『ロンドン幽霊譚傑作集』『冒険小説論』『竜の医師団』『射手座の香る夏』 | marginalia

東京創元社さまより、夏来健次編訳『ロンドン幽霊譚傑作集』北上次郎『冒険小説論』庵野ゆき『竜の医師団』松樹凛『射手座の香る夏』を献本いただきました。

 

 

『ロンドン幽霊譚傑作集』は、創元お得意の怪奇小説アンソロジーで、タイトルの通りロンドンを舞台にした十九世紀ヴィクトリア朝ゴースト・ストーリーを13編収録(うち初訳が12編)の私は物知らずで二、三人を除いてほとんど初めて読む作家ばかり。仕事の合間にコーヒーを飲みながらチマチマ楽しんで読んでいます。

 

 

『冒険小説論』は非常に有名な長編評論ですが未読で、というか私は北上次郎さんの本自体が本の雑誌の回想録くらいしか読んだことがなく、先年亡くなられたときに何か読みたいなと思ったまま放置していたので大変ありがたい献本でした。スティーブンソンの『宝島』から始まる冒険小説100年の歴史を「ヒーロー像」に焦点を当てて論じたもので、時評の『冒険小説の時代』と表裏をなす内容になっているのかと漠然と予想しているところです。いや、時評も読んだことはないのですが。

 

 

『竜の医師団」は庵野ゆきさんの新しいファンタジーシリーズ一巻目ですね。『水使いの森』がとても面白かったので楽しみです。竜が咳の痛みを訴えて人間の医者にかかるとか想像しただけで笑ってしまいます。被差別民の「おれ」と名家のお坊ちゃんのバディものらしい。「おれ」は五感にすぐれ、お坊ちゃんは抜群の運動能力の持ち主ということらしい。最初の方だけ読んだが、軽い文章でサクサク進む今風のエンタメになっており、これは読みやすそう。

 

 

 

これはゲラで読んでいた。創元SF短編賞受賞作を含む四編収録のデビュー作品集。どれもあまり先がある感じがしない暗い青春SFで、物語にはミステリ的な要素もあってエンタメなんだけど、設定とか世界観にスピリチュアルな雰囲気が濃い独特の個性がある。何というかどの作品を読んでも最後に突き放されるような感じがあって、この人これからどういう作品を書いていくんだろうなあ長編を読みたいなあという気持ちになった。