不夜城で歌いまくって疲弊したノドに、ようしゃなく風邪ウイルスが入り込み、連休は予想外の養生スタートとなってしまった。反省。しかもあとから知ったのだが、歌舞伎町で歌う姿が上司に目撃されていた。恥づ。
養生=読書と相場が決まっている。ほかにやることなどない。
しようもなく以前から気になっていた小説を手に取った。
柴崎友香著「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」。
普段は女性作家の作品をあまり読まないのだが、柴崎友香だけは例外である。「きょうのできごと」を初めて読んだ時からも、なつかしい関西弁の台詞もあってか、すっかりお気に入りになっている。
やばい。今作にも。もうれつ感動してしまった。
柴崎友香のもつ視線は、現在数多いる小説家のなかで、最も鋭敏で柔和だと思う。
あらすじを言ってしまえば、ものすごく簡単にいえてしまう。
でも、この作家のすごさは、ストーリー展開にはない。むしろ、ゆっくりと流れていく時間を濃密に過ごすことに全てを賭けている。
「毎日がこんなにおもしろいしこんなにきれいやのに、それを何もないってどうして感じるのかな」
この本の作者は、ちょっとしたことを、いとおしく見ている。かっこいい。それができる人ってかなり少ない。
この感覚をより多くの人が身に付ければ、世界はどんなにか暖かくなることだろう。
瞬間を楽しむ、その瞬間の連鎖こそが時間となる。時間は小説になる。
この小説には日常をいきいきとさせる魔法がある。
たしかに最近の僕は、従来の物語作家のような大きな目標へまい進する姿勢ではなく、柴崎友香のような日々の日常を楽しむ姿勢に共感している。
ただ、そろそろその一歩向こうに見え隠れする世界が言葉にならへんかなとも思っている。
その意味で、この小説は僕の精神的な部分にも大きく影響を与えそうだ。また何度も読み返すことだろう。
