10月1日は、関西では有名なラーメンチェーン店「天下一品(通称:てんいち)祭り」の日である。
前日の深夜に、大学時代の後輩からメールが届いた。
「明日は天一祭です!! お昼に天一ご一緒にいかがですか?」
彼は、僕が4回生だったころの1回生だから、ずいぶん年が離れていて、そうたくさんの時間を一緒に過ごしたわけでもないのだが、いろいろとことあるごとに声をかけてくれて、ありがたいやつである。
今回も、後輩からの誘いを断る理由は特になく、むしろ、あのこってりラーメンは夜よりもお昼に食べるくらいがちょうどいいのかもなどと考えつつ、11時に指定された銀閣寺店へと自転車を飛ばした。
その先にひどい出来事が待ち受けているとは知らずに・・・。
その後輩が言うには、天一祭りでは、ラーメン一杯を食べるごとに、無料券(ラーメン一杯分)が一枚もらえるという。すなわち、実質的にラーメンが一杯タダで食べられるのだ。
そこで、その後輩は恐ろしい計画を僕に打ち明けた。
後輩:「できるだけ多くの天下一品のお店にいって、無料券をたくさんゲットしませんか?そしたら今後の食費にしばらくこまりませんし・・・」
僕:「え?とりあえず銀閣寺店でラーメン食べてもらった無料券で、ほかの店でも食べて、それをどれだけ続けられるか実験するってこと??」
後輩:「いえいえ、無料券は10月2日以降にしか使えないので、今日は無料券をできるだけ多くゲットするだけです。」
僕:「ってことは、今日は、ラーメン食べるたびに食費がかかるってことちゃうの?」
後輩:「まぁ、そうですが・・・。ちなみに去年は一日で10杯食べました。」
僕:「なぬ!!おもろいなぁ。よし。いこういこう!!」
なんということだ。僕は、自分の見栄っ張り具合に相当あきれつつも、後輩の計画にのってしまったのだった。
一軒目。銀閣寺店。大学時代から通いなれているが、個人的には一番おいしいと感じている。
もちろん、この日もうまい。まずは、「こってり、並」を注文。630円。11時10分。
二軒目。自転車を20分ほどこいだところにある知恩院前店。初めて入ったが、銀閣寺店にはない「こっさり(こってりとあっさりの中間の濃さのスープ)」がメニューにあったので、「こっさり、並」をいただく。これがなかなかいける。まだまだお腹にも余裕があり、10分で完食。730円。11時40分。
三軒目。すこしお腹をすかさないと3杯目は食べれないということで1時間ほど自転車をこぎ、京都市南部の下鳥羽店に入った。国道一号線沿いの大型店。家族づれが多い。ここでは、あとあとの展開を考えて「あっさり、並」をいただく。すこしお腹が張ってきたが、なんとか完食。680円。12時50分。
四軒目。運動しないと4杯目はきついので、西に進路をとり、桂五条店まで自転車で約1時間走り続けた。桂五条店についたものの、まったくお腹の張りはおさまらないまま「こってり、並」を注文。これが、やばかった・・・。もともと「こってり」は味が濃いのだが、お腹が張っているせいか、塩味にしか感じない。だから水をたくさん飲んでしまう(しかも、水がやたらおいしく感じる)。麺をすすろうとしても、水でさらに膨れたお腹が苦しいので、うまくすいこめない。しょうがないので、すすらずに、お箸で黙々と麺を口に運ぶ。チャーシューが憎たらしくなってくる。だれだ?チャーシューなんてラーメンに入れたやつは!! 630円。14時ちょうどくらい。
五軒目。とりあえず、京都市中心部に戻ろうということで、西院店にむかうが、到着しても食欲がゼロ。
もはや、これ以上連続して食べれない状況におちいったため、西院店はスルーし、蛸薬師新京極近くの「桜湯」という銭湯で休憩することにした。
「銭湯で戦闘する」とか、もはやお腹のせいとしか思えない寒さのダジャレを言い合いながら、お湯につかる。
でも消化がすすむ気配なし。たんなる時間稼ぎに終わった。30分ほどの銭湯のあと、すぐちかくの京極店にはいり、「こってり、並」をいただく。もう限界ぎりぎり。麺と具だけを食べて、スープは残す。680円。16時半。
六軒目。夕方から歌の練習があるので、いったん家に楽譜を取りに戻り、練習場所に近い山科店へむかう。ちょうと蹴上から御陵のあいだの山越えで、ひとしきり汗をかき、一時的にお腹の満腹感が軽減。しかし、山科店に入ると、においだけで再び満腹感がぶり返してきた。「こってり」は無謀と判断し、「醤油ラーメン、並」をいただく。注文の際、無意識に、「スープは麦茶で」と言ってしまう。ラーメンズの見すぎである。480円。18時半。
七軒目。歌の練習で、2時間みっちりと声を出したが、お腹にはあい変わらず張りがあるままだった。
しんどい。練習後は、合唱団のメンバーと餃子の王将で夕御飯。ほとんど食べれず。王将での一次会が終ったので、祭りのフィナーレを飾るべく、今出川店に向うも、ものすごい行列で断念。北白川の総本店に方向転換。こちらも行列ができていたが、10分ほど並ぶと入店できた。
最後は心意気で「こってり、並」を注文。「麺かため」というつもりで、「スープかため」といってしまい、店員さんの失笑をかう。もはやまともな思考ができない・・・。でも、わずかに残ていた気合いを振り絞って完食。680円。23時40分。
10月1日。振り返るまでもなく一秒も勉強しなかった・・・。こんな風に一日棒に振ったのは、久し振りだが、
こんなあほなことをするたびに、北杜夫が『どくとるまんぼう青春記』で書いていた言葉を思い出す。
「今日、僕は一日を棒に振った。しかし、人生を棒に振ったのではない。」
ええ。都合のいい解釈であることは十分に分かってますけどね。
しめて、4510円。体調は最悪なのに、なんとなく心は晴れ晴れとしている。
人間はふしぎだ。だからやめられない。




