『五人目の告白』と『小説のように」 | marginalia

東京創元社さまより、小林泰三『五人目の告白』、アリス・マンロー著小竹由美子訳『小説のように』の二冊を献本いただきました。

 

 

先日のSF編に続くミステリ編です。とにかく血みどろ残酷なほぼホラーテイストなお話が多いです。SFもありですが、やはりテイストはホラーです。とにかく独特のクールな世界で、解説を田中啓文さんが書いてらしてこれが非常にウェットな悲しみをたたえた文章なんですが、それも含めてちょっと他にない読み味の一冊でした。他の短編集などでほとんどの作品が既読なのですが、不思議な作品だなあと改めてしみじみしました。

 

 

短編の名手として知られ、ノーベル賞を受賞したカナダの女性作家の作品集です。相変わらずのいかにも現代小説という感じの作品たちなのですが、先日アリスの最初の夫との間の子供が9歳の時に二番目の夫から性的虐待を受け、それを25歳でアリスに告白したところ絶縁され、アリスの死後書かれた評伝の作者に伝えたのも黙殺されたというスキャンダルがあり、もうなかなかその作品を前と同じ気持ちでは読めないなあと残念に思いました。おそらくこの本が出るのはその醜聞が明らかになる前に決まっていたことだったのでしょうが、落ち着くにはもう少し時間が必要ですね。