普段はチャリダーとしてぼろぼろの愛車をかっ飛ばす僕ではあるが、
時間のあるときは、ゆっくりと歩くのが割りと好きである。
歩いているときは、できるだけ頭をぐるぐると回すようにしている。
以前、「そんなキョロキョロすると恥ずかしいからやめなさい」と身近な人に注意されたけれど、
キョロキョロしてるのは僕のせいではない。後ろにも目を作ってくれなかった神様が悪いのだ。
僕にいちゃもんつけるのもいい加減にしてほしい。
とにかく、ゆっくり歩きながらキョロキョロしていると、自転車こいでるときには気づかなかったものが
目に入ってくることがあるのだ。往々にして。
今日も、ふと、「キヨラカ」という名前の理髪店が眼に入ってきた。
お店の名前の通り、鮮やかなブルーのカーテンがスキっとしていてすがすがしい。
今度寄ってみようかな? きっと清らかなヘアスタイルにしてもらえるに違いない。
河原町通り沿いにあるので、このお店の前を何回も通り過ぎていたはずだが、存在にすら気付かなかった。
普段の僕がどれくらいの事柄を見逃しているのかと思うと、ちょっとおそろしくなってくる。
シャーロック・ホームズ程とはいかなくても、もっと眼を凝らしていないと、いかんいかん。脳が腐る。
話は変わるけれど、先日、京都市山科区にある勧修寺に行ってきた。
地下鉄東西線の小野駅から少し歩く。ここは回遊式庭園が有名らしいのだが、
京都はほかに有名なお寺がありすぎて、実は結構な穴場である。
庭に着くと、おばちゃんがせっせと掃除をしていて、お客は僕一人。
広い庭園をゆったりと歩いていると、広大な池の前にカモさんがならんでいるところに出くわした。
なんと。カモさんたちは風流に庭園見物をしておられるようで。
それはそれで、微笑ましい光景ではあるけれど、僕は入園料400円をはらっているのに、カモさんは無料。
浮世の不公平の実例だ!などといちゃもんをつけてみたくなる。
一瞬、人間やってるのがすごく損なことのように思えた。
せっかくカモさんが醸し出してくれていた微笑ましい光景を、すさんだ現実に読み替えてしまった僕は、
すこしムカムカした心をひっさげて、さらに庭園の奥へと向かった。すると・・・
こんな看板がかかっていた。いったい、この先には何があるのだろう??
「大いに危険」は大いに結構。でも、この注意書きでは理由がまったく不明だ。
理由を述べよ!!である。
でも、そのあとに、ふと考える。理由を述べないほうが圧倒的に「怖い」ぞ。
「マムシがいます」とか「道がくずれています」と具体的な理由で説明されていても、
「そんなの平気」だと思う人に対しては、この注意書きは効力がないことになる。
勉強においては、理由をすっとばすというのは、基本的に禁止である。
理由がない場合には、なんで理由がないかの理由を挙げなくてはらない。
そんなギチギチな因果関係の世界もいいけど、この注意書きみたいに、
なんとなく「大いに危険」と単に書いてしまう感覚の世界も魅力的だ。
そんなことを考えながら、僕は「この先」には行かず、おとなしく庭園を後にしたのだった。
えぇ。もちろんですとも。嘘じゃないですって。

