歴史と小説』,集英社文庫,1979
・司馬遼太郎『人間の集団につして ベトナムから考える』,中公文庫,1974 →ベトナム戦争さなかの南ベトナム旅行をもとにしたエッセイ集。ベトナムという国が歴代中国王朝をはねかえし続けた軍事大国であったことを知った。
・加藤陽子『昭和天皇と戦争の世紀』,講談社学術文庫,2018 →加藤先生の緻密な研究に基づく重厚で重層的な昭和史。個人的には南原繁が1946年に天皇の退位の権利について貴族院で言及していたということを知って驚いた。加藤先生の文章は静かな熱意が全編みなぎっていて、読むたびにすごいと思う。最近、加藤先生の南原繁論がでたらしいので、読んでみたいと思っている。
・五百旗頭真『日本の近代6 戦争・占領・講和』,中公文庫,2013 →戦前・戦後の政治史について五百旗頭先生独自の視点でまとめられており、わかりやすい。ディテールも適度に充実している。公平かどうかは分からないが、五百旗頭先生の批評眼のおかげで、ややこしい政治の動きを面白く読むことができた。
・内山奈月,南野森『憲法主義 条文には書かれていない本質』,PHP文庫,2015
・武田泰淳『政治家の文章』岩波新書,1960
・都留重人『近代経済学の肖像』,岩波現代文庫,2006
・都留重人『現代経済学の肖像』,岩波現代文庫,2006
■小説
・エラリー・クイーン『オランダ靴の秘密』,ハヤカワ書房,1987
・奥泉光『グランド・ミステリー 上・下』,角川文庫,平13