アカリセンター様のレビューです。
タクティカルライトの構成要件は意外に多くあり、また構成要件でありながら矛盾するものもあります。
例えば、シンプルな操作性と多段階の明るさ調整は明らかに矛盾するもので、通常は何らかの形でのトレードオフが発生します。
多くの場合は純粋なタクティカル性を妥協し、やや利便性を増すことで「実用性」を取るわけですが、技術的な限界や好みの問題もあり、その解決策はメーカーごとに異なります。
逆に言えば、その部分こそがメーカーの個性でもあり、ユーザーの楽しみの部分かもしれませんね。
今回ご紹介するWUBEN T1も、独特の「味付け」を備えたモデルです。2024現在、もっと明るいライトもWUBENのラインナップに存在しますが、大きすぎたりタクティカルな操作性に劣ることもあり、タクティカルライトとしてイチオシするならこのT1ということになります。
ヘッドサイズ40mm、全長157mmはタクティカルライトとしてミドルサイズと言える主流の大きさ。各社の著名なライトがひしめく激戦区と言えるクラスです。
タクティカルライトは光学的な側面だけではなく、現場のツールとしての重さの上限があったり、取り回しやすさが求められ、その結果このクラスに収斂していくのでしょう。
大きめのヘッド、くびれた円筒のボディ、テール部分についたスイッチ。この斜め後ろから見たタクティカルライトの姿が好きです。
それぞれのライトが持つ、カタログスペックには現れない「裏」の特性を感じられる気がしないでしょうか?
まずはライトとして最も重要な、照射性について、そしてその要となる光学系を見てみましょう。
深く、広い鏡面リフレクターと、その時代に最もパワフルなLEDを組み合わせ、狭い周辺光と集光しすぎない、しかし強力な中心光を照射する。タクティカルフラッシュライトがLEDに移行してから今日まで約20年、基本的な構成は変わりません。T1はLUMINUS SST-40を搭載、その照射力は他社同クラスに見劣りしません
一般のライトに比べ、左右視界が狭い。LEDは照射距離に優れる集光タイプではなく、程よい集光に留めるパワータイプ。結果的に、実にオーソドックスなタクティカル配光です。
周辺視界が狭いのは味方を誤射したり、側面の相手に悟られにくくするため。
中心光が細すぎるとライトの光を浴びせるまでの時間に影響するため、集光しすぎず、光量と眩しさのバランスを取っているのも基本に忠実。
したがって、特徴としてあまり語れることはありません。しかしそれが後ほど、別の話につながってくるのです。
WUBEN T1は、戦術モードとアウトドアモードを選択でき、ライトのモード数が変わります。タクティカルモードでは、HIGHとECOの2モードにSTROBE、SOSを備えたシンプルな構成。
相手のID確認や隠密での移動に適した暗めのLOWと、威圧的なHIGHを一つのスイッチで使い分けることができます。
この特徴的なスイッチは、まっすぐに押すとON-OFFを、左右側面を押すとモードの切替を担う、2方向スイッチとなっています。このスイッチと、これがもたらす独特の操作性がT1の最大の個性でありアドバンテージといえるでしょう。
例えばECOで歩行中になにか不審な動きがあった時は、スイッチ側面をガッと「はたく」だけで、瞬間的にHIGHへ移行可能。これを含め、
・ECOで点灯中、側面をクリックでHIGHへ
・点灯中、側面長押しでSTROBOへ
・OFFからの点灯は必ずHIGH
・OFFからの側面長押しは瞬間的にSTROBOへ
など、HIGHとSTROBOを両用できるUI(ユーザーインターフェイス)になっています。
一方、アウトドアモードでは、モードメモリが搭載され前回と同じ明るさで点灯する、HIGHへの直接のジャンプができなくなるなどタクティカル度をやや落とし、普段使いやキャンプなどのアウトドア用途に適したライトとして扱うことができます。とはいえ、アウトドアモードでも側面の長押しによるSTROBO発動は残っており、完全にタクティカル性を失ったわけではありません。
現在、ミドル~フルサイズのタクティカルライトは4000~5000ルーメン級が登場しており、2000ルーメンのT1が見劣りするように感じられるかもしれません。しかし、照度計を用いて実測してみると、5000ルーメンを維持できるのは数秒以下で、15秒もたてば2000ルーメン級以下まで落ちるライトがほとんどです。
これはテクノロジーの優劣ではなく、単純にボディ素材がもつ物理的な放熱限界と、化学に基づく電池の放電限界がLEDの要求に追いつかないせい。であれば、2000ルーメン級で安定した照射を得るのも一つの最適解かと思います。
T1は純粋種のタクティカルライトではありません。複数のモードを備えた現代らしい欲張りライト。しかしやはり、現場のプロの要求も、多機能へと移りつつあるのが実情です。スタンダードにまとめられた正当進化系のタクティカルライトに、操作性に優れたユニークなスイッチシステムの組み合わせ。この操作系にハマるユーザーは絶対に存在すると思います。興味を惹かれた方はぜひお試しください。

















































































































