先日94歳になった祖母宅を訪れた。畑仕事を手伝ったのだが、帰りに祖母が冷凍の干し柿を持たせてくれた。亡くなった祖父が毎年の楽しみとして、祖母と二人で作っていたものである。庭の柿の木になった実の皮を二人でむき、干したあとに冷凍していた。それを3年越しに僕がもらったことになる。
さっそく食べてみると甘味がおどろくほど強い。祖父は80代後半をすぎてから、祖母と二人で干し柿を作るようになった。亡くなるまでの数年間、祖父母宅を訪れるたびに一つずつ、祖父が大事そうにとりだして渡してくれた。「どや、うまいやろ?」と笑う祖父の姿を思い出しながら食べていたら、ついつい味わうのを忘れてしまっていた。僕の場合、思い出と味覚は、同時に意識できないようになっているらしい。ただ、そう気が付いてからもう一度味覚に集中してみると、さっきの強い甘みが、もっと複雑な味に変化したように感じられた。